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鉄(鉄分)の効率的な摂取方法

鉄はエネルギー代謝にとってきわめて重要なミネラルですが、全般的に吸収率が低く、充足させるのが簡単ではありません。

そこで、鉄の吸収にすぐれた食品や、鉄の吸収を促進する栄養素、妨げる栄養素など、鉄の効率的な摂取方法に関して解説します。
(記事の文末に動画を貼っています)


鉄の吸収率は低い

鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンと結合して、全身に酸素を運搬する役割を担っています。

ヘモグロビンに存在する鉄は、赤血球の寿命が来てもリサイクルされます。
そのため、出血がなければ、便や尿、汗によって排出される鉄は1日1mg程度です。

が、実際の必要摂取量は下の表の通りで、1日7mg前後です。

これは鉄の吸収が、さまざまな要因で低くなることが理由です。

そのため、鉄は
①吸収率の優れたものを積極的に摂る
②吸収率を上げる栄養素を一緒に摂る
③吸収率を下げる栄養素を一緒に摂らない
など、吸収を意識して摂取する必要があります。

ヘム鉄と非ヘム鉄

食品に含まれる鉄は2種類に分かれます。

左側のヘム鉄は肉や魚の鉄です。
吸収率は15〜25%。4分の1以下に過ぎませんがそれでも高い方なんです。

右側の非ヘム鉄は緑黄色野菜や海藻類、豆類などの鉄です。
卵は動物性食品なのでヘム鉄のイメージがありますが、非ヘム鉄です。
非ヘム鉄の吸収率はわずか2〜5%に過ぎません。

ですからヘム鉄を中心に摂取しましょう、ということはどの本にも書いてありますし、いろんな動画でも言っています。

ヘム鉄はリスクが多い?

ところが、近年このような研究報告が相次いでいます。
・ヘム鉄の高摂取が心血管疾患のリスクを上げる
・ヘム鉄の高摂取が脳卒中のリスクを上げる
・ヘム鉄の高摂取が2型糖尿病のリスクを上げる
・ヘム鉄の高摂取が男性の胆石症のリスクを上げる
・ヘム鉄の高摂取は大腸がん、胃がん、食道がん、肺がん、膵臓がん、子宮内膜がん、膀胱がん、前立腺がん、口腔がんと有意な相関がある。

「おいおい、それじゃヘム鉄は危ないじゃないか。吸収率たった2〜5%の非ヘム鉄しかないのか〜」という声が聞こえてきそうです。

これらの研究報告はすべて欧米のもので、日本を含めたアジアのものではありません。
欧米でこのような研究報告が多い理由は、ヘム鉄を含む肉類の摂取量が桁違いに多いからです。

ちなみにアメリカでは、週に約2kgの肉を食べます。
常識的な範囲内でヘム鉄を摂取する分には、今挙げた病気のリスクは深刻なものではないと考えます。

牛肉の食べ過ぎは要注意

どこまでなら安全という基準はありませんが、私は肉の摂取量を週に600gを上限の目安にしています。
私の場合、豚肉が一番多く、次に鳥肉、最後に牛肉の順番です。

豚と鳥はそれほどヘム鉄は多くはないので、ヘム鉄リスクはあまり気にしていません。
しかし、牛肉が多い人は、週に400〜500g程度にした方がよいかもしれません。

料理に牛肉を使うにしても、一人分は200gから250gくらいだと思います。
400〜500gだと、週に2回は食べてもOKです。

注意すべきは、焼肉屋とかステーキ店。量が多いだけではなく、ほとんど牛肉ではないでしょうか。
そういう食事を頻繁に行っていると、日本人でもヘム鉄リスクが上がる可能性があります。

