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いつでも誰でも誰とでも! 原稿相互フィードバック「YMO会」実施マニュアル

佳きな原稿が書きたい…!!!

そのためには、人からたくさんフィードバックをもらうことが、超めっちゃ大事です。バリめっちゃ大事です。

ライターの成長自走を促す、原稿の相互フィードバックを推していくためのワーク、名付けて「YMO会」のやり方をマニュアル化しました。みんなこぞって使い倒してくれよな!


これは何についての文書?

タイトル通り、いつでも誰でも誰とでも、「YMO会」を開催できるようにするためのマニュアルです。

いやいや「YMO会」ってなにさ?

現在わたくし、編集デザインファームinquireで、「組織内のライティングスキルアップを推して参ろうの係」を担っています。その活動の一環として、週1回、所属ライターに声をかけてYMO会を開催しています。
YMO会とは、すなわち「原稿相互フィードバック会」の通称です。
完成原稿における「Y・M(佳き・モヤっと)ポイント」を複数人で見つけ合ってディスカッションを行ない、最終的にそれぞれが今後の執筆での成長課題「O(推して参る)ポイント」を策定することで、個々のスキルアップを促進。言語化された学びをシェアしたり、文書としてストックしたりしていくことで、組織全体のラーニングにも繋げています。

YMO会の主な効能

◆読者という存在の実感
読んでもらえている、伝わっているという実感を生で感じられる。それで「ここ佳きだね」と言ってもらえる。これは意外と貴重で、普段漫然と“仕事”としてライティングを淡々とこなしていると忘れがち。書くことの喜びや責任感を思い起こせる。

◆客観的なフィードバックからの学び
前提知識のない読者からの率直な感想は、手練れの編集者からのフィードバックと同じくらい学び多し。

◆編集的思考を養える
他人の原稿のフィードバックをすることで、客観的に「もっとよくするためには?」という視点で文章を読む力が育つ。それは、自分の原稿を客観的に見て直す力に繋がる。

◆ネクストステップの明確化
原稿を納品して終わり…になってしまうのはもったいない。書いたものを振り返り、そこから「次はここを意識してみよう」と課題感を言語化することで、確実なステップアップに繋がる。

◆とにかく尊い、楽しい
ライター孤独になりがち。仕事のフローの中では慌ただしくて、自分だけでなかなか落ち着いて振り返りをする時間も取りにくい。定期的にこういう機会があると、お互い鼓舞し合えるし、取材上や執筆上の悩みなどもシェアできて一石万鳥。


YMO会のやり方

~まずは準備の4ステップ~

①日付を決めて参加者を募る
(目安:開催日1週間前まで)
・「YMO会やるよー! 来てきてー!」と編集部やコミュニティ内で呼びかける。
・人数は2~6人がベスト(7人以上集まったら、2グループに分けてやるのも検討)。
・会の長さは1~1.5時間が目安。
・呼びかける人は、事前にひとり確保しておけると、流れることはないので心が安寧。

②原稿を共有する
(目安:開催日4日前まで)
・参加者が「フィードバックされたい原稿」を共有する。
・原則として「自分が執筆した完成原稿(納品済み原稿)」を提出対象とする。
・コメントなどを書き込めるように、記事のURLではなく、本文をグーグルドキュメントにコピーして「編集可」の状態で共有するのがベスト。
・フィードバックする原稿の本数は1~2本がちょうどよい(3本以上はタイムマネジメントが難しくなるので非推奨)。

③共有された原稿を各自が読み、コメントを書き込む
(目安:開催2日前まで)
・参加者は事前に共有された原稿を読んで、「Y・M(佳き・モヤっと)ポイント」をコメントに書き込む。
・コメントの書き方は「Y:ここはリズムが佳きでした!」「M:ちょっと意味がわかりにくくてつまづいた」みたいな感じで、YとMがわかるように。理由は書けたら書くし、「なんか佳き」「なんかモヤっと」だけでもOK。内容に関することでも、文章に関することでも、何でもOK。
・YMコメントはともに、「感覚的に佳きと思ったところ、ちょっと引っかかったところ」に入れていくのがコツ。直感を大事に。
・コメント記入が完了したら、お知らせし合えるとベター。

④コメントを見ながら、味わうように記事を読み返す
(目安:開催当日まで)
・他人のコメントを見ながら、「自分はどう感じるかな」「自分だったらこう直すかも」と考えながら、じっくり記事を読み込む。
・「ここのコメント、どう考えるかみんなとディスカッションしてみたいな」などとイメージを膨らませておけるとステキ。

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(実際のYMO会で付いたコメントの様子。こんな感じでラフに書き込んでいきましょう)


