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アスレティックトレーナー(ATC有資格者)による脱臼患者の現場管理


📚文献


Cynthia J. Wright, Mike T. Diede; Practice Patterns of Athletic Trainers Regarding the On-Site Management of Patients With Joint Dislocations. J Athl Train 1 September 2021; 56 (9): 980–992. doi: https://doi.org/10.4085/1062-6050-364-20

🔑Key Point

🔑Key Point
・ほとんどのアスレティックトレーナー(AT;90%)は現場での関節脱臼の整復を行いましたが、整復を行う頻度は一般的に低かった(年に1回または年に1回未満)

・指節間関節、肩甲上腕関節、膝蓋大腿関節の脱臼はATによって行われる3つの最も一般的な整復でした

・適切な関節整復手順に関するATの教育には一貫性がなく、入門レベルの指導、医師または他のATによる実践的な臨床トレーニング、個人での読書が含まれていました

関節脱臼患者の現場管理に関するアスレチックトレーナーの実践パターン

今回は"Practice Patterns of Athletic Trainers Regarding the On-Site Management of Patients With Joint Dislocations"という論文を紹介します

日本語訳すると『関節脱臼患者の現場管理に関するアスレティックトレーナーの実践パターン』

ATC有資格者(アメリカでのアスレティックトレーナー資格)の方が現場で脱臼が起きた際にどのようにマネジメントをしているのかを調べた論文です📚

【参加者】
この研究では5000人のATC有資格者の方に調査リンクを電子メールで送信し得られた772件の回答(回答率15.4%)をもとに作られています。

【結果】
AT の 90% (n = 694)は整復 (医師の立ち会いの有無にかかわらず) を行ったことがあると報告し、10% (n = 78) は整復を行ったことがないと述べています。
指の指節間関節 (AT の 73.2%)肩 (63.3%)、および膝蓋骨 (48.2%) は、医師の立ち会いなしで行われる 3 つの最も一般的な整復として挙げられました。
AT の 46.5% (n = 359) のみが、認定前のアスレティック トレーニング カリキュラムまたはプログラムの一環として関節リダクション テクニックのトレーニングを受けていることを示しました。より多くの割合 (64%) が、医師から直接学んだと言います。

【ATによる脱臼整復の頻度】
合計 90% (n = 694) の AT が整復 (医師の立ち会いの有無にかかわらず) を行ったことがあることを認め、10% (n = 78) が整復を行ったことがないとコメントしました (図 1 )。

Figure1より改変


【医師の立会いの下で行われる関節の整復】
参加者の 64% (n = 494) が、医師の立ち会いの下で、少なくとも 1 回の関節の整復を実施または補助したことを示しました。36% (n = 278) は、医師の立ち会いの下で関節整復を行ったことも補助したこともないと述べています。医師の立会いの下で行われる整復の種類を図 3に示します。肩の脱臼 (AT の 53.9%)指の指節間関節 (49.7%)、および膝蓋骨 (36.7%) は、最も一般的に報告された 3 つでした (図 3 )

Figure3


【医師の立ち会いなしで行われる関節の整復】
合計 84% の参加者 (n = 652) が、医師の立ち会いなしで少なくとも 1 回の関節整復を実施または補助したことを示しました。15% (n = 120) のみが、医師の立ち会いなしで関節整復術を行ったり補助したことがないとコメントしました。医師の立ち会いなしで行われる整復の種類を図 4に示します。指の指節間関節(ATの73.2%)肩(63.3%)、および膝蓋骨(48.2%)の脱臼は、最も一般的に報告された3つでした(図4)

Figure4


👀読んだ感想

5000人に送って772件(回答率15.4%)という所に回答率低いな〜と思いましたけど電子メールで答えてもらえますかー?ってお願いされるとこれくらいの回答率になるんですかね?

ちなみに回答してくれた人には50ドルのギフトカード2枚をインセンティブとして渡してあります〜って本文に書いてありました💴
調べてみたら50ドルが6,700円くらいなので、研究のお手伝いしたら13,000円分くらいのギフト券が貰えたらしいです(笑)

ATC有資格者の方は医療従事者という認識だったので脱臼の整復も業務範囲内なんだろうな〜と勝手に思っていたんですけど、アメリカは州によって法律が変わるので、その州の医療法によって許可されている+指導医から指示されいる場合のみ整復操作が認められているらしいです!知らなかった!

90% (n = 694) の AT が整復 (医師の立ち会いの有無にかかわらず) を行ったことがあるというのは「現場にATが普及しているアメリカでは、まあそのくらいになるかー」と思いましたがデータの中で指のIP関節の脱臼が多かったのが意外でした👀!肩や膝蓋骨は遭遇したことがありますが私自身IP関節の脱臼はまだお会いしたことがないので。

日本で骨折や脱臼の整復を行うことができるのは医師と柔道整復師のみになっています。
柔道整復師は医師の同意を得た場合もしくは、応急手当てをする場合に限り整復が認められています!つまり現場で応急処置として整復をすることは可能ですがその後の病院への受診は必須になっています。

日本のアスレティックトレーナーは脱臼の整復をする事ができないので、応急処置をして医療機関へ搬送という形になると思います。
柔道整復師という国家資格がある+民間資格に位置づけられているATに整復していいよ〜と認められる日が来ることはなかなか無さそうですね🦴

💭最後に


内容とは少し逸れますが…
骨が逸脱したポジションにいる状態で骨に付着している組織が伸ばされている状態が長く続いたら組織損傷が起きそうな気もするけど、どうなんですかね?脱臼している時間が長くなれば組織損傷も拡大するのかな?

それとも脱臼時の外力で周囲の組織損傷が起きてるからそれ以降は組織の大きな変化は起こらないんですかね?
まあ早いこと整復するに越したことはないと思いますけど整復する方法の違いによっても、整復時に組織損傷が起きたり起きなかったり、再発のリスクが上がったり上がらなかったりなどありそうですが…

300人の被験者を集め肩を脱臼させ整復操作の違いによって予後がどう変化するかを追っていきました!とかいう破天荒な研究はできないし、中々研究するのが難しそうな所ですね〜

今回は一部しか紹介していませんが…
回答したATC有資格者の方がどのようなバックグラウンドを持っている方なのか。この研究結果から、今後どのように脱臼の整復に関する教育が行われていくべきなのか。などなど色々書いてあるので興味ある方は是非読んでみてください👀

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