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おなかの中の赤ちゃんに語る言葉は子育てに影響あるの? 子育ては賽の河原のつんではくずし『おやおやこども』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/角野信彦

僕には、女子(8歳)、女子(5歳)、男子(もうすぐ2歳)の3人の子供がいます。現在は、3人目ではじめての男子が生まれたこともあり、その乱暴ぶりに戸惑う毎日です。

ただ、3歳から4歳にかけて、子供たちは「CDやDVDの中身を全部抜き出して遊ぶ」とか「読みもしない字だけの本を全部本棚から出し、表紙カバーとオビを取る」というような「誰も得しない遊び」をしなくなることは、経験によってわかっているので、精神の平衡はどうにか保たれ、子育ての苦痛の大部分は取り除かれています。

このような「誰も得しない遊び」を私は、「賽の河原のつんではくずし」と呼び、オビとカバーの外れた本が床に散乱しているところを見ては、心のなかで「ひとつ積んでは父のため」と唱えていました。

そこで今日紹介したい漫画は、平田弘史『復讐つんではくずし』

・・・ではなく、木下晋也『おやおやこども』です。

実はぼくは、自分に子供が出来る前は、子供が大人の話に入ってきたりすると明らかに無口になったり、子供が不条理なギャグを言ってきたりすると、なにも言葉を返すことができない大人でした。

当時は自分でも理由がわからなかったのですが、今はなんとなく理由がわかります。子供に自分の言葉で何かを理解してもらえる自信が全く無かったし、理解してもらおうという執着もなかったからです。ようはメンドクサイということです。

そんな子供を苦手にしていた自分というのを、最近はすっかり忘れてしまっていましたが、この漫画を読んで、子供が生まれて戸惑う木下さんを見ながら、いろいろなことを思い出しました。別に思い出したくもなかったのですが、思い出しました。

自分の子供であれば、コミュニケーションを逃げるわけにいきませんし、時間も賽の河原に石を積み上げるほどあります。毎日子供に接するなかで通じたこと、通じなかったこと、その集積で大人ははじめて子供を理解するんだと思います。そんなことを思い出すエピソードで埋め尽くされているのがこの『おやおやこども』です。そこで、自分も遭遇したことのある『おやおやこども』の場面で、どうしたかを書いてみたいと思います。

赤ちゃんがおなかにいたときの親の行動の影響はあるか?

子供がおなかの中にいるときに「話しかけてあげて」と言われるパパの気持ちを久しぶりに思い出しました。何か話した気がしますが、全く気が入っていなかったので、何を言ったのか憶えていません。子供がおなかの中にいるときの親の行動の影響というのは、自分でもよくわかりません。木下家のコースケくんがプロレス好きになるのを見守りたい気持ちです。

うちでは、カミさんが最初の子供のときはコーヒーを飲むのを控えていたのですが、次女のときからはまったく気にせず飲んでいました。長女がコーヒーを飲めないのに、次女以降がコーヒーを平気で飲んでいるのはその影響としか考えられません。

お風呂の会話はどうしたらいい?

僕も赤ん坊とお風呂で話すことはありません。まったく話題がありません。なので、うちでは、お風呂の壁にひらがな・カタカナを憶えるためのマットを貼って、クイズをしています。うちの子は「い」のところに描いてある犬を「わんわん」と読んでいましたので、ひらがなの「い」をずっと「わ」と思っていました。そんなことを思い出しました。

絵本の速読を防ぐためには?

基本、2歳くらいまでの子供が長い文章を読み終わるまでページをめくるのを待ってくれることはありません。ただし、僕が読みたい本を読んであげているときは、どれだけ子供がページをめくろうとしても、僕が固くホールドして僕が読み終わるまでは絶対に次のページにはいきません。

子供向けの絵本で読みたいのって何なんだと思われるでしょうが、なぜかうちの子は『深夜食堂』などの漫画を絵本代わりで読んでいたので、こうした利害対立がときに発生しました。僕の粘り強いページホールドのおかげで、ストリッパーのマリリンやダイエットを失恋のたびに失敗するまゆみちゃんのことがうちの子は大好きです。

こんな感じで、読んでいると自分が子育てしているときのエピソードが次々と浮かんできます。これから子供をもつ夫婦は予習として『おやおやこども』を読むといい予行演習になると思います。

それと、最後に真面目な話。子供を寝かしつけるときに悩んでいる家庭にオススメしたい絵本があります。

「おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本」という心理学・言語学研究者が書いた、「子供を寝かしつけるための本」です。うちの次女は、本を読んでいる途中に寝ることがほとんどなかったのですが、この本を読んだときだけ、あっという間に寝てしまいます。晩酌を早く始めたいご夫婦にとくに推薦します。木下家でもいかがでしょうか?