見出し画像

暑い夏に、北欧フィンランドの国民的ベストセラー 国内売上コミック部門NO.1! 『マッティは今日も憂鬱』

フィンランド人がフィンランド人を描いて、国民的ベストセラー

『マッティは今日も憂鬱』は、2015年、フィンランドでネット公開され人気となり、2016年に紙媒体で出版され、一躍大ベストセラー、国内売上コミック部門第一位になりました。原題は、Finnish Nightmares(『フィンランドの悪夢』)。作家は26歳のフィンランド女性、イラストレーター、フィンランドではすでに続巻も発売されています。

主人公は青い帽子をかぶったまあるい顔のキャラクター、礼儀正しく、平穏と静けさとパーソナルスペースを大事にする「典型的なフィンランド人」マッティ。このマッティが、さまざまに苦手なシチュエーションで、なかなかそうとも言えずもんもんとする様子が、キュートに綴られています。

画像1

画像3

原作の文章は直接英語で書かれていて、それがそのまま国民的ベストセラーというのがさすが、北欧(現在はフィンランド語の「翻訳」版も出ています)。

仕事でスウェーデンに行くことがありますが、皆でお茶をしていたりするとき、私がいると会話が自然と英語になって、私がトイレに行ったりするとなんとなくスウェーデン語になって、戻ってくるとまた自然と英語になる、そのトランジションの自然さが、すごい。

画像2

画像4

すごいですが、英語ネイティブの人ならたぶん使わないと思うような、使い方にどこかフレッシュというかキュートなところもあって(ABBAの「ダンシングクイーン」の歌詞を英語圏の人が聞くと「なんか、かわいい」と思うそうです)、それはマッティの英語も同じ。英語の初々しさが、漫画の魅力をいっそう、増しています。

マッティと双子のような編集者、清水さん

マッティの編集者、方丈社の清水さんは、ちょっとマッティみたいな人です。高学歴で華やかな経歴もあり、いろんなことを知っているのですが、かなりシャイで自虐的。私はいっしょに本を作っているのですが、なぜか私の方が清水さんを励ます立場になっていることもあります。それでいて、自分の手がけた本のこととなるととつぜん熱くなり、それをまた後で省みて落ち込んだり。心が忙しそう。でも見ていると、マッティを見ている時と同じような、ほほえましい、ほっこりした気分になります。

清水さんは書き手として『秘島図鑑』『海駅図鑑』という本を書いています。『秘島図鑑』は日本の知られざる無人島たち、『海駅図鑑』は、同じく知られざる「海の見える駅」たちを取り上げ、どちらもカルト的人気があります。

自分で全国取材して写真も撮って、文章も書いて、つくった本ですが、無人島や海の見える(人はいたりいなかったり)駅ばかり取り上げるとは、どれだけ人が苦手なんだ、と思いますが、読んでいくうちに、島が人に、駅が人に見えてきて(ほんとに)、清水さんの「人間」愛は、ふつうの人とはやや違う範囲で発揮されている、島や駅も「人」として愛するのだなと気がつくわけです。

この、なんというか、アメリカ東海岸を基準とするグローバルな世界観からはずいぶんずれるけれど、それをしめやかに肯定するので、暗くも冷たくもなく、なんだか愛すべき感じ。マッティと同じです。大きな出版社にいた清水さんと会社の先輩の計三人でとつぜん出版社をおこす、ということになり、できたのが、方丈社です。

夏のプレゼントにぴったり

暑いですし、この機会にフィンランドのことでも考えて涼しい気分になりたい、という人は、清水さんが書店向けに出している「フィンランドが分かる、マッティが分かる」「マッティ通信。」というのがあって、マッティとその国について、さらに知ることができます。

マッティの被っている帽子も、本の装丁も、フィンランドの国旗と同じ青と白のコンビ、とてもキュート。とってもかわいいので、これは電子になっても紙媒体を買う価値があります。さらに書店で購入した人にだけ、特製コースター付き(※キャンペーンは終了しました)。青と白のマッティカラーが涼しげで、冷たい緑茶にもアイスコーヒーによく似合う。

画像5

夏のプレゼントにぴったり。私も持ってます。

WRITTEN by 芳野 まい
※「マンガ新聞」に掲載されていたレビューを転載
※東京マンガレビュアーズのTwitterはコチラ

この記事が参加している募集

読書感想文