見出し画像

インタビュー話法:リアクションパターン類考

ひとの話はうのみにしちゃいけないよ、約束だよ?

【話を聞いた時の返し方のパターンってこんな感じ】
「A」という話をされたと仮定します。それに対してインタビュアーがする思考は、“その「A」をどう展開させるか”。

1.A→A(単純な感情的反応)

Aという話を受けて、何も変えない反応をする。雰囲気づくり、相手を乗せるコミュニケーション。「うんうん」「それな」「なるほどです」「ですよね」「パねえ」「マジ卍」「あ゛ーーーーー」「へえーーーー!」とかとか。あんまり意味はないけど、意外とめちゃくちゃ大事。意味が詰まりすぎている会話は逆に集中力が落ちていく。冗長率のコントロール。

2.A→A'(要約)

Aという話を受けて、「これってこういうことですよね/ですか?」と返す。わかりにくい相手の発言を翻訳して握る、言質を取る手段として有能(※かつギルティ、後述)。意外とこっちが次の質問を考える時間稼ぎにも有効。

3.A→a(掘り下げ)

Aという話について、もっと詳しく聞く。エピソードやエビデンスをしっかり取りにいく意識。基本的に5W1H。「Why」「How」が王道なのは言わずもがなだけど、原稿のことを思うと、事実関係をはっきりさせるための「When」「Where」「With who」あたりもかなり重要。
シンプルに相手の言った単語を繰り返す“オウム返し”もここの部類。(例:「それはある種、ウォークライダンスなしで試合を始めるようなものじゃないですか」「ウォークライダンス?」「ほら、ジェネシスで恒例の」「ジェネシス?」)。

4.A→B(時間的展開)

Aという話を受けて、主に時間的な連続性のあるBという話に展開する。基本は時間を進めるが、時には戻す場合も。シンプルなインタビュー設計における、いわゆる「次の項目に移りますね」的な質問。
これを「次に移りますね」的なポーズをなるべく見せないで繋いでいくと、やり取りがぶつ切りにならず、自然な会話感を保てるのでスマート。

5.A→I(文脈的展開/視点移動)

Aという話のトピックを受けて、文脈的な連続性のあるIという話に展開する。「ほかの会社では~」「昨今の界隈では~」みたいに視点を移動させて俯瞰的な意見を聞いたり、「いま、○○ってホント大事だと思ってて」などと特定のトピックについてのディスカッションしたり。
「個人的な感想を伝える」という行為は1寄りだが、ここにも繋がるテクニックだったりする。知識レベルに依存しない話の広げ方なので、感想シェアの汎用性は高い。

6.A→ω(井戸端展開/雑談的飛躍)

Aという話を受けて、そこからインスパイアされたωの話を振ってみる、あるいはこちらが話す。つまりは雑談。一見関係なさそうでも、かすかに連関しているから、良質な飛躍や新しい発見に繋がり得る。“会話”の醍醐味。
インタビューに組み込むのは高度(個人の知識量やインスピレーションに依存するので再現性がない)。また、相手との関係性がある程度出来上がっていなかったり、「この話したらこんな展開になるのでは?」という狙いがまったくなかったりすると、貴重な時間を無駄に食うだけになりかねない。ただ、最近ここの力をすごく感じる。

業務用覚え書き

・「術」とか「法」とか銘打たれていても鵜呑みにしちゃいけないよ(二度目)、私見をそれっぽく語ってるだけかもしれないからな! 先人の経験則は有難く拝借しつつ、自分なりに解釈して、身体に馴染むようにアレンジしていきましょう。

・取材初心者は基本1~4の展開でシンプルに。「しっかり相づち、取れ高を押さえる質問、不明やポイントを逃さないオウム返し、素直な感想」の4つが徹底できれば、イレギュラーな取材でもない限り、ほぼ及第点は超えられるはず。
慣れないうちは、「上手に質問しよう」「上手に会話しよう」と思わないことが鉄則。お仕事ならば、まずは下手くそでもぎこちなくても会話になってなくても「聞くべきことを聞く」を徹底する。基礎ができてから絶望しよう。

