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そいつを言っちゃあおしまいよ

父の法事がある日曜日、結婚式とバレエの発表会の仕事が入ってしまった。

どうしてもと頭を下げられ、出かける前と終わってからの納品でなんとかなりそうだからということで、やむなく引き受けた。

腰の低い花嫁さんは「急に無理を言って申し訳ないです」と全面的にこちらの都合に合わせてくれ、なんだったら前日取りにきてもいいとまで‥
ウェディングブーケを前日とはいかないので、ちょっと早めの納品ということで対応させていただくことにした。

問題はバレエの方だった。

いかにも自分もプリンシパル風、スタイル抜群イケメンの御歳推定28歳という出で立ちの注文主。ヘアーもファッションも鏡の前で悪戦苦闘の数分後という感じがした。
来店するやいなや名札の名前が大事だからと名刺を差し出した。

タケナカデンタルクリニック・・・

このイケメンさんは歯医者さんだった。
このイケメン歯医者さん、名刺を差し出して2分後に私の逆鱗に触れた。

「早めに納品して欲しいんですよ、ほらお母さん方がいらっしゃるじゃないですか、看板を何人のお母さん方が見るか、それが大事なんです。わかるでしょ?子供の患者がうちとしては欲しいんでね。別に朝から飾ってすぐ枯れはしないですよね?」
「あ、でも花は持たなくていいんです。1日なんとかなればいいんで、ボリュームとか見た目が大事、もうダメって花をたくさん入れてくれればいいですから。葉っぱとかも多めで。出るのはうちの従業員なんでなんの問題もないですから」

言い終わるが先か私にお客様が見えたので、ここから先はスタッフが対応した。 私が続けて話していたら間違いなくお断りして「塩持ってきて」というところだった。

タケナカデンタルクリニックの先生、今日は命拾いの日よ。


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