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これを読めば、大食いYouTuberが人気を獲得する理由がよく分かる『喰いしん坊!』

今回紹介するのは、土山しげるさんの往年の名作『喰いしん坊!』です。漫画レビューに入る前に、僕が大好きな「大食い」について少し語らせてください。

再びやってきた大食いブーム!

最近、テレビで大食い系の番組や企画が増えてきてると思いませんか?

僕は子供の頃にテレビ東京さんでやっていた「TVチャンピオン」という番組が好きで、そこで見た「大食い選手権」の面白さに衝撃を受けて以来ずっと大食いバトル系の企画が大好きです。

子供が真似して危ないとか、食べ物を粗末にするなんて良くないといった意見や、実際に悲しいかな事故が起きたりもして、一時期はすっかりTVで見る機会もなくなってしまいました。

ですが、YouTubeを中心とした動画配信プラットフォームが広がって、誰もが自由に色々なコンテンツやエンタメを発信できるようになってきた中で、大食いは再び人気の企画となり、木下ゆうかさんやMAX鈴木さんといった大食いタレントさんたちが超人気YouTuberとして活躍されたり、その人気に後押しされて地上波でも「デカ盛りハンター」(テレビ東京)なんて番組が始まったり、「有吉ゼミ」(日本テレビ)で大食い企画が人気のコーナーになったり、再びブームが来ていると言っても過言ではないでしょう。

大食いは、近くて遠い僕らの夢を叶えるエンターテイメント

じゃあ、なぜ今こんなにも大食いがまた人気になってきたんでしょうか?

単純に見ていて面白いから?

それだけの理由なら別に面白いものなんて他にもたくさんあります。

じゃあなぜ??

僕は、それはみんなにとっての「大食い」、というか「好きなものを好きなだけモリモリ食べる」という行為が、ものすごく身近なのに実は叶えたくても叶えられない夢だからなんじゃないかと思うんです。

大食いタレントやフードファイターの方々はみんな細くて、それなのに絶対に自分では食べられないような量を食べる。自分が食べようと思ったら300gのステーキでも結構なボリュームで、到底食べきれないのが分かっているから頼めない3kgの特大ステーキを、おいしそうにペロリと平らげる。

美味しいものや好物が山盛りで目の前に置かれたら、それだけでテンション上がりますよね(笑)。

でも結局食べきれないのが分かっているから頼めない。

そんなガマンする気持ちを代わりに叶えてくれるのが大食いタレントさんたちなんだと思うんです。

実際大食い動画を見ながら自分はダイエット食を食べるなんて人も結構いるそうですよ。

フードファイターは、プロアスリート

漫画レビューのはずなのに、いつまで大食いについて話してるんだと言われそうなので、そろそろ本題に入ります。

大食いの流行を支える最も重要な要素は、もちろん大食いタレントさんやフードファイターさんたちの存在です。

昔と違って今の大食いタレントさんたちって、ただ大量のごはんを食べる、ただ速く食べるということよりも、めちゃくちゃ美味しそうに食べるんですよね。

もちろん大会は勝負なので、手で鷲掴みにしたりボロボロこぼしたり無茶な頬張り方をしたりなんてこともあります。しかし、YouTubeを見てもほとんどのテレビ番組を見ても、美味しく食べることを重視していたり、たくさん食べるのもただがむしゃらに貪るのではなくいろんなテクニックを駆使してちゃんと味わって食べてますよというアピールが目立つなと思うんです。

だから、見る側も大食いをエンターテイメントでありつつ、ある種スポーツを見ているような気持ちで見ることができ、「おいしそうだなぁ」「食べてみたいなぁ」「あー腹減った」といった共感を持てるんだと思うんですよね。

そんな気持ちを、今の流行に必要な要素を、今から16年も前に教えてくれていたのが土山しげる先生の名作『喰いしん坊!』です。

ストーリーとしては、ただの大食い素人サラリーマンだった主人公の満太郎が、プロのフードファイターハンター錠二と出会い、自身もプロのフードファイターとして頂点を目指していくという物語です。その敵役として出てくる、いわゆる悪の団体として描かれるのが、「どんな方法だろうがたくさん食えた者が勝ち」として手段を選ばない集団なんですよね。

食べ物をミキサーにかけてぐちゃぐちゃにしたり、違う料理をごちゃまぜにして食べたりする邪道食いの敵に対して、いかに食材や料理に敬意を持って、美味しく、綺麗に食べるかを最優先にしながらたくさん食べる満太郎や錠二の姿は、まさに今人気を博している大食いタレントさんたちに重なります。

このコロナ禍でずっと家にこもらなければいけない。運動不足で太っちゃうから食をガマンしないといけない。外で美味しいものを食べられない……。こうした様々なストレスを、少しでも代わりに発散させてくれる大食い企画はまだまだもっと人気が増していくと思います。

だからこそ、是非この漫画を読んで、そんなブームの立役者たるタレントの皆さんたちの影の努力や、すごいテクニックや、なにより美味しく食べる姿に思いを馳せながら、夢を叶えるエンターテイメントを思いっきり楽しんでください。

あ、もし気に入ったら続編の『大食い甲子園』も読んでみてね!

WRITTEN by 南川 祐一郎
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