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『君たちはどう生きるか』の二番煎じかと思ったら!?ホリエモンも楽しめた漫画版『働くということ』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

漫画『君たちはどう生きるか』が大ベストセラーになったことは記憶に新しい。

吉野源三郎のロングセラーを羽賀翔一が漫画化したことで生き返ったとも言える作品だ。羽賀翔一はそれまでにはベストセラーと言えるようなヒット作には恵まれず、この作品によって世にデビューしたと言っても過言ではない。

『君たちはどう生きるか』の二番煎じではなかった

かの作品を扱うコルクの代表、佐渡島庸平氏とマンガ新聞というメディアを一緒にやっている関係で羽賀氏の事は知っていたし、彼の作品も読んではいたが、まさに『君たちはどう生きるか』の作風に完全にマッチしていて、運命の出会いを果たしたわけだ。

そんな佐渡島氏と「過去の名著を蘇らせた漫画はそんなに事例がないな。同じように二匹目のドジョウを狙えるのではないか」という話になった。

そうしたら、やはりマンガ新聞のレビュアー定例会で話題になったのがこの作品『働くということ』(原作:黒井千次/作画:池田邦彦)だ。

作画の池田邦彦氏もこれまでベストセラーという言えるような作品は描いたことがない。

『カレチ』など鉄道を扱った骨太の作品は私も好きだし、一定の評価は得ているように思う。

が、正直絵柄も現代にマッチしてるとは言い難いし、ベストセラーが出そうな感じではない。

35年前のベストセラー原作はハンパなかった

しかし、この作品である。

読む前はまさに『君たちはどう生きるか』の二匹目のドジョウを狙っただけの作品かと思ったし、原作は「説教臭くて堀江さんには合いませんよ」と言われたのだが、読み進めていくうちにネームの構成が素晴らしく、スイスイと入ってくる。

そして、決して説教くさくないのである。

原作者(主人公)は大学を卒業して小さな自動車メーカーに入社する。軽自動車などを主に作るメーカーだ。

そして、経済学部を卒業していたためか経理部に配属される。

実際の会計の現場から会社の骨格を理解して、さらにそこで働いている人たちのさまざまな生き様を目の当たりにして「サラリーマンが働く」ということの意味を見出していく。

「サラリーマンは時間を会社に差し出してその代わりにお金をもらってる」と割り切る先輩や、自社の不正を告発して会社を追われる先輩などと対峙し、自らの進路を決めていくのである。

本作は決して教条的な筆者の考え方を強いるような作品ではなく、全ての働く者たちがより良い生き方を送れるような補助線を丁寧に引いてくれる作品に仕上がっていると思う。