~当日の会の流れ(所要時間目安:60~90分)~
※オンラインで行なう場合は事前に使うツールの選定と接続確認をしておいたり、会の5分前に会議場所のURLをシェアしたりなど、事前に必要な準備を済ませておきましょう。
※※以下の流れは「参加人数4人以上、チェックする原稿2本」の想定です。参加人数が3人以下、原稿が1本の場合は、②③の行程を簡略化するなど、適宜アレンジしてください。

①チェックイン
(目安:10分)
・テーマはなんでも佳き。自己紹介とか、最近書いた原稿のこととか。とりあえず全員一言ずつ発言して準備体操。
・コミュニティ内で継続して開催している場合、「最近YMO生かせてる?」みたいな振り返りを簡単にできると佳き。
・各自の接続状態の確認も兼ねる(問題がある場合、できる限りの対処や配慮を)。

②個別の原稿ディスカッション
(目安:20分)
・記事が2本の場合は二手に分かれて、それぞれ同時並行でディスカッションを行なう(オンラインの場合は、片方のチームが一旦抜けて、別のビデオ会議場所を立ち上げる)。その際、自分の書いたものではない原稿をチェックするチームに入るのが望ましい。
・事前にチェックした原稿とコメントを見ながら「これめっちゃ佳きだよね~」「ここどう思う?」「直すとしたら、どう直す?」などと単純に感想を述べ合ったり、ディスカッションしたりする。

③全体でのディスカッション
(目安:原稿1本につき20~30分)
・個別のディスカッションが終わったら、1本ずつ全体でディスカッションをする。
・個別ディスカッションをしたチームが「ここが盛り上がりました」「この部分、ぜひ皆の意見を聞きたい」などと話した内容を発表して、それを足がかりにあれこれ議論する。
・みんなのコメントを受けて、書いた人が「ここはこんな風に悩んだ」「ここは取材がこうだった」など、執筆までのプロセスをシェアできると学びが深まる。
・最後、書いた人が「いまのディスカッションから見えてきたO(推して参る、今後の改善)ポイント」を言語化してまとめて、一区切り。

④チェックアウト
(目安:10分)
・全体の議論を振り返りつつ、各自がそれぞれOポイントを発表。

+α:事後
・各自がその日のディスカッションで感じた「YMOポイント」をまとめて、コミュニティ内にシェア。
・学んだこと、気づきなどをnoteにまとめて公開できるとさらに佳き。

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(inquireのslack上の「YMO会チャンネル」では、毎回参加者がこんな感じで振り返りをしてくれています。学びが可視化されて全体に共有されるし、この投稿を起点にディスカッションが生まれたりするので、とても佳き)

YMO的ディスカッションの心構え

【なぜKPTではなく、YMOなの?】
「YMO(佳き・モヤっと・推して参る)」は、「KPT(Keep・Problem・Try)」の言い換えです。言葉遊びのようですが、意外と真面目に考えて「YMO」に変えました。

>「keep」と「佳き」
>「problem」と「モヤっと」
この2つの語感、比べてみてどうでしょうか?

「problemを見つけて」「モヤっとポイントを見つけて」とそれぞれ言われた時、上がってくる指摘は、果たして同じでしょうか?
「problem」の方が、なんとなく、「明確にアカン」って感じのポイントに絞られそうですよね。一方でモヤっとの方は、「間違いではないんだけど、ちょっと気になるなあ」って所まで意識が及びそう。あと、モヤっとの方が、言われて傷つかない感じがしないでもない(笑)
「keep」って、ちょっと上から目線っぽくて、指摘しづらい感じがしちゃうって人、いるんじゃないでしょうか? 「佳き」だと気軽に愛でられて、ハッピーな気がするんですよね。
恐らくですが、「KPT」の言葉で原稿のフィードバックをするのと、「YMO」でするのとでは、内容はかなり変わってくると思います。

こういうの、すごく大事だと思っていて。それはつまり、「その言葉が自分の感覚、体に合っているか」という問いを持つことです。みなさんがやるときも、必ず「YMO会」にしなくていいと思っています。自由に、自分たちのスタイルに合う名前を付けて、取り組んでみてくれると嬉しみです。
(ちなみにOは、「YMときたら…あ、Oじゃん!」って決めたので、とくに意図はありません(笑)。でも、「推して参る」ってなんかカッコよくてテンション上がる感じしませんか?)

