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どんなサンタになりたい?--高橋照美の「小人閑居」(13)

夏まっさかりなのに、なぜか近所の子供に「どんなサンタになりたいの」と聞かれた。
大人は全員が、サンタになる前提らしい。すれっからしてるんだか信頼されてんだかわからない。

「じゃあ特別な係のサンタになる」と答えた。子供は私の話をなんとなく聞いてくれた。

――プレゼントを「あきらめ」たり、なにかの事情でプレゼントを「ほしいと言わないことにした」子供専門の係のサンタになる。そうして小人をいっぱい雇って、そういう子供について一人残らず、ほんとうはどんなプレゼントがほしいかを、調べたり聞きだしたりして、プレゼントを用意する。

子供は「へえー」と言った。私はもう少しだけ話した。

――それから物のプレゼントだけじゃなくて、周りの大人の配置を少し変える。「ほしいものをほしいと言っていいんだ」とか、「あきらめたり言いたいことを吞み込んだりしなくていいんだ」とか、そういうことを子供に言ってくれて、場合によっては保護してくれる大人を、子供のまわりに一人でいいから置く。それで、子供が安全に、希望を持って大人になれるようにする。サンタになるならそういう係をする。

子供は「へえー。どうして」と言った。

――子供が「大人になるのが楽しみだな」と思えるような世界を作るのが、大人の仕事だとおもうから。

子供は「ふうーーん」と言った。

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!