谷松さん!

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稽古期間はずっとTwitterやらを更新してパンフや販売台本の解説文なんかを書いていましたが、noteの方を更新してなかったので、どちらにも書いていないお話を。

 今日初日を迎えるTOMOIKEプロデュース公演「詐欺パパ」で主役を務めるユニットメンバーの谷松さんのお話を。

 谷松さんとの出会いは、2015年の春に行った僕が作演出を担当したコルバタ公演「メロスを走らせろ!」のキャストオーディションでした。

そこに、当時まだ上京したてという谷松香苗が参加をしていまして。

 第一印象は、何故かとてもあたふたしていて、お辞儀の頭の位置が人よりも異常に低くて、お芝居が好き!という女の子でした。

 後にそのオーディションに何故受かったのか?と本人に聞かれた時は、垢抜けない野暮ったいキャラの役だったので、あの中で一番野暮ったい感じだったから選ばれたんだと説明しました。案の定、本人は「えぇ!?」と不服そうなリアクションをしていましたが。

まぁそれも本当なんですけどね(笑)本人に話していない合格理由が後二つあります。

 一つは、オーディションの自己PRなんかは早口でしたが、僕が話している時に僕の話のスピードに合わせて頷いたり相づちをうっていた事です。会話劇をする上で相手の口調に合わせてリアクションが出来たり相づちを入れられるのはとても大事で、個人的には漫才をやっていた経験からそれが出来る人はコメディが出来るというのもあって、テンポが求められる重要な役の抜擢になりました。

 もう一つは、自己PRです。

これが先ほども書いたように早口で何を言ってるか分からなくて(笑)。

印象的だったのは「関西で小劇場に出ていたので裏周りの作業が出来ます!」と言ったので、プロデューサーさんが気を遣って「裏方も希望してるの?」と聞くと、「違います!」ときっぱり断っていたこと。

その後も質疑応答でしばらくゴニョゴニョ言った後に、唯一といって良いほど真っ直ぐに、少し照れながらも迷いなく、「お芝居が好きです」と言っていた事。

「お芝居が好き」

これって当たり前のように見えて、なかなか真っ直ぐ言えない事です。今、世の中で自分の仕事を真っ直ぐ好きと言える人がどれだけいるだろうか?
「嫌いじゃない」「好きな方」「やりがいがある」なんかではなく、好きと。

 その作品を終えた後、今度は当時の僕の団体の公演「ヤバい!は気から」という作品にも出てもらいました。

その作品が演劇祭で賞を取り(ちなみに最優秀演技賞は今回も出演する国崎さん!)、打ち上げでお調子者の僕は誰にも聞かれていないのに一人で「五年後に本多劇場でやる!」だの「映画の脚本を書く!」だの喋っていると、

谷松さんは、プロとしてやっていけるのか?具体的なビジョンが見えない。…といった悩みを吐露していた。

つい四ヶ月前に、淀みなく「お芝居が好きです!」と言っていた子が、早くも上京して仕事や世間の壁に当たっているように見えました。

 そこで、僕はこんな内容を話したのを覚えています。

「とりあえず三年はやってみいや。ほんなら、俺もこれから頑張って芝居やるのにもっと良い環境を作る。そこで、あんた主演の舞台作るから」

我ながら適当なアドバイスですね(笑)

 それから六年。


僕なんかが、その時思っていたほどの良い環境が作れたとは思えないですが(笑)

 なんとか本多劇場をやったり映画を作ったりして、素敵なスタッフさんとキャストさんが集まってくれた今回の環境で。まぁ状況はコロナやなんやで昔よりも大変ですが、クラウドファンディングなんかで沢山のお客様に支えていただける環境で、今回、満を持して谷松さんの主演舞台をやるという運びになりました。

 待たせすぎたな~と思っていたら、彼女はあのときの打ち上げの会話を全然覚えてませんでした(笑)

でも、今回は僕の中で約束の舞台でもあるのです。

 谷松さんも大人になりました。僕やヲサダさんや岡田さんといった癖の強いおじさん連中とユニットを組んで、むしろ引っ張ってもらっている事も多々あります。

 一ヶ月前、四人で配信をした帰りに、中目黒の電車のホームで相変わらずお芝居の話をゴニョゴニョした後に、なんかの話しの後、谷松がふと「やっぱり、お芝居好きなんやな~と思いました」と言って、勝手に一人で照れていたのが印象的でした。その言葉が印象的で過ぎて、その前の話しは何も覚えていないくらい(笑)

 今回の稽古場での谷松さんは、ほんまに全力でぶつかって、奮闘していました。

結果、僕の脚本や演出でも想像以上の「幸子」という役を創りあげてくれています!

もちろん、スタッフさんはじめ、他のキャストさんのお芝居も素晴らしいです!

だから、ほんっとに自信を持って皆さんにお届けし、お勧め出来る舞台となっています!

 小屋入りして、僕もバタバタと作業をしながら、忙しなく動く谷松さんを見ていると、今の印象はこうですね。

 堂々としている時もあるけど、やっぱり時折あたふたしていて。お辞儀の頭の位置もまだ人より低くて。それで、何よりも、昔以上に…お芝居が好き!という女優さんです。

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TOMOIKEプロデュース公演
「詐欺パパ」
作・演出 友池一彦
会場 駅前劇場
7月
15(木) 14:00★/19:00
16(金) 14:00/19:00
17(土) 14:00/19:00
18(日) 14:00/19:00
19(月) 17:00
※開場は開演の40分前
(当日精算の方は30分前開場)
※受付開始は開演の45分前
★…初回割引・500円引き

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