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霜降り明星の「サブカル系ツッコミ」

 M-1グランプリ2018は霜降り明星の圧勝だった。これまで見たことない漫才に、ずっと笑っていた覚えがある。彼らの大躍進を受けてか「霜降り形式」を取り入れたネタが昨今増えているように感じる。今回は、M-1 2018 一本目のネタをもとに、霜降り明星のネタについて考察してみたい。

霜降り明星のネタは、見やすい・理解しやすい

1. スピード感
 他のコンビの漫才を見ていると、展開が早すぎて理解が追いつかないということが度々起こる。特にツッコミでキラーフレーズを使うタイプの漫才は難解であり、集中して見ないと理解できない。
 それが霜降りの漫才は、進行がちょうどいいスピード感である。ボケとツッコミを理解するために、時間を作ってくれている。

2. テーマのわかりやすさ
 タイトルをつけるのが難しい漫才がある。話題があっちに行ったりこっちに行ったりするタイプの漫才だ。最近の漫才はそういうのが多すぎて、結局どういうネタだったのか理解するのが難しい場合がある。
 対して霜降りのネタは、テーマが分かりやすい。2018年の一本目のネタは「豪華客船にて」というテーマがあり、時系列に沿ってネタが進んでいく。

サブカル系ツッコミ

 霜降りのネタで目立つのは「サブカル系ツッコミ」だと思った。サブカル系ツッコミとは、ボケ・ツッコミ自体には、マイムやフレーズにおいて面白い要素はないんだけど、見る人の知的好奇心をくすぐることで笑いをとるツッコミだと私は定義している。
 例としては、「ボラギノールのCMか!」「夜行バスのテンション!」「法事!」「ラジオネームか!」「リアス式海岸!」「表現力が劇団四季」「日付変更線で遊ぶな!」「倍返しだ!」など。(ぜひネタ動画を御覧ください)

 「ボラギノールのCMか!」を例にとって考えてみる。せいやが謎の動きをしていることに対して観客は、ボケの一部とは気づくものの何を表しているのか見当がつかず不安感を抱く。それに対し、粗品が答えを教えることで、観客はホッとして笑う。一種の緊張と緩和である。これは漫才の基本であるが、霜降りに特徴的なことは、ツッコミにサブカル要素が含まれているということだ。
 「ボラギノールのCMか!」の面白さを理解するには、そもそもボラギノールのCMがどういうものかという知識が必要である。観客は少なからず、この一連のボケ・ツッコミを理解できることに優越感を抱いている。加えて「そんなニッチなものをお笑いにするのか!」というメタ的な視点から漫才を評価する。この二つが相まって笑いが起きるのだろう。この構造がサブカルに似ている気がする。
 この構造は、若者ことばやモノマネにも似ていると思う。若者ことばが使われる理由は、仲間内でしか通用しない言葉を使用することによって、お互いの連帯意識が高まることに魅力を感じるからだと思う。つまりは、特定の言葉が通じるか通じないかによって、仲間内と部外者という対立構造を作り出すところにポイントがある。モノマネ、とくに「細かすぎて」みたいな笑いも「このモチーフをお笑いにする面白さを理解できるか?」みたいなところで対立構造を作り、それが笑いを生んでいる。「サブカル系ツッコミ」という表現が合っているかどうか不安だが、ニュアンスは理解していただけると嬉しい。

霜降り明星 以後

 霜降りの大活躍を契機に、サブカル系ツッコミを取り入れたネタが増えているような気がする。
 M-1 2021では真空ジェシカが最も近いように思った。「カウントダウンTVのメガネ」「沖縄の苗字」「ツミンチュ」「二進法」「キムタクのハンバーガーの持ち方」「ミッキー」「ハンドサインでヘルプミー」など。しかし「江夏のジャイロ回転」などはニッチ過ぎて、理解できる人が少なすぎた。粗品のワードセンス、霜降りネタのわかりやすさを改めて痛感するところだ。

まとめ

 霜降りのネタは、見やすい・理解しやすい。そして何より、粗品のツッコミが凄い。粗品のサブカル系ツッコミは、その塩梅が特に凄い。
 霜降り以後、サブカル系ツッコミを取り入れるネタが増えているように感じる。


 

 





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