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「姑獲鳥の夏」で昭和27年夏の東京へ。

実は再読。
昔、Kindleで買って読みました。7〜8年前かな。ヘビーだった記憶しかなくて、京極堂の薀蓄も流し読みだったせいか、内容も殆ど覚えていませんでした。本当に、昔ちゃんと読めてたのか?と問いたくなるレベル。

そんな訳で、今回は紙の本を現物で改めて購入しなおして、再読しました。最近Kindleから、紙の本へと戻りつつあります。

では、感想へ。
ネタバレは途中からとなります。途中まではただのわたしのネタバレ無しの感想が続きます。ネタバレ前には注釈入れています。

今回の京極堂の薀蓄話は、かなり丁寧に読みました。それこそ、作中の関口くんと共に。こんなに薀蓄話、面白かったんだね……前回読んだときには、長ったらしいだけで全然ついていけてなかったよ……。どれ一つとして、不要な薀蓄話がなく、後々「ああ!これは京極堂が話してたやつ!!」となるわけです。(それでも、わたしの脳みそだと5割理解できてたら良い方で。さらなる再読で、理解がさらに深まったり、新たな発見があるのかもしれないですね)

◆世界観
世界観としては、戦後の昭和27年あたりの東京が舞台。関口くん視点で描かれるわけですが、とにかく表現が細かくて、脳内で情景、音、気温までもが再生される。
なぜ、こんなにも作中の情景が思い浮かぶのだろうとな、と思いながら前半は読み進めていたのだけれど、途中で京極夏彦先生の表現力が凄いのだと気づいた。繊細で詳細な表現力のある文章、大好きです。

◆登場人物
今更わたしが語ることでもないですが、語らせてほしいです!シリーズ物って、キャラクタ設定やキャラクタの魅力がかなり大切だと思うのですが、完璧でした。
京極堂(中禅寺秋彦)が好きすぎます!!!!!!

闇の黒地に星型が浮んだ。晴明桔梗だ。あの提灯だ。雨に煙る眩暈坂に、異様な風体の男が浮き上がる。番傘。墨で染めたような真っ黒い着流し。薄手の黒い羽織にはやはり晴明桔梗が染め抜いてある。手には手甲。黒足袋に黒下駄。鼻緒だけが赤い。(講談社文庫P426)

5章のいよいよ京極堂を連れて、憑き物落としに行くとなり、京極堂が現れるシーンなのですが。格好良すぎないか……。嘘だろっていうくらい、劇的に登場の仕方も格好も全てが最高に格好良すぎる。
なんなの、この表現……活字だけでこんなことってある?と思ったシーンの一つであります。

◆本編
※ここから、ネタバレ入ります。

すべてが京極堂の薀蓄話とつながる。
素晴らしい。
例の、腹からブッシャーとなる衝撃のシーンは、

「ええぇ?!これなんの小説だっけ?京極堂が、不思議なことなど何もないって言ってたけど、こんな奇っ怪な腹ブシャシーン、不思議しかなくない?!どうやって収集つけるのさ?」

と思いました。あまりにも衝撃で、こんなの収集つけようないだろって思ったし、今まで京極堂が語ってきたこと無駄になるじゃん!とまで思いました。笑
でも、さすが京極堂……というか、京極夏彦先生。しっかり不思議ではなく、現実なんだよと示してくれた。色んな不思議なことに対して、全部道を照らしてくれた……すごい。
そして、眩暈坂のカラクリについても、ラストにきちんと解説されてて、不思議なことを何一つ残さず、完結となりました。素晴らしい。

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

というわけで!
百鬼夜行シリーズ2作目!
2作目も挑戦していたのだけれど、何回チャレンジしても読了できなかったので、この勢いで「魍魎の匣」いけるか?!も見どころでございます!

おわり。

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