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幡野広志さんのワークショップに参加するために金沢に行った話

春がはっきりと終わって梅雨が始まる前の季節が好きだ。
5月の金曜日の朝、徳島の町から金沢に向かっていた。

きっかけは元日の地震だった。石川に住む友だちに連絡を取って無事を確認したときに、久しぶりに会おうかという話になった。

どうやって行こうか。そうだ、5月に幡野さんのワークショップ「いい写真は誰でも撮れるその2」に参加するつもりだから、東京で前泊する代わりに金沢に泊まって翌朝新幹線に乗ろう。

旅の出発にふさわしいひみつ道具をみつけた。ワクワク感が2割増しだ。
徳島といえば阿波おどり。彼らに見送られて足どりも軽く出発した。
徳島ではフェニックスと呼ばれるヤシの木。県内至る所にある。
高速バスに乗ると、窓から見えるタクシーの屋根にすら旅情を感じる。

去年、幡野広志さんに自分たち家族を撮影していただいた。
そのときに感じたのが、僕たちとの会話と撮影とがすごくシームレスに行われていて自然だということだった。
会話と撮影が一体になっていて、あれだ、ギターを弾きながらお客さんと会話するミュージシャンみたいだ。と思った。

後日送られてきた写真は素直な僕たちの表情が写っていて、しかも枚数がめちゃくちゃ多かった。ファイルの番号で見たらその10倍は撮影されてるみたいだ。
それ以来、僕もできるだけたくさん撮るようにしている。少しでもスムーズに撮れるようになるには、楽器と同じで量をこなすしかない。

京都まで来た。長い編成の列車を見るだけで、都会に来たなぁと感動する。
敦賀から乗った北陸新幹線は静かで快適だった。金沢に住む友だちに会う。
十数年ぶりに会った同い年の友だちが全く老けていなくてびっくりする。
ずりぃな、俺だけ歳をとったのかよ。レンタサイクルで街を散策した。
サン=テグジュペリ好きは思わず足を止める看板。なんて読むのかしら。
とても気持ちのいい天気の中を友だちと自転車でうろついていると、
大阪で下宿してた頃を思い出す。

十数年ぶりに友だちに会った。20代の頃会社の同僚だった彼とは、よく一緒に飲みに行ったりしたものだった。だけどその時どんなだったか、正直もうあまり覚えていない。写真の1枚も残っていない。

だけど今の僕にはカメラがある。写真があればずっと後でも、この日をすぐ思い出すことができる。一緒にいた彼とも、この先も思い出を共有することができるだろう。

市場になっているアーケード街を案内してもらった。ここはまたゆっくり訪れたい。
(友だち撮影)市内の有名な神社に連れてきてもらった。
予備で持って来ていたカメラを渡して撮ってもらう。嬉しそうだ。僕が。
(友だち撮影)背景と僕を同時に入れようと苦心していた。友よ、幡野さんの本を贈ろう。
(たくさん撮ってくれてありがとう)
友だちも嬉しそうで良かった。

妻に借りて、予備で持って来ていたコンデジを友だちに渡して撮ってもらった。そのときに伝えたのはふたつ。
「ここを半押しして、画面のここ(フォーカス)が緑になったら撮って」
「あと俺はポーズとか取らないから、いいなと思うものがあったらどんどんシャッターを押して」

そうしたら素直な彼はニコニコしながらシャッターを切ってくれて、あとで見たら短い間に100枚くらい撮ってた。すごい。写真が趣味でもないのにすごいぞMくん。

ただ、3分割構図で撮ってるのもわりとあった。この謎メソッドが写真を撮らない人にも浸透しているのが不思議だ。「真ん中で撮って」も言えばよかった。幡野さんの著書を贈るよ。

大学生くらいの二人組が「ライカだ」「ライカ?」「すげー高い、レンズが○○万円位するんだよ」って言ってたので、「僕のはそんなにしないよ」って思わず話しかけた。
全国を巡っているミュージシャンにおすすめされたお店に来た。夜はジャズバーになるそうですごくいい雰囲気だった。ここもまた訪れたい。
(友だち撮影)やはり嬉しそうである。が自分で思ってたより怪しい。
ワーレントラス式のかっこいい橋があった。郷土の吉野川橋を思い出す。
同じ時代の建造らしいので同じ設計者かと思ったけど、あとで調べたらちがった。
友だちおすすめのお店につれてきてもらう。北陸といえば日本酒。
ぜんぶおいしかったけど富山県のはちょっと飲んだことのない感じで新鮮だった。
一夜明けてホテルの部屋で、昨日古書店で買った雑誌を撮った。
朝焼けの中、金沢駅に向かう。今日も気持ちのいい天気だ。
金沢駅前のおもてなしドーム。ここに降りる人達の雪よけのためだそうだ。
また冬に来てみたい。
金沢はとても豊かで情緒がある素晴らしい街だった。ありがとう。また来ます。
北陸の景色は四国とまるで違う。でかい。四国はどこに行ってももっとコンパクトだ。

サンドイッチを買って始発の新幹線で東京に向かう。北陸新幹線はすごく乗り心地が良くて、東京~博多間しか知らない僕はその快適さに驚いた。

電源もWi-Fiも完備されていて、たくさん笑ってたくさん話した昨日を思い返しながら写真を現像した。現像した写真をスマホからリアルタイムでポストできるなんて、20代の頃には考えもしなかった未来だ。カメラがあると旅は冒険になる。楽しい。

写真を撮るようになって、前よりも都会が好きになった気がする。
駅を降りてワークショップ会場に向かう途中もたくさん撮った。
アンドレシピさんの事務所でワークショップ開始。
向こうで小池さんが料理を作ってくれていて、すごくいい匂いと音がしてる。
何度も学ぶことで、少しずつ自分に染み込んでいると思う。
いい匂いと音が形になって、美味しい料理になった。今回も8時間があっという間だった。

去年のワークショップ参加から1年。今回の「その2」は、前回のおさらいと撮影の実践を組み合わせたもので、内容の一部は著書「うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真」にも書かれている。

<去年のことをかいたnoteの記事>
いい写真は誰でも撮れることを教わった|ken yokoyama (note.com)

カメラを持って外に出ること、自分の好きを感じてシャッターを押すこと。
写真は自分の気持ちを記録する優れたツールで、だからこそ取り扱いに気をつけなきゃいけないこと。
幡野さんがずっと続けているのは、写真に対する僕らの誤解を丁寧に取り除くことだと思う。

最終便の飛行機で徳島に帰る。
旅の高揚と帰途につく安堵の中で自分が乗る飛行機を眺めている。
徳島駅前に帰ってきた。またどこでもドアを開いて旅に出よう。

撮ることの心の壁を取り除いてもらえたから、これからもたくさん、自分の好きを見つけて、敬意を持ってその光景を撮ろう。何度も撮るうちに、少しずつでも幡野さんの言う「ヘタだけどいい写真」に近づいていけるんじゃないかな。

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