参考までに、ヘム鉄のがんリスクに関しては、次に挙げる栄養素をしっかり摂ることによって軽減できますのでお伝えします

クロロフィル(海藻類)
ケルセチン(玉ねぎ)
ビタミンC
ビタミンE
カルシウム

この5つです。
肉食、とくに牛肉が多い人は、意識して摂取してください。

非ヘム鉄の効率的な摂取方法

次に、非ヘム鉄の効率的な摂取方法です。
吸収率2〜5%だと言って見捨てないでください

非ヘム鉄の吸収を助ける栄養素が3つあります。

一つは、今も登場したビタミンCです。

ビタミンCは、非ヘム鉄の吸収率を約3〜7倍に増やします。
理論上、これだけでヘム鉄の吸収率と同じレベルに近づきます。

ただし、ビタミンCは大量に摂ってはじめて、多くの仕事をこなします。
少量摂取の場合は少量なりの仕事しかしませんので、たっぷり大量に摂ることが前提です。

非ヘム鉄の助っ人、もう2つ目はレモンに含まれるクエン酸です。

魚にレモンを搾ってかけるのは、おもにカルシウムの吸収促進のためです。
が、レモンは鉄の吸収率も高めることを知っておいてください。

非ヘム鉄の吸収を助ける栄養素、3つ目はタンパク質です。

ヘム鉄の吸収が比較的優れているのは、鉄がタンパク質に包まれている構造のため吸収されやすいからです。
非ヘム鉄もそれに近い状況にするには、タンパク質が近くにあることが必要です。 

鉄鍋や鉄玉(?)もいいかも

また、栄養素とは違いますが、鉄製の鍋やフライパンを使うことも大切です。

2015年に改訂された日本食品標準成分表の中で、大きな変更になったのがヒジキの鉄含有量です。

100gあたり55mgあった鉄分が6.2mgと、9分の1になりました。
この理由は、ヒジキの製造に使われる釜の主流が、鉄からステンレスに変わったからです。

じつは、吸収率まで考慮すると、鉄は食品からだけではなかなか摂取できないというのが、多くの国の認識です。
そのため、国策として食品に鉄を添加する例があります。

アメリカでは、小麦粉やシリアルなど多くの食品に鉄を添加しています。
カンボジアでは、鉄玉といって鉄でできた鯛焼きのようなものを鍋に突っ込んで煮物料理をするそうです。

鉄玉とか鉄鍋などで鉄を補給することも、あながち他人事ではないといえます。

非ヘム鉄の吸収を妨げる栄養素

今度は逆に、非ヘム鉄の吸収を妨げる栄養素をやはり3つ挙げます。

①コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるタンニンは非ヘム鉄の吸収を阻害します。
食後のコーヒー、お茶は30分ほど空けて飲むことを薦めます。

②玄米に含まれるフィチン酸も非ヘム鉄の吸収を阻害します。

③加工食品に添加物として使用されているリン酸塩は、非ヘム鉄の吸収を妨げる性質があります。

非ヘム鉄の吸収を助ける栄養素と妨げる栄養素、まとめるとこんな感じです。

この図をよ〜く見ると、右の端っこに胃酸不足と書いてあります。

鉄は、消化の過程で、胃酸によってイオン化されることによって吸収されやすくなります。

ですから、元々胃酸の分泌が少ない、胃薬で胃酸を抑えている、ピロリ菌陽性である、胃がんである等の理由で胃酸不足の場合は、鉄の吸収率が低下します。

すぐには解決かもしれませんが、そちらの対策を並行して行うことが大切です。

まとめ

食品に含まれる鉄はヘム鉄と非ヘム鉄の2種類です。

ヘム鉄は肉や魚に含まれ吸収率は15〜25%。
非ヘム鉄は緑黄色野菜や海藻類、豆類、卵に含まれ吸収率はわずか2〜5%です。

ヘム鉄を中心に摂取するのが効率的ですが、あまりにも多く摂り過ぎると、さまざまな疾患のリスクが上がるので注意が必要です。

非ヘム鉄にも効率的な摂取方法があります。
非ヘム鉄の吸収を助ける栄養素が3つあります。
ビタミンC、タンパク質クエン酸です。

鉄鍋や鉄製のフライパン、または鉄玉を使って鉄をプラスαするのもいいかもしれません。

逆に、非ヘム鉄の吸収を妨げる栄養素も3つあります。
①コーヒー、紅茶、緑茶に含まれるタンニン 
②玄米に含まれるフィチン酸
③添加物に多く含まれるリン酸塩。

また胃酸不足の場合も鉄の吸収率が低下しますので、並行してそちらの対策も必要です。

この記事の内容については動画もアップしています。


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