【感覚的なYとMを、フランクに出し合うのが大事】
原稿のチェックをする際にコメントする「Y・M」については、「ここ佳きだなー」「ここなんかモヤっとするなー」という感覚を大事にしてください。明確な理由が思い浮かばなくてもOK。その理由について話し合うことに大きな意味があります。
感覚にはその人がまだ言語化できていないロジックや美意識が含まれています。それをみんなで言語化して共有できれば、暗黙知が可視化されて集合知になっていきます。めっちゃハッピーです。

まずは全体をサーっと読んで、ビビッと来た箇所に、「Y」「M」とだけコメントを書き込んでいくのもいいでしょう。その後でもう一度読み返して、「なんでY/Mと思ったのか」を考えてみて、可能であればその理由をコメント欄に書き足していく。難しかったら、「言葉にするのが難しい…」とか、そのまま書いちゃえばいいんです。そんな感じで、自分の感覚や気づきを大事にしながら、原稿に向き合ってみましょう。

【正解を決める場ではない、各々が当事者としての最適解を探そう】
「(私は)こう思う」は佳き。「(貴方は)こうするべきだ」はちょっとモヤっとです。
YMO会は、各々の知恵や感性を持ち寄って、「それぞれがより佳い原稿を書くための気づきや学びを得る場」です。結局は、それを書く当事者に腹落ち感がないと、どんな指摘も上滑ってしまいます。つまり、他人から「こうするべき」と言われて従うのではなく、本人が「こうすればいいのか!」と心動くことが大事。その結論に至るまでの道のりを、ディスカッションしながらみんなで歩くイメージが佳きです。自ら主体的に考え、自分の足で歩いてたどり着くからこそ、学びは身に付きます。

ただ「こうするべきだ」という思いが生まれた事実自体は、とても大事。それを直接伝える前にまず「どうしてそうなったんだろう?」と考えたり、問いかけてみたりましょう。そこには執筆上の課題だけでなく、企画や取材での課題が潜んでいるかもしれません。課題の根っこが見えてくると「そういうケースあるよねー」と盛り上がることが多いです。「他人の課題」ではなく、その場のみんなが「共通の課題」として捉えられると、「じゃあどうしたらいいかな?」「こうしてみたらどうかな?」「それなー!」という議論が生まれて、より全員の学びにつながっていきます。「鶴の一声でハイ解決」ではなくて、体に落とし込むまでのプロセスを大切に。

【意見に貴賤なし、誰のどんな意見も尊い】
経験豊富な人からの指摘は、実践の中で磨かれていて、とても参考になります。経験が浅い人は、「いろいろなことを知らない前提」での意見をくれます。知っている人間は、知らない状態には戻れません。そして、読者の多くは、知らない人だったりします。だから、経験の浅い人からの意見も、すごく参考になります。

みんなそれぞれに得意としていること、執着していることが違います。「やさしい文章」が好きな人もいれば、「カッコいい文章」が好きな人もいる。それぞれの人たちが「佳き」と感じるポイントは、同じ文章を読んでいても、きっと違ってくるでしょう。それぞれが、めちゃくちゃ参考になります。

意見が食い違うこともあるでしょう。けれども、違う意見だからと言って、「どちらか一方が正しい」とは限りません。両方とも正しいこともあれば、両方とも間違っていることだってある。「なぜ違うのか?」とみんなで考えていくと、その先には大きな学びがあるはず。

時には間違った意見を出してしまうこともあるでしょう。でも、同じように間違う人がたくさんいるかもしれません。文章自体がミスリードを誘発するような構造だったのかもしれません。「なぜ間違ったのか?」をみんなで考えていくと、それは正しい意見を言った時以上に、豊かな学びに繋がります。

以上踏まえ、あらゆる意見に「ありがとう」の気持ちを持ってディスカッションができると、とても楽しく学び多き会になります。みんな先生、みんな生徒、みんなが「佳き原稿を書こうぜ」と切に願う同志です。

【だからファシリはそんなにいりません、車座的に輪になって】
この場では立場の上下強弱なくフラットに、自然発生的に各々が感じたことを言えるのが大事。誰かの言葉に誰かの思考が触発されて、言葉が言葉を連れてきて繋がっていく感じが佳きです。
ただ、最初からいきなり「はいそうやりましょう」と言っても、慣れてないとなかなか言葉が出てこないこともあるかと思います。

そういう時は、誰かれともなく「○○さんはどう感じましたか?」「いまの意見について、どう思いましたか?」とボールを投げ合えたらいいですね。原稿を書いた人、チェックをした人がそれぞれ、自然な主体性を持って「ここすごく悩んだんですけど」とか、「ここめっちゃいいと思ったんですけど」とか、話したいと思ったことを率直に言葉にしていけると、自然と盛り上がっていくはず。だって、みんな原稿書きながら葛藤してることって、結構共通してるから。

あ、強いて言えばタイムマネジメントだけ、みんなで気を付けられたらいいかもです。慣れてくると話が尽きなさすぎて、時間いくらあっても足りなくなってくるので。

勝手にFAQ

Q:なんで完成原稿(納品済み原稿)推奨なんですか?

