「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」というパラドックスを知ってましたか?
数年前の牛乳不足(バター不足)が一転して牛乳余剰になっているようです。
心情的には、酪農家さんを助けるべく、牛乳をたくさん飲みたい所ですが・・・
牛乳という食品を栄養学または生理学の側面から考えると、私は飲みたいとは思いません。
今回は、牛乳の考えられるデメリットの記事【前編】です。
牛乳が人体にとってマイナスだと疑われている事実のうち、今回は「牛乳は、骨を強くするどころか弱くする」という理由を2つ解説します。
(記事の文末に動画を貼っています)
牛乳のデメリットはこんなに!
まずは、牛乳が人体にとってマイナスだと疑われている5つの事実を列挙してみます。
①骨が弱くなる
②乳がん、前立腺がんのリスク上昇
③腸の炎症(カゼイン)
④アレルギー
⑤残留抗生物質
②乳がん、前立腺がんに関しては、3月3日に公開する【後編】で解説しますので、ぜひお読みください。
それ以外のものについても、できるだけ早く記事を書きたいと思っています。
牛乳・乳製品の摂取量が多いと・・・
では本題です。
まず下のグラフをご覧ください。
これは、主要国における乳製品摂取量と骨粗鬆症発症率の相関関係を示したグラフです。
パッと見て、乳製品摂取量が増えるほど、骨粗鬆症を発症しやすくなることが分かります。
ニュージーランドをはじめとした酪農国では、軒並み骨粗鬆症の発症率が高止まりしていることは、知る人ぞ知るところとなっています。
少し本題から逸れますが、こういうグラフもあります。
牛乳、乳製品の摂取量と心筋梗塞の死亡率を表したものです。
こちらも、一目見て相関関係があることが分かります。
スウェーデン、フィンランド(いずれも酪農国)は突出しています。
カルシウムだけでは・・・
牛乳と骨粗鬆症の話に戻ります。
では、何故このようなことが起こるのかを説明します。
そもそも牛乳が骨を強くするとは考えにくい、という話から。
骨の主成分は確かにカルシウムですが(リン)、丈夫な骨を形成するのはカルシウムだけではありません。
それについては、下記の記事でカルシウムとリン以外に必要な5つの栄養素を説明しています。
5つ中でも大事なのはマグネシウム。
骨におけるマグネシウムの構成比は小さくて、カルシウムの100分の一程度ですが、その少ないマグネシウムが骨の強化に働いています。
ここで、食品に含まれるカルシウムとマグネシウムの比率が重要になります。
では、牛乳の比率はというと11:1 です(11がカルシウム)。
カルシウムが優位すぎて、全くバランスが取れていません。
いくら牛乳を飲んでカルシウムばかり体に入れても、マグネシウム不足で骨の強化にはつながりません。
「であれば、牛乳と一緒にマグネシウムが豊富な食品を食べればいいではないか」という意見もあるかと思います。
食事は単品ではなく、組み合わせだからです。
ただ、マグネシウムが豊富な食品といえば、海藻類や納豆、豆腐などの大豆食品、きのこ類などです。
なかなか、牛乳との食べ合わせとしては難しいと言えます。
牛乳を飲むことが、事実上のカルシウム単独大量摂取になりがちなのは、これも原因です。
カルシウムが一気に血中に入ると・・・
牛乳はカルシウムが多く、さらに吸収が早く、また吸収率が高いことで知られています。
カルシウムの吸収率は概ね、小魚30%、野菜20%に対して、乳製品は50%です。
カルシウムが多く、吸収が早く、吸収率が高いということは、それが吸収されたあと、カルシウム血中濃度が一気に上がるということを意味します。
そのことが骨がもろくなる遠因です。️
カルシウム血中濃度が急上昇
➡️体にとっては緊急事態
➡️慌てて血中濃度の調整が必要
➡️腎臓が緊急的に排泄
➡️「出せるだけ出せ!」
➡️結果的に過剰に排泄して、今度は、カルシウム血中濃度が適正よりも低くなります。
➡️すると副甲状腺ホルモンの働きで、再び血中濃度を上げることになりますが、「どうやって上げるのか」「どこからカルシウムを持ってくるのか」が問題です
➡️答えは骨にあるカルシウムを溶かして血中に流すのです。
➡️これが続くと、骨密度が次第に低くなる、という仕組みです。
だから「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」ワケです。
