幡野広志さんのワークショップに参加するために金沢に行った話
春がはっきりと終わって梅雨が始まる前の季節が好きだ。
5月の金曜日の朝、徳島の町から金沢に向かっていた。
きっかけは元日の地震だった。石川に住む友だちに連絡を取って無事を確認したときに、久しぶりに会おうかという話になった。
どうやって行こうか。そうだ、5月に幡野さんのワークショップ「いい写真は誰でも撮れるその2」に参加するつもりだから、東京で前泊する代わりに金沢に泊まって翌朝新幹線に乗ろう。
去年、幡野広志さんに自分たち家族を撮影していただいた。
そのときに感じたのが、僕たちとの会話と撮影とがすごくシームレスに行われていて自然だということだった。
会話と撮影が一体になっていて、あれだ、ギターを弾きながらお客さんと会話するミュージシャンみたいだ。と思った。
後日送られてきた写真は素直な僕たちの表情が写っていて、しかも枚数がめちゃくちゃ多かった。ファイルの番号で見たらその10倍は撮影されてるみたいだ。
それ以来、僕もできるだけたくさん撮るようにしている。少しでもスムーズに撮れるようになるには、楽器と同じで量をこなすしかない。
十数年ぶりに友だちに会った。20代の頃会社の同僚だった彼とは、よく一緒に飲みに行ったりしたものだった。だけどその時どんなだったか、正直もうあまり覚えていない。写真の1枚も残っていない。
だけど今の僕にはカメラがある。写真があればずっと後でも、この日をすぐ思い出すことができる。一緒にいた彼とも、この先も思い出を共有することができるだろう。
妻に借りて、予備で持って来ていたコンデジを友だちに渡して撮ってもらった。そのときに伝えたのはふたつ。
「ここを半押しして、画面のここ(フォーカス)が緑になったら撮って」
「あと俺はポーズとか取らないから、いいなと思うものがあったらどんどんシャッターを押して」
そうしたら素直な彼はニコニコしながらシャッターを切ってくれて、あとで見たら短い間に100枚くらい撮ってた。すごい。写真が趣味でもないのにすごいぞMくん。
ただ、3分割構図で撮ってるのもわりとあった。この謎メソッドが写真を撮らない人にも浸透しているのが不思議だ。「真ん中で撮って」も言えばよかった。幡野さんの著書を贈るよ。
サンドイッチを買って始発の新幹線で東京に向かう。北陸新幹線はすごく乗り心地が良くて、東京~博多間しか知らない僕はその快適さに驚いた。
電源もWi-Fiも完備されていて、たくさん笑ってたくさん話した昨日を思い返しながら写真を現像した。現像した写真をスマホからリアルタイムでポストできるなんて、20代の頃には考えもしなかった未来だ。カメラがあると旅は冒険になる。楽しい。
去年のワークショップ参加から1年。今回の「その2」は、前回のおさらいと撮影の実践を組み合わせたもので、内容の一部は著書「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」にも書かれている。
<去年のことをかいたnoteの記事>
いい写真は誰でも撮れることを教わった|ken yokoyama (note.com)
カメラを持って外に出ること、自分の好きを感じてシャッターを押すこと。
写真は自分の気持ちを記録する優れたツールで、だからこそ取り扱いに気をつけなきゃいけないこと。
幡野さんがずっと続けているのは、写真に対する僕らの誤解を丁寧に取り除くことだと思う。
撮ることの心の壁を取り除いてもらえたから、これからもたくさん、自分の好きを見つけて、敬意を持ってその光景を撮ろう。何度も撮るうちに、少しずつでも幡野さんの言う「ヘタだけどいい写真」に近づいていけるんじゃないかな。
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