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『君たちはどう生きるか』考察

※めーちゃくちゃたくさんのネタバレがあります※


☆タイトルに込められた意味

A面:未来の選択肢は多様である
B面:創作の道を選ばなかった”誰か”への肯定

今回、表面上のストーリーと言えば、戦時中に母を失った少年が父と共に再婚相手の暮らす土地へ疎開し、そこで出会った謎の生き物(青サギ)に導かれて彼岸の国へ行くことになった。というものだと思う。
たどり着いたのは彼岸と此岸の狭間で、死と生が入り混じった場所。
これがA面。

そしてもうひとつ、この作品は「宮﨑駿の創作の世界」を描いたものである。
これがB面。

☆とにかくメタファーが多い

①大叔父

宮崎駿自身。
塔(自分の創作活動)を引き継いでくれる人を探している。
終盤で「13個の石」を「3日に1つ」積み上げるように言う場面、
「宮崎駿がこれまでに作ってきた作品が13個」「3年に1作品作る」と考察している人が居て震えた。

②塔

創作の要。最初に降ってきた芯が、「創作の源」。
大叔父はそれを自分のもの(世界)として、周りを塔で囲んでこれまで支え続けてきた。
→芯が降ってきた時の話を聞いたパッパ「雷みたいだな」→「雷に打たれたような」ひらめきをあらわしている?

③眞人

大叔父(宮崎駿)の後継者になるはずだった者
わたしは息子(あるいは他の人物)(ただ、「自分の血を引いていないといけない」と言っていたので息子説が有力のような気がしていた)を描写しているのかなと思ったけれど、宮崎駿本人だと言う人や、今回クレジットで漢字が変わっていたことから、「新生・宮﨑駿」のことだと言っている人も居た。

④青サギ

生み出された作品そのもののひとつ?
「うそだけど」「ほんとう」

⑤インコ

ファン、アンチ。その他もろもろ。俺ら。作品を観る側の人たち。
作品の中で幸せに暮らしているけれど、それを食らう時もある。
インコの持つ習性=声真似が、「口を揃えて同じことを言う」ファンのことかなあ。

⑥インコの殿の「こんなもので国を〜!」発言

俺らが好きだった駿作品をそんな簡単に人に譲ろうとするな! みたいな話か?

⑦キリコ

駿氏の作品にはちょこちょこ彼の母親らしき存在が出てくるけれども、今回はあまりに顕著だったのが印象的だった。
ばあちゃんたちが並んで歩いてきた時、ひとりだけ姿勢が美しく難しい表情で歩いてくる場面で、「この人だ」と分かった。

⑧わらわらちゃん

生み出される作品そのもの
ひみさま? がペリカンを追い払うために何匹か燃やしてしまった時に、まひとくんは慌てていたけれど、キリコさんは「良かった、残ってる」って言ってた→生まれた作品すべてが世に出るわけじゃないけど、それで良いの意味かな。

⑨悪意のない石

創作を作り出す要素の暗喩
それを自由に積み上げて作品を生み出す→まひとくんがそれを引き継がなかったのは、「創作の道」以外にも人生の選択肢が複数個あることを表している。
ただ、そもそも、「13個の石」が駿氏の過去作品を表わしているなら、こっちこそ作品になるのか。
わらわらちゃんの方が「要素」かな?

☆序盤、なぜまひとくんは石で傷をつけたのか

実母が亡くなり、父の再婚、突然増える家族、新しい環境での暮らし。
全てに拒絶反応を起こして、「学校へ行かない口実」を生み出したのかなと思った。
(メタ的に言うと、そうすることで異世界へ行っているあいだ学校へ行かなくて良い理由が生まれる)
キリコさんに同じ傷があったのは、「どうしても嫌だったことから逃げた傷痕」なのかなあと思った。
キリコさんは最終的にそれ(傷をつけた沼の主)を食ったと言っていたが。

☆なぜナツコさんはあそこで子を産もうとしたのか

自分の子を”後継者”にしたかった?
「大嫌い」「逃げなさい」と言ったのは、眞人くんが後継者になってしまうからか。
はたまた、彼には彼の生き方をしてほしいと願ったからか。

☆今回起用されたキャストたち

公開前に匂わされていたのが、木村拓哉さん。公開日に発表されたのも錚々たるメンバーだった。
ふと気がついたのは、彼らのほとんどが、俳優・女優業の他にもアーティスト活動をしているということ。
これも、”創作の世界”を描こうとしたことに通じているのかなあ。

☆これまでの作品の要素が散りばめられていた

ハウル、もののけ、ラピュタ、ポニョ、コクリコ……思いつくのはこのくらいだけれど、多分もっとたくさんあったと思う(そもそも観ていない作品もあるので)

☆今後の駿氏の制作(創作)について


駿氏が自分のことを描いた作品であること、過去作の集大成のような作品であることを踏まえると、「最後の作品」と言われるのにも頷ける。
(眞人くんが宮「﨑」駿であった場合、彼が成長してまた新たな作品を作るのか、それとも創作主ではない生き方を選んだという表れなのか……)とはいえ、彼にはしれっとこれからも作品を創り続けてもらいたい。

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