血液が酸性に傾こうとすると・・・
「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」理由で、もう一つの見方として考えられるのは、牛乳が酸性食品だということです。
なかでも、成分を調整した加工牛乳は強酸性です。
強酸性食品を習慣的に大量に飲み続けるとどうなるかということですが、血液が酸性に傾こうとします。
ここで、簡単に酸性とアルカリ性の復習です。
Phペーパーって覚えていますか。
液体が酸性なのかアルカリ性なのかを表す尺度です。
0から14まであって、真ん中の7が中性、0に行くほど酸性が強くなり14に行くほどアルカリ性が強くなります。
血液のペーハーですが、弱アルカリ性、7、35〜7、45の範囲です。
体はこの範囲を出ないよう厳重にコントロールされています。
もし、この範囲を逸脱しようとする現象が起こると、それを元に戻そうとする力が働きます。
それを恒常性といいます。
先ほどのカルシウム血中濃度の調整も恒常性の一つです。
話を戻して、強酸性の加工牛乳を習慣的に飲み続けると、血液が弱アルカリ性から酸性に傾こうとします。
すると恒常性が働き、血液のペーハーを弱アルカリ性に戻そうとします。
さて、どうやって戻すかというと・・・
(お急ぎでなければ、ちょっと考えてみてください)
勘のいい人はピンときたかと思います。
そうです。
ここでもカルシウムを溶かします。
カルシウムはアルカリ性なんです。
アルカリ性のカルシウムを血中に溶かすことで中和します。
カルシウムは、酸性に傾きそうな血液を弱アルカリ性に戻す、きわめて身近な材料です。
このことからも「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」ということが言えるかもしれません。
では、私は・・・
牛乳が骨を弱くするという見方を紹介しましたが、これも科学的根拠という点ではまだまだ十分ではなく、異論もあるということは付け加えておきます。
では、私はどうしているかというと、牛乳はもう十数年は飲んでいません。
牛乳を飲まなくても、カルシウムは、小魚をはじめとした魚介類、海藻類、大豆食品、緑黄色野菜などから摂取できます。
科学的根拠が十分でないとはいえ、何もリスクを抱える必要はないと考えています。
乳製品についてですが、ヨーグルトは最近やめました。
牛乳やヨーグルトの場合、どうしても100gから200gくらい摂取してしまうからです。
料理でバターを使ったり、スライスチーズを乗っけたり、時々はカフェオレを楽しむとか、これらの乳製品はせいぜい10〜20gですので、これまで排除してはいません。
何事も程度問題だと思います。
繰り返しになりますが、強い骨のためには、別記事で解説したマグネシウム、タンパク質、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンKが大切だということを、最後に強調しておきます。
まとめ
骨の主成分は確かにカルシウムですが、丈夫な骨を形成するのはカルシウムだけではなく、中でも大事なのはマグネシウムです。
しかし、牛乳に含まれるカルシウムとマグネシウムの比率は11:1 です。
圧倒的にカルシウム優位で、マグネシウム不足により骨の強化にはつながりません。
牛乳はカルシウムが多く、吸収が早く、吸収率が高いので、カルシウム血中濃度が一気に上がります。
すると、
慌てて腎臓が緊急的に排泄
➡️過剰に排泄して、カルシウム血中濃度が低くなる
➡️今度は副甲状腺ホルモンの働きで、骨のカルシウムを溶かして再び血中濃度を上げます。
だから「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」ということです。
これに近い見方で、酸性食品である牛乳、なかでも強酸性食品である加工牛乳を習慣的に飲み続けると血液が酸性に傾こうとします。
すると恒常性が働き、血液のペーハーを弱アルカリ性に戻すためにアルカリ性であるカルシウム、つまり骨を溶かします。
このことからも「牛乳を飲めば飲むほど骨が弱くなる」ということが言えるかもしれません。
強い骨づくりのためには牛乳以外からカルシウムを摂取するのが確実だと私は考えます。
この記事に関しては動画もアップしています。合わせてご覧ください。
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