現状inquireで催している定例のYMO会は、「仕事のフローの中では慌ただしくて、書きっぱなしになってしまいがちな原稿を、終わった後に心を落ち着けて、じっくり振り返ってみる」ところに大きな価値を見出しています。納品前の原稿だと心がざわついていたりするし、「この会でフィードバックをもらってから出そう」という意識が生まれてしまうと、それが制作進行の支障になってしまう可能性もあったりします。
また、納品前の原稿にフィードバックを行なうと、編集者と意見が食い違って、それもまた進行の妨げになるおそれがあります(食い違いは学びの源泉ですが、納期が差し迫っていたりすると、なかなかじっくり対話の時間を取れないこともありますよね)。
なので、「コミュニティ内で全体定例としてやるYMO会」に限っては、納品後の完成原稿を対象にしています。

Q:ともあれ、納品前の原稿でも相互フィードバックする価値、めっちゃあるよね?

おっしゃる通りです、めちゃくちゃ効果あります。それについては、「同じ媒体で書いているライター同士で、突発的に小さく個別YMO会をやってみてね」と呼びかけています。
編集部のコミュニティ内で「誰か今日明日でYMO会やりませんかー?」と声をかけて、さっと集まれる人だけで開催。原稿1本30分単位で、サクッとやってみる。
大いに雑談的に楽しい会なので、息抜きにもちょうどよいです。同じ媒体で仕事をしている同士なら、媒体サイドや編集者の意図もなんとなく汲みながら実のあるディスカッションができると思います。提出前の原稿がブラッシュアップされるから、編集コストも下がります。ライター同士の励まし合いネットワークも生まれてくるので、士気も上がります。ほらほら、いいことづくめです。

Q:YMO会で扱う原稿は、「自信のあるもの」と「自信のないもの」、どちらがいいと思われますか?

上記については「どちらでもいい」、もとい、「どちらもいい」が個人的な見解です。
自信のない原稿を見せれば、それだけモヤっとポイントも多くなる可能性が高いので、得られる具体的な学びが多くなりそうですね。また、意外と自分が「自信ない」と思っていたところでも、他の人から見たら「そうでもなかった」というポイントも見えてくるかもしれません。
一方、自信のある原稿ならば、その分相手から「ここが佳いね!」と言われる箇所が多くなると思うので、単純に嬉しいし、モチベも上がりますよね。自分の思ってもみなかったところを褒められるかもしれません。自分のよさって案外、自分では気づけていなかったりするので。それと、「やりきったぞ!」と思えている原稿に対して「まだまだここ伸ばせるんじゃない?」といった指摘が入ると、限界突破できます。これもまた尊い学びです。
だから、「どちらがいいか」ではなく、「どちらとも違った学びを得られる」と捉えてもらって、どちらもYMOしていけると最高だと思います。

Q:なんで「佳き(よき)」って漢字なんですか?

性癖です。

Q:なんで「佳き(よき)」って漢字なんですか?

完全な私勘ですが、「良き」って書くと、その裏側に「良し悪し」がある、って前提が透けてくる感じがするんですよね。「悪し」があって、その対岸に「良き」がある、みたいな。なんかそうじゃなくて、比較対象なく独立した、それそのままで尊い「よき」って感覚を大事にしたいなと思って。で、ひらがなより、漢字のほうがかっこいいよなあ、なんかないかな……あ、「佳き」。「なんか雅で佳きじゃん!」って流れです。つまるところ性癖です。

Q:これ、丸パクリしてうちの会社とかでやってもいいですか?

大歓迎です。丸パクリして我が物顔で活用してください。コピペして社内wikiとかに載せてもらっても構いません。そんでもって、どんどん自分たちの体感にフィットするように、ローカライズしていってください。それをまた、「ウチではこんなやり方してるよ!」って発信してくれたら最&高です。それを拝見して、私たちもまた勉強したい。

学びを放流して、フィールド全体を豊かにして、それがまた自分のところに帰ってくる。そういう学びの循環を、みんなで生み出していきたい所存です。

このフレームが少しでもたくさんの書き手の成長に寄与して、世の中に佳き記事が増えることを切に願っています(-人-)

(この欄は随時アップデートしていきます。みんなの叡智と経験則を結集させながら、マニュアルは日々進化するZ!)

最後にちょっとだけ推しらせ

inquireでは、ライティングを学び合うためのコミュニティを運営しています。「ひとりだとなかなかスキルアップ、モチベーション維持がむずいなあ」と思ってる書き手の方、もしかしたら役に立つかも。

あと、常時ライターさんや編集者さんは募集しているようです。ご興味あったら下記よりお気軽にどうぞ(=゚ω゚)ノ

会社のHPはこちら↓


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(๑•̀ㅂ•́)و✧エイエイオー!

より佳く生きていこうと思います(・ω・)