【白石和彌監督作品】『ひとよ』鑑賞しました2023/6/12


○前置き:白石和彌監督作品との出会い

 去年の10月、Amazon プライムビデオにて配信された『仮面ライダーBLACKSUN』。『孤狼の血』や『凶悪』などで知られる白石和彌監督が手がけた作品です。
 白石和彌監督やその映画のタイトルをニュースなどで聞いたことある程度だったのでBLACKSUNの監督として発表された時、そしてBLACKSUN視聴を終えたことでますます白石和彌監督作品を観たくてたまらなくなりました。

 それから数ヶ月の時を経て、やっとその時が参りました。

○感想

 母親が子供たちに暴力を振るう父親から守るために殺人を犯したところから始まります。それから15年後、成人となった子供たちはそれぞれの人生を送っていました。そこまでは普通の人生を送っていたのですが実刑を終えた母親が帰ってきたことから、それぞれの生活の実態や背負っていたものの重さが明るみに出始めます。

 暗い画質で物語が淡々と進んでいくのですが、なぜこうも淡々としているのかと思ったら最低限しかBGMが流れていないことに気づきました。あくまで私個人の感想ですが、無音演出のある作品は神作品だと感じることが多いです。

 母親が帰ってきてから、子供達が驚きで慌てるも受け入れてぎこちなくとも日常生活を送る姿になんとも言えない風味がありました。みんななんとなく受け入れているようで、殺人犯の子供という事実の影響で苦しみを受けていたことが明らかになるわけですが…。そこからが、涙が滲む切なさがありました。その呪いともいうべき重みを背負いながらも普通の人々と変わらないように見える生き方をしていたんだなという苦しみが滲んで。
 母親が帰ってきたことで、今まで鬱屈して抑え込んでいた苦しみが怒りとなって爆発する様がとても辛かった。みんながみんな家族に対する問題を抱えていて、他人に隠している苦しみや過去を持っているという衝撃。

 自分が送っている日常生活の身の回りにありふれた隠している苦しみを見ているかのような滲み出る辛さを感じました。

 そしてラストについに苦しみに耐えられなくなって自暴自棄になるのですが……。
 アクションシーンともいうべき展開になるとは思わなかったので驚きました。なるほどこういう描写や展開もありなんだ、という。自暴自棄になる気持ちもわかるし、アクションシーンも日常にあり得そうな展開なので違和感はなく、しかしここがあそこに繋がるのかという一種のカタルシス。

 からの締め。

 今までの鬱屈した雰囲気から一変した清涼感のある終わり方がとても良かったです。


○終わりに

 邦画は食わず嫌いではなく、映画館の予告でおもしろそう気になるなと思うことも多々あるのですが、そのまま見忘れてしまうということも多々あります。

 邦画の良さというのは