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デザインの磨き方 - 造形の質編

こんにちは、前田高志(まえだたかし)といいます。株式会社NASUというデザイン系の会社をやっていたり、前田デザイン室というオンラインコミュニティをやっているデザイナーです。主に、ブランディングやコミュニティ事業が得意です。

今日は、「良いデザインを作りたい」という駆け出しのデザイナーに向けに、「デザインを磨くとは?」というところから、その中でも「造形の質を磨く方法」を書いてみます。

「デザイン」といってもいろいろ種類があって、ファッション、プロダクト、インテリアなどありますが、今回はグラフィックデザイン(視覚伝達デザイン)においてのお話になります。

僕はいわゆるデザイナーなのですが、たまに

デザインやってるの?サクッとデザインしてよ!」

と言われたりすることがあります。

これを読んでいるデザイナーの人も、同じようなことを言われた人もいるかもしれません。

当たり前ですが、実際に手を動かすデザイナーの立場からすると「そんな簡単に言わないで・・・」と思ってしまいます。

(しかも、そのくせに、自分が気に入らないデザインだったら、露骨に薄い反応をされたりして、悲しくなります)。

これは勘違いされがちなんですが、どんなに才能のあるデザイナーや20年キャリアのデザイナーでも、ロゴやチラシ、ポスターなどグラフィックデザインをするときに、一発で完成することは絶対にありえないんですね。

経験によって圧倒的にスピードが早くなることはあっても、一発OKはないと断言できます。

たとえば「ちょっと文字を大きくしたらどうなるかな?」とか「色を変えてみる?」「ダサくないかな?」「伝わるかな?」「気持ち悪い形だな?」「1ミリ右へ、やっぱり左へしてみよう…」など。

ミクロな視点でディティールにこだわり、マクロな視点で俯瞰して見て、またミクロで見て・・・といったように、数え切れないくらいの試行錯誤をして、ようやく完成するのです。

なので、冒頭のように「サクっと良い感じのデザインを作って」といわれても、サクッと良いデザインをすることは、どんなデザイナーでも無理なんです。


デザインとは?

じゃあ、そもそも「デザイン」とは何か?なんですが・・・。

意外と知られていないんですが、“デザイン”っていう言葉自体には「良い」という定義が含まれています。Wikipediaによると

デザイン(英語: design)とは、審美性を根源にもつ計画的行為の全般を指すものである。意匠。設計。創意工夫。英語のdesignには本項の意味より幅広く、日本語ではデザインと呼ばない設計全般を含む。日本語のデザインに相当する英語での用語はstyleである。

とあります。審美性を根源似持ち、設計全般まで含まれるというのが、日本語のイメージとはちょっと違いますよね。

Wikipediaにもあるように「style」の意味でデザインという言葉が使われるのが、「サクッとデザインして」というセリフにつながっているのかもしれません。

僕が考えるプロのデザイナーの条件は、「良いものを確実にする」ことだと思っています。

つまり、良いものを創るだけでは、普通のデザインであり、プロのデザイナーは、より一歩上の「良いものを確実にする」というところまで求められる、ということです。


確実に良いデザインとは何か

ここで「確実に良いデザイン」とは何か、というところも説明したいと思います。

「確実に良い」とは、すなわち「品質が極めて高い」ということとも言い換えられます。

デザインにおける品質は2種類に分解できます。その2種類とは、

・思考の質
目的にあったゴールを設定し、目指すべき機能がワークしているか。

・造形の質
魅力的な造形になっているか。

デザインとは「思考」と「造形」による設計なのです。

ここで注意なのが、先程述べたように、日本語のデザインは「style」だけを指すがことが多いので、どうしても造形の質に目がいきがちの人が多いことです。特にデザイナーでない人からしてみると、思考の質は目に見えづらいので、理解しづらかったりするのですが、思考の質と造形の質、どちらもないとダメなんですね。

「サクッとデザインしてよ」というのは、言い換えると「サクッと造形がいいものを作ってよ」という感じで行っていることが多いのですが、思考が磨かれていないと、確実に良いデザインが出来上がらないということです。

ということで、この2つの質を高めるために「宝石を磨くようにデザインを磨く工程」がとにかく必要なのです。この2つを磨くことで、はじめてデザインは宝石のように輝きを放つわけです。


デザインはどう磨くのか?