・相手の話を真面目に聞きながら「次の展開は1~6どのコマンドにしようかなー」とうっすら別コアで思考を回しておくイメージ。個人的に、インタビュー中は「聴く/理解する」「身体的・言語的リアクションをする」「話し手のコンディションを観察する」「取れ高を測定する/時間を加味して展開を調整する」の4ラインの思考を並列に回しつつ、まとめて「楽しむ」に努める感じです。

・相手が取材慣れしていない人の場合、意識するべきは「1マシマシの場づくり」。すんごい大事。
大体「私の話なんて面白くないでしょ」って不安に思ってることが多いから、とにかく「あなたの話は面白いしもっと聞きたいよ」って意思表示をちゃんとして、相手を「話すの楽しい/スッキリする」状態まで持ってく。ある程度楽しいって思ってもらわないと、パーソナルに踏み込んだ質問をしても、自己開示度の浅い返答になりがち。「こちらの質問の精度<相手の心理的安全性」、テクニックでどうこうしようとしない。
あと、とってつけたようなリアクションは大体バレてるのでやめたほうがいい。元も子もない話だけど「どんなトピックでも“自分と違う他人の話”というだけで、ほぼ何でも素直に面白がれる体質」は、職能として重用です。

・「要約」の権能を過信しない。言語化が苦手な相手の場合、こちらが意味をくみ取りながら「それってこういうことですか?」と補助線を引く行為はたしかに大事。ただ、調子に乗ってやりすぎると、相手も無意識にこちらの解釈に依存し始める。インタビューは「相手の視点、思考を、言葉の力を借りておすそ分けしてもらう行為」であって、こちらの言葉で相手をピン止めする行為ではない。給水所で水を渡すのはOK、ゴールテープを目の前まで持っていくのはNG。取材者は媒介、どんなに喜ばれようが、ぜったいに預言者になっちゃアカン。

・相手の思考HP/MPが高いケースに限り、「こちらから積極的に解釈や仮説を投げかけていく戦法」が光る。いや…光るというより、そういうケースの場合、むしろこれをやっていかないと、一回性のある発言を引き出せずに焼き増しの内容で終わってしまうこともね、多々あるよね(取材慣れしている人だと、とくに。がんばろう同志)。
つまりはケースバイケースで、こちらのキャラクターや立ち位置の見極めをするのが大事。毎回違う人間を相手にするのだから、「この方法論で絶対にうまくいく」なんて型はない。ベースとなるスキルセットをたくさん持っておいて、人に合わせて「これ使おう」「これはナシ」とチューニングする。

・終わった時、どんな相手にも「楽しかったー!」って言ってもらえるようなインタビューにしたいですね\(^o^)/ 人の時間をもらうっつうのは、またとない機会で、めちゃくちゃ貴重なことなんだ。

インタビュー深めるために読むと佳きなやつ

ちょっと固いけど「学術的なインタビューの在り方」「多様な目線が包摂されているもの」を最初に目を通しておくと、それをベースに応用を積み上げていけるので、下1冊読んだ後に、『聞く力』みたいなとある熟練の実践者の「洗練されたやさしい言葉」に触れるのが良さげです。やさしい言葉は、誰かのフィルターによってぎゅっと要約された言葉なので。要約される前の、ざらざらとした経験値を大切に。

※以下、エントリー層はスルーしてください。
やっぱり「インタビュー」は機能的インタビューの枠を出ないと話が面白くならない(目的思考だから、こういった類型化ができるし)。精通しなくてもいいから、さまざまなコミュニケーション文法に触れておいて、その文法間を行ったり来たりするとバランスが取れる気がする。そのあたりの文法の尊さはこれらから学びました。

相手を変えようとしないこと。無意識に変えるようなアプローチを取ってしまわないこと、したときに自覚して軌道修正できるように。人の話を聞く仕事を続けていく人には、ぜひこのあたりも読んでほしいな。

現場からは以上です。

【2020/11/26 追記】

「暗黙知になりがちなインタビュースキルを、もっとオープンにしていこう」的な試みイベントをやります。

インタビューの仕事をやっていきたい、興味ある、と思っている方々、ぜひのぞきにきてください。

より佳く生きていこうと思います(・ω・)