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『群盗』二幕三場(後半)

第二幕
第三場(後半)

神父、登場。

神父   (独白、たじろいで)こ、ここが竜の住処というわけですか? ――失礼しますよ、皆さん! 私は教会に仕える者です。周辺には千七百人が立ち並び、私のこめかみにかかる髪の一筋までも監視しています。

シュヴァイツァー   ブラーヴォ! ブラーヴォ! 腹ん中をあっためとくために、上手いこと言ったな。

モーア   テメエらは黙ってろ! ――手短に頼みますよ、神父様! ここで何をなさろうっていうんです?

神父   私は生と死を司る高等機関より遣わされました――盗賊の皆さん――放火殺人犯の皆さん――凶悪犯の皆さん――闇を這いずり密かに人を刺す毒蛇のような皆さん――人間のクズ――悪魔の眷属――カラスとウジ虫のご馳走――絞首刑台と車輪の拷問具に移り住むご予定の皆さん――

シュヴァイツァー   教会の犬が! 侮辱すんのはやめろ! やめなきゃ――(神父の顔に棍棒を押し当てる)

モーア   おい、やめとけ、シュヴァイツァー! あいつの草案がダメになっちまうだろ――お説教の口上をクソ真面目に暗記してきたんだ――続きをどうぞ、神父様! ――「絞首刑台と車輪」がどうしたって?

神父   ああ、あなたが噂の団長殿ですね! コソドロ公爵! 泥棒王! この世の全ての悪党どもを従えるムガール皇帝! ――何千という罪なき天使の軍団を叛逆の炎へ煽り立て、呪いの深淵へ堕落させた世界最初の罪深き扇動者さながらだ! 子を失った母親の悲痛な慄きが、お前のすぐ後ろから吠え立てている、血を水のごとく啜るその凶悪な短剣にかかっては、人間は水泡ほどの価値もなし。――

モーア   その通り! 全くその通りだな! 続けろ!

神父   なんですか? その通り、全くその通り、ですって? それが答えですか?

モーア   何か問題か、神父さん? あんた、答えを聞く覚悟がなかったな? 他に何を言おうってんだ?

神父   (興奮して)恐ろしい人間だ! 私の前から消えたまえ! 虐殺された伯爵の血は、お前の呪われた指先に残っているのではありませんか? 主の聖域に盗賊の手で押し入り、詐欺師の手で晩餐の器を掠め取ったのではありませんか? どうです? 神への畏れを知る我々の街に火を放ったのはお前ではありませんか? 敬虔なキリスト教徒の頭上に弾薬庫を突き落としたのも、お前ではありませんか? (手を打ち合わせる)忌まわしい、忌まわしい悪行は、天まで届く悪臭を放つ。最後の審判が武装を整え、この世界を怒涛の勢いで制圧しにやってくる。報いの時は来た、今、天使のラッパが鳴り響く!

モーア   ここまではうまいこと言い表したな! だが本題はなんだ! 高等機関とやらはあんたを通して何を知らせたい?

神父   お前には過分の裁定である――周りを見なさい、殺人放火犯よ! お前の目に見える限り、我々の騎兵隊が包囲しているのだぞ――蟻の子一匹さえ逃げる道はないのだ――この樫の木に桜の花が咲き、このモミの木に桃の実がなろうとも、この樫とこのモミを背に、無事に逃れることは叶わないのだ。

モーア   おい聞いたか、シュヴァイツァー? ――いいぞ、続けろ!

神父   ではお聞きなさい、かの法廷はかくも慈悲深く、かくも寛大な量刑をお判じになりました。――直ちに十字架の前で身を地に伏し神の恩寵と憐れみを嘆願するならば、見なさい、厳格は憐れみに変わり、裁定は優しい母となり――罪の半分には目を瞑り、許してくださるでしょう――よく考えることです! さもなければ車引きで四つ裂きの刑だ!

シュヴァイツァー   聞いたか、団長? 俺が行ってあの飼いならされた牧羊犬の首を締め上げてやろうか? 全身の毛穴から真っ赤な血しぶきを、噴き出させてやる。

ローラー   団長! ――言わせといていいのか! ――団長! ――下唇を噛んだぞ! あの野郎、ボーリングのピンみてえに土ん中へぶっ刺してやっていいか?

シュヴァイツァー   俺だ! 俺だ! 膝をついて頼むぜ、俺にやらせろ! あいつをグチャグチャのおかゆにさせてくれ!(神父、叫ぶ)

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