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New York Timesが掲載する「コロナウイルス・ワクチン・トラッカー」

コロナは収まりつつあるのだろうか?

たしかに米国や欧州での感染者が増加するスピードは、ピーク時と比較すると収まっている。ロックダウンの規制も緩和し始めている。株式市場においては、3月23日の底値から上昇気流に乗り始めた。

しかしながら、コロナの脅威は終わったわけではない。これだけの好材料がありながらも、パンデミックの終焉に至らない理由のひとつは、コロナに効くワクチンが完成していないからに他ならない。

そこで、今回はほぼ全ての人類から注目されているワクチンの開発状況に目を向けていく。New York Timesがインフォグラフィックを用いながらとてもわかりやすく解説しているので、この記事を参照にする。

ワクチンとは

135を超えるワクチン開発プロジェクトが現在行われているが、全てのプロジェクトがダメになる可能性もある。ワクチンの開発はそれほど難解でチャレンジングなのだ。

仮にワクチンの開発が成功したとしても、通常の流れであれば、一般人の手に入るのは早くても1年半より先と言われている。ワクチン開発にはいくつもの臨床試験の壁を突破しなければならないからだ。

ワクチンの開発は、プレ臨床試験に始まり、フェーズ1〜3の臨床試験を実施。そこで問題なければFDAに承認を受け、ようやく量産体勢に入ることができる。

臨床試験の段階
・プレ臨床試験
・臨床試験
  フェーズ1(数人規模に投与)
  フェーズ2(数百人規模に投与’)
  フェーズ3(数千人規模に投与)
・承認
・大量生産

「ワープ・スピード作戦」

しかしながら、経済が1年半以上も止まるのは何としても避けたい。そこで米国政府が無尽蔵の血税を投入して遂行しているのが「ワープ・スピード作戦」である。

要は、爆速でワクチンを生産する計画のこと。

具体的には、プレ臨床試験の段階もしくはその前に、目ぼしいワクチンを選定。FDAからの承認を待たずに、選定されたワクチンの量産に走るのだ。

こうすることで、ワクチンの承認が降りた瞬間にソッコーで数百人、あるいは数億人規模に対してワクチンの投与が可能になるのだ。

注目されるワクチン開発

ワクチンにも種類がある。基本的には3パターン存在し、それぞれ別の特徴をもつ。

ここでは「ワープ・スピード作戦」に選定されたワクチンを紹介するとともに、ワクチンのパターンやどの臨床試験フェーズにあるのかについて簡単に触れる。

ワクチンのパターン
・Genetic Vaccines:コロナウイルスの遺伝子を使用して免疫反応を誘発するワクチン
・Viral Vector Vaccines:別のウイルスにコロナウイルスの遺伝子情報を細胞に運ばせて免疫反応を起こさせるワクチン
・Protein-Based Vaccines:コロナウイルスのたんぱく質、もしくはたんぱく質の断片を利用して免疫反応を引き起こすワクチン

企業名:Moderna
パターン:Genetic Vaccines
臨床試験:フェーズ2
mRNAを利用したワクチン。ボストン拠点のModernaはいち早くCOVID-19のゲノム解析できた企業で、政府からの期待も大きい。mRNAを用いたワクチンは人体への影響が低いが、比較的新しい開発手法であり、開発に成功した実績はない。7月にフェーズ3に、うまくいけば2021年の早々に完成。
企業名:BioBTech、Phizer、FOSUN PHARMA
パターン:Genetic Vaccines
臨床試験:フェーズ1、フェーズ2
ドイツに本拠地を置くBioNTechが、米大手Phizerと中国企業Fosun Pharmaと組んでワクチンの開発を進める。Modernaと同様、mRNAを利用した手法で進める。すべての試験でうまくいけば、秋にもワクチンの準備が完了する。
企業:AstraZeneca, University of Oxford
パターン:Viral Vector Vaccines
臨床試験:フェーズ2、フェーズ3
英・スウェーデン企業のAstraZenecaとオックスフォード大がタッグを組んで開発。米企業や大学が含まれていないにも関わらず選定されているのは、米国の本気度が伺える。すでにフェーズ2、3に入っており、実施場所は英国と、感染者爆増中のブラジル。成功すれば10月にも緊急用のワクチンが確保できる見通し。
企業:Beth Israel Deaconess Med Center, Johnson&Johnson
パターン:Viral Vector Vaccines
臨床試験:プレ臨床
メガ企業のJ&Jとボストンをあるメディカル・センターのコラボ。超大手企業が参画していることもあり、Modernaと並んで国からの期待がかかる。10月に予定していたフェーズ1、2を7月に早める計画に。個人的には、株も保有してるので頑張ってほしい。(持ってなくても頑張ってほしいけど)
企業:Merck, IAVI
パターン:Viral Vector Vaccines
臨床試験:プレ臨床
こちらも超大手の米Merck社と本拠地をNYに置くIAVIがタッグを組んでワクチン開発をする。エボラ出血熱に対抗する唯一のワクチンを生成した方法で、コロナウイルスに対抗する。5/26にワープ・スピード作戦への選定がアナウンスされたこともあり、全貌はまだ見えず。

まとめ

極めて難解なチャレンジであるが、唯一と言っても過言ではないほどの希望である、国を挙げてのウイルス開発。

お国柄、普段は「Freedom」な状態で独自の道を歩み、協調なんてみじんも感じられない。しかし、いざという時の「一体感」はすさまじい。これは米国のお家芸と言える。NYで働いた経験からそう思う。

そんなわけで、すごく楽観的だけど、135以上あるプロジェクトの内、一つや二つくらいは成功するプロジェクトがあるんじゃないかなんて思う。いずれにせよ、これはウイルスに対する人類の挑戦。心から応援したい。

寝る間を惜しんでウイルス開発に従事する方々の他にも、コロナ騒動で命を落とす覚悟で働く医療従事者やインフラ事業の方々にも感謝の意しかない。というか自分には感謝することしかできない。

それがときにもどかしくもある。それにしてもいろいろと考えさせたな、コロナの一件で。

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