じゃあ「デザインを磨くにはどうしたらいいのか?」というところなのですが、このあたりは、あまりインターネットでも本でも、ドンピシャに書いてあるものを見かけません。

特に初心者向けのものがありません。ということで、僕が書いてみると・・・。

デザインは先程書いたとおり「思考の質」と「造形の質」の両方が大事なのですが、いざ磨き方を説明しようとすると、思考の質側のところで初心者がつまづきがちです。

なので、この記事では、まず「造形の質」の磨き方について説明します。というのも、組織で働くデザイナーはディレクターにつくことが多いと思うので、「思考」はディレクターに任せるということができるからです。

駆け出しのデザイナーはまずは「造形の質の磨き方」から学んでいくのがおすすめです。

デザインの造形を磨くことは「気持ち悪さに気づく」ことからはじまります。気持ち悪さといっても、なかなか初心者のうちでは気づきづらいと思いますので、すぐわかるチェックリストを用意しました。


【気持ち悪さの具体例 (
見るべきポイント)
□ 1 . フォントの気持ち悪さ
経験の浅い人は、世界観にあった書体になってなかったり、読みやすいフォントと魅せるためのフォントを理解して使えてなかったりします。
それと、僕がフォントのクオリティをどうこういうのはおこがましいのですが、フリーフォント(海外は特に)などのフォントは曲線がいびつだったり、全体のバランスが悪いと文字を組んだ時のレイアウトした時の美しさが変わってきます。

□ 2 . レイアウトの気持ち悪さ
空間がせますぎるところがないか?レイアウトに風を意識しましょう。窮屈で息苦しいところには窓(余白)あけると視覚的に気持ちよくなるし、読みやすさにもつながります。

□ 3 . シルエットの気持ち悪さ
シルエットというのは輪郭です。歪なものだったり、不安定だったり、ルールが破綻していたり、洗練されてる一番いい形を選びましょう。

□ 4 . 色の気持ち悪さ
意図した世界観で配色をセットで選べているか。単色で考えてはいけません。「爽やかな学園生活」なら「青・白・ワンポイントに赤」など配色セットを意識するとうまく行くと思います。


まずはこのあたりに注視すると、気持ち悪さに気づきやすいはずです。

これらは、すべて視覚的な違和感から発生しています。造形の質はちょっとのことを積み重ねて大きな効果を生みます。だから「違和感」にいかに気づけるかが良いデザイナーかどうかの最初の関門になります。

これはデザインをしている時だけでなく、常日頃から、いろいろなプロダクトを観て習慣的に「このデザインは違和感がある、このデザインは違和感がない」と練習するといいと思っています。

さらに「何が気持ち悪いか」を言語化しておきましょう。次の仕事に役立ちます。


そして、気持ち悪さのアンテナを高めるやり方もご紹介します。

【具体的な違和感に気づく方法】
□ 原寸でプリントアウトする
□ 大きくプリントアウト
□ 小さくプリントアウト
□ 逆さにする
□ 反転させる
□ 誰かに見せる(身内がおすすめ)
□ 嫌いなデザイナーが作ったものとして見る
□ 時間をおいてみる
□ 生活導線上の壁に貼っておく
□ デザインが実際に置かれる場所に置く
□ 光源を変えてみる
□ デザインに触れたその人を演じてみる

ということが考えられます。

各項目の説明は僕の著書『勝てるデザイン(仮)』にもう少し書く予定なので10月末の出版の際は読んで見てください。

noteサークルを使って「勝てるデザイン(仮)編集部」にて、原稿や取材動画、本づくりをすべて公開しています。ただいま121名が参加してくれています。(2020年6月29日現在)

カズ・オオモリさんという、ディズニー公認イラストレーターだったり、奈良芸術短期大学デザインコース准教授でもある方から聞いた言葉なのですが、これらの作業を「ビーカーワークス」という言い方をしています。

ビーカーは実験で使う液体を入れる容器のことですが、化学の実験のように、無数の実験を繰り返し繰り返して、良いデザインたどり着くというイメージです。

ビーカーワークスをやってみると、かなり大変な作業で、辛くなってしまう人もいると思いますが、僕も全く同じで、20年近くデザインの仕事をやっていても、毎回ビーカーワークスでヒィヒィ〜いってます。しかし、暗闇の中で、不安な気持ちで歩き続けた先に、明るい光が差し込んでいきます。

デザインは死ぬほどめんどくさい。でも楽しい。

いっしょにデザインを磨いていきましょう!


前田高志

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スペシャルサンクス:けんすうさん
僕がTwitterで「けんすうさんみたいなnoteが理想なのに書けない」とつぶやいたら、まさかのけんすうさんご本人がリライトしてくれました。まさかこんなことが起こるなんて…。Twitterってすごい。けんすうさん、本当にありがとうございます。

・まえだが書いた元のバーション



比べてみるとおもしろいよ。

これについてもnote書きたい。

それではまたね。


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