デザイナーは、ポスターを作れないといけない。
デザイナーには2種類いる。
自分の作品を作れない人と作れる人に分けられる。
作れない人は、クライアントワーク以外に自分の作品となると「なにをやっていいかわからない」となってしまう人がいる。
あなたは自分の作品が作れますか?
ぼくは作れる人でいたいし、株式会社NASUのみんなも作れる人であって欲しいと思っています。言葉を選ばず言ってしまうと、なんなら作れない人はかわいそうくらいに思っている。
その理由はこのnoteをぜんぶ読めばわかります。
その前に自己紹介させてください。
こんにちは、前田高志といいます。“ビジネスにデザインで成す”株式会社NASUで代表を務めています。6年目に入りました。もともとは新卒で任天堂で宣伝広告のグラフィックデザイナーとして働いていていました。現在、弊社ギャラリーにて「NASUポスター展」を開催しています。(2023年6月16日まで)
最近、46歳になりました。50代に向けてエンジン全開です。
ただでさえクソ忙しいのに、何言ってんの?
デザイン会社って、普段の仕事だけで、普通に忙しいんですよ。案件が落ち着いている時も結局、ひとつ作るのにより良いものを作ろうと思ったら試行錯誤、毎日失敗を繰り返し、時間をフルに使います。
そんななか、社長が「ポスター展をやろう」といいだしたんだから、まぁ大変。NASUのみんなは大変ですよ。
でも、ぼくの信念でやるべきだと判断した。
実際現時点でやって良かったと思っています。みんな疲れが溜まっていると思うし、申し訳ないとも本当に思っています。でも、みんな楽しんで、嫌な顔せず、むしろ面白がってやってるのは「さすがNASU」だなと感じています。展示が終わったら「もう一度G.Wをやろうね」と言ってます。
札幌のデザイン会社が、ポスター展をやっていた。
ぼくは任天堂デザイナー時代。個人的な日課がありました。朝出社したらまず、メールチェックではなく、ブログチェックすること。ほかのデザイナーやクリエイターたちの頭の中を覗いている感じが好きでした。
その中のブログのひとつに寺島賢幸さんの会社のブログがありました。
まぁ、寺島デザインさんの仕事これがクオリティが高い。さらにポスターもクオリティが高い。世界的なコンペで賞ももらったりして。ぼくも勉強のために参加したいなって思いました。
ぼくは、性格上ひとりで制作するのがほんと苦手で。新人時代入社2年目までは大学の先輩たちとグループ展をやっていたのですが、ぼくは変にやる気に満ち溢れ空回りしてたのかな?
テーマを決めてがっつりストイックにやりたいっていったら、先輩から「マロニエ展みたいにしたいんか、それはちょっと…」ってなって。
「あ、じゃあ、ぼく抜けます。自分でそういうのやります」って、当時のぼくは割と子供だったんで降りてしまった。っていうか、今も割と「すぐやめる」って言ってるか。変わってない。
そんな寺島ポスター展をいつかやってみたいと憧れがあった。自社に小さいですがギャラリーをようやく構えることができて、ついにポスター展を約20年を経て実現することになった。感慨深いものがあります。人生の伏線回収。
ぼくの持論。
極論、デザイナーはポスターを作れないといけない。
(話はそれますが)仕事するすべての人はデザイナーであれ。
ここまで読んで、「わたしはクリエイターじゃないから関係ないよ」と思われている方もいらっしゃるかも。
ぼくは、仕事を持つ人すべてがデザイナーであり、クリエイターと捉えています。“目的に対する改善プロセスがデザイン ”だからです。
NASUの社員は、デザイナー以外も2名います。職種としてはデザイナーではないが、本質としてはデザイナーであって欲しくて、今回のポスター展でもポスターを制作しました。そして、すごく良いポスターになりました。見に来て欲しい!
なぜ、デザイナーはポスターを作れないといけないのか?
