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道路の反対側のアパートには、カーテンがない。 三階の部屋ならわたしの窓からでも見えな…
わたしの曽祖父は妻を愛するあまり、その遺体と一週間も暮らしたという。 美談のように語…
尾籠な話で大変申し訳ないのだが、諸君には排泄の際にそのものを確認する習慣があろうか。 …
何が良くなかったのかわからないけれど、多分食あたりだと思う。突然の吐き気と頭痛に耐えら…
わたしの生家のすぐ前には水路があるのだけれど、ここは五十年ほど前に集団自殺の現場となっ…
連日の激務に疲れ果てて、ほとほとと道を歩いていた。 進行先に浅黒い肌の子どもが三人、…
交通課の中でも一番若輩だった自分が、別の部署の助っ人に呼ばれた時の話。 もちろん、捜査に加わるなんてことはない。こちらはまだ、初心者マークもとれないど新人だ。交通違反の切符切りですら、一人で器械を押させてもらったことがない。まして呼ばれた部署ではその時、連続通り魔事件などという大犯罪を扱っていたところだった。 きっとまだ記憶に残っていることと思う、一昨年から去年にかけて連続的に起こった、あの通り魔による無差別殺傷事件だ。 被害者と加害者に関係はなく、起きた場所も時間
小さい頃、近所で仲が良かった女の子がいて、よく一緒に遊んでいた。 なんとかいう冒険者…
夜になると、首が落ちる。 もちろんあたしだって、首が落ちればヒトは死ぬことくらい知っ…
自宅から駅へ向かうのに、ある敷地を通り抜ける。 そこは『ハミルさんの横道』と呼ばれて…
水路に死体が浮いているのに、誰も見ないのである。 キングスクロスと言えば大企業のオフ…
ロンドンには、設立から数百年経ったような庭園がざらにある。 邸宅の跡、屋敷部分はやむ…
報告書をまとめていたはずの同僚が、唐突に向かいの席を立ち上がって「わかったぞ」と呟いた…
散歩をしていて、目の前の少女の髪に目が留まった。 暗い茶は別段珍しい色ではないのだが、妙に心惹かれる美しさだった。 腕を下ろして肘くらいの長さもあるロングヘアは、毛先がまっすぐに切り落とされている。歩調に合わせてそれが左右に揺れた。窓際のカーテンを連想させる、なめらかで一体感のある動き。 ついふらふらと、彼女の後ろをついて数ブロック歩いた。 少女には老婆が付き添っている。 保護者は振り返ることはしなかったが、明らかに後方のわたしを気にしていた。こぼれ聞こえる会話か