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神から与えられたひらがな一文字を使ったデスゲーム。あなたはどの文字がいい?『言葉遊戯』

【レビュアー/澤村晋作

貴方は、ひらがな1文字を選んで、それを頭文字とする言葉を自在に操れるとしたら、どの言葉を選びますか?

僕だったら、「も」でモテ……い、いや、「へ」デ平和ダヨネモチロン。

さて、今回は、そんな「ひらがなで戦う」作品、『言葉遊戯』をご紹介!

1.ひらがなバトル

ひらがなで戦うと言っても、巨大な「へ」をブーメランにして投げるとか、そういうのではありません

本作は、神様からひらがな一文字を与えられ、生き残りをかけて戦うゲームです。つまり、50音に相当する参加者がいるわけですね。(現代語では使われない「ゐ」などの音を除く)

冒頭でもちょろっと書きましたが、与えられたその文字を頭文字とする言葉を、現実に発生させたり、操ったりして戦うのです。例えば「ひ」だったら、「火」を出せたり、「飛行」できたりします。

ただし、使える言葉は三つまで

さっきの例でいえば、「火」、「飛行」に、「ヒスイ」を選んだとします。
そうすると、その3つの言葉しか使えません。もう「ヒ素」とかを使えないわけです。

それを考えると、どの頭文字を与えられるか、非常に大事になりますね。

なお、主人公に与えられた文字は、「ん」です。

2・リアルタイム&テクニカル

「ん」て。

もしそんな文字を与えられたとしても、困惑することでしょう。僕もンジャメナくらいしか浮かびません。沖縄弁には「ん」から始まる言葉が大量にあるそうですが、本作の主人公もたぶん沖縄県人ではないと思いますので、彼もまた困惑します。

実は、「ん」だけは、特別なルールがあるのです。

最後に「ん」がつく言葉です。

だとすれば、「バルカン」とか「マシンガン」とか、むしろ使いやすい言葉だと思うかもしれません。

しかし、「ん」には更に別のルールもあります。

それは、「他者の文字」の最後に「ん」がつく言葉ということです。

相手やその攻撃に触れると、その元となる文字が上書きされ、その言葉に対応する能力しか使えなくなるのです。つまり、他の参加者との戦いの中で、相手の文字を見極めてからでないと自分の使う言葉も選べないという、後出し能力ということになります。

実はこれには大きな問題が潜んでいます。

相手が能力を使っていたとしても、それがどの文字によるものがわからないということです。わからなければ、自分が使う3つの言葉も選べません。

例を挙げれば、相手が飛んでいたとします。しかし、それは「ひ」で「飛行」なのか、「ふ」で「浮遊」なのか、「い」の「糸」で吊られているかもしれませんし、「く」で「空気」を操っているかもしれません。

そう、見た目からどの文字なのかを確定させるのは、非常に困難なのです。

ただし、使える言葉は3つまでなので、相手が能力を出すほどそれを狭めやすくなります。「飛行」と「火」なら「ひ」か、いや「浮遊」と「ファイヤー」で「ふ」か、とか。

そう、主人公は命がけのバトルの中、相手の能力を見極め、今の手持ちの文字を使うか、相手の文字に変えるか、変えたとしてどの言葉を3つ選ぶか、とリアルタイムにテクニカルな選択をする必要に迫られるのです。

まとめ

本作は、「ひらがな」を駆使するデスゲームものであり、50音に相当する多彩な能力者バトルものであり、相手の能力を類推する推理ものの楽しさも備えていると言えます。

余談ですが、作画のきむら先生は、昔アシスタント先でお世話になった先輩なので、すごく感慨深いものがあります。先生、すげえよ……!

もちろん、そんな個人的な感慨をヒョイっと除けておいても、純粋にオススメできる作品です。

みなさんもぜひ、「自分だったらこの文字がほしいな」とか「相手の文字は●だろうから、自分は〇〇って言葉を使って反撃するかな」とか考えながら読んでみてください。きっと文字を操る楽しさに気づけると思います。

その上で、貴方はどの文字を選びますか?

ぼくはやっぱり、「も」ですかね。