クライアントワークではなく自分の作れない理由は3つある。
「機会がない」
「周りに自分の作品を作っているがいない」
「いきなりクライアントワークを始めてしまった」
3つ目をさらに解説すると抽象度の高いお題での制作経験が足りないということ。一般的なクライアントワークは具体の塊。このデザインみたいなデザインにしてください。若い人ならなおさら。アルバイトをすぐ始めてしまった人はここに陥りやすい。
大学の課題ってかなり抽象的なんです。
例えば、「ありそうでないもの」というテーマだけ与えられてなにを作るかは自分で仮説(問い)を作り答えを出す。美大の卒業論文に値する卒業制作なんて、テーマすらない。
クライアントワークしかできない人は、具体的な指示でしか作れない。抽象度の高い指示になると、何をやっていいかわからなくなってしまう。
「問い」に「答え」を作るのがデザイナー、いや仕事の醍醐味。最初から答えを用意されているものになんの面白さがあるのだろう。
NASUにお仕事で相談されるのは、答えのない相談です。「NASUさんならどう答えを出しますか?」を期待されている。クライアントの答えをなぞっても仕方ないというか、ぼくらがやる必要がない。
クリエイター偏愛こそ、いい仕事で結果を残す鍵。
プロのデザイナーなら「デザインの仕事に自分らしさなんていらない」って聞いたことがあると思う。たしかにそうなんだけど、実際には「自分らしさ」は必要だ。
正確には、デザインの仕事の表面に「自分らしさーを出す必要はないが、強い表現をするにはそれが必要」なんですよね。
そんなこと言われると、「力を入れながら力を抜け」みたいな矛盾したこと言われて、頭がクラクラしてくるかもしれません。
ぼくは任天堂時代こう言われた。今でもすごく実感しているし、言ってもらってよかったと感謝している。「自分のことをわかっていないといいものは作れない」これが身に沁みてわかる。
結局、連続的にクリエイティブジャッジをするのは自分しかない。自己理解ができてないと何も決められないんですよね。
なんとなくろくろを回して粘土をこねくり回して、作ってしまう。今回は良いものができた、今回はなかなかできなかった。運任せになってしまう。
ぼくのフェチは「トイチック」だ。
フェチという表現は、書籍『勝てるデザイン』であえて使ったのですが、最近は「クリエイティブの偏愛」と言っています。
これまでのデザイナー人生において「前田さんのデザインはポップでかわいいですね。」と言われることが多かった。
ポップ?かわいい?何様やねんって話やけど、そんな安易な表現で、相当考えて作ってるのに、軽い感じがしてあまり言われるのが好きじゃなかった。
それでたどり着いたのが、「トイチック(Toytic)」という言葉だ。この言葉で「ポップでかわいい」をぼくの中で撲滅できた。この言葉で腑に落ちた。
言葉ってすごいなぁ。
トイチックとは?
・プラスチック感
・軽い
・カラフル
・角が丸い
・文字
・たくさん
レゴブロック、プラモデル、牛乳キャップ。ぼくが生まれてからずっとゾクゾクしてきたものだ。それも、もう口に入れたくなってしまうくらい好きなもの。
自分の記憶で一番古いこととは?
自分のフェチを探すために、こんな良い問がある。
「自分の記憶で一番古いこととは?」
ぼくは、絵や文字が書いてある、木の積み木だった。木はコーティングされていたし、角が丸い。カラフルな絵と文字が書かれていて、たくさんあった。そして、実際に口に入れていた。
もうね、「一番古い記憶ワーク」これだけでOKです。このnote、つらつら長く書いてますが、これだけやってみてくれればOKです。
今回のポスター展もぼくの一貫したクリエイティブの偏愛である「トイチック」でいこうと思った。これを追求する。普段仕事でできないことをやりきる。
デザイン日記がヒントになる
ぼくはデザイン日記を週に一度配信している。自分のためになっていると実感しているからか、飽き性で怠惰なぼくでももう一年継続できている。
自分が気になったデザインを写真と感想を書いている。今回のポスター展の制作のために見返した。
やはり、ぼくのクリエイティブの偏愛である「トイチック」が多く目立つのだが、中でも「スイッチ」のビジュアルが気になった。
さらにピンタレストで収集し始めた。あー、たまらん。
「スイッチ」の物体感
トイチックも今までは割と「平面的」な解釈が多かった。今回は「物体感」に意識してみた。
制作のファーストステップ
なにをやっているかというと、「スイッチの量」「レイアウト」を確定しようとした。これが決まらないと先に進めないから。建築でいうと基礎。細かくするとどう感じるか?余白のヌケを作る方がいい?
