いつか行ってみたいあの場所

住んでいるマンションの、道を挟んだ斜め向かいにクリーム色の壁のビルがある。
西日が当たるとオレンジ色に変わるので、
晴れた日は空の色とオレンジ色のコントラストに目を奪われる。

私の部屋から、ちょうど小さな扉と屋上へ向かう階段が見える。
引っ越してきてから外を見るたびになぜかそこがとても気になっている。

ビルの所有者に連絡して許可をもらえばあの階段を上って屋上に入れるだろうか。そもそも何のビルだろう。
調べればいいのだが、そこまでする気力はなく、毎度ベランダに出るたびに見ては、あそこから景色はどのように見えるのかなあ、行ってみたいなあと胸をふくらませている。

しかしいざ行ってしまうと、もしかしたらつまらない景色というか、どうってことはない景色しか見えなくてがっかりするかもしれない。現実を知るのが怖いのだ。


そんなわけで、いつか行ってみたいなというわくわくした気持ちをずっと感じていたくて、すぐ近くにあるのにもかかわらず、わたしは行かずにいる。