細かすぎるのもポスターとして弱いので、スイッチに強弱をつけることにした。
もうひとつやったのは、「スイッチ」をどう表現するか?グラデーションなしで作ると制限した。グラデーション入れるとそこの検証時間がかかってしまうので。トイチックはそこじゃない。
あえて、仕事を持ち込んでみる禁断の方向性チェック
仕事っぽいことはあまりやりたくないけど、仕事でやってることを当てはめてみたくなった。ゴール、クリエイティブコンセプト、タグライン、デザインのものさしを言語化してみた。
もっと理性を捨てて動物的に
これをNASUで共有してしまったのは失敗だったかも。割とそこに引っ張られてしまい、感性より理性が強くなってしまった。このポスター展は、人じゃなく動物のようにデザインするほうがいい。当たり前の話ですが、普段仕事は人としてやっているので。
探求ブラッシュアップ
色校正を出した。紙も二種類。最終がイメージできる。「トイチックってなんだっけ?」「今回やりたかったことはなに?」見る人のことを考えるより、自分自身との対話。ボタンもいろんな種類をなるべく作りたい。
最終的になくなったけど、最初はお客さんにポスターの販売をしようか?と考えたけど、売買は邪念が入るからやめた。
真は最終的なアウトプットではなく、作る過程こそこのポスター展の意義。
この展覧会にもある「クリエイティブ表現の探求」なのです。
究極のフィニッシュワーク
ここまできたら、究極の自己満足の世界。デザイナーが一段階段上がるときは、超大作を作ったあと。
何にも変わらないところまで、やります。自分との約束を守ってる感じに近いかも。
これを乗り越えたら、また強くなる。と思ってやりきりました。実際、筋トレをずっと続けてきたみたいに強くなったと実感できます。
超大作を作るの大事だ。
現地でしか味わえないようにした。
実はNASU5周年ということで、次の5年間の大事にすることや、NASUが大事にしているデザインのポイント、見発表のアイデア、未発表の取り組みなどを仕込んでいます。
そんなこんなで完成。
合間をぬってやり切ったと思います。気持ちいい。初心にも戻れた。熱いパッションがなかったわけじゃないけど、新卒の頃を思い出した。
クライアントさんへの姿勢もより強くなるなとすでに実感してます。
最後に
最後まで読んでくれてありがとうございます。そんなわけで、かなり大変なんですが「ポスターの制作」がめちゃくちゃおすすめです。
デザイナーや、クリエイターじゃなくても。前田公式LINEやSNSにDMくれたら相談に乗りますよ。
NASUポスター展のお知らせ
NASUのみんなも今回の制作で、ものづくりに対する姿勢と、仕事で発揮できそうな自己探究が行われた。
ぼくら9人の濃厚な「クリエイター偏愛」を覗き見し、あなたご自身の自己探究のスイッチが入ればうれしい。
在廊しているNASUメンバーにも、制作プロセスを対話することであなたのクリエイティブ力が磨かれるもと思います。
本日、前田高志在廊しています。もしよかったら、「クリエイティブの偏愛」の話しましょう!
前田高志の在廊情報
(2023.6.4現在※日々更新します)
・6月4日(日)12:00-16:00
・6月5日(月)12:00-20:00
・6月8日(木)12:00-20:00
・6月9日(金)12:00-20:00
・6月10日(土)12:00-18:00
お待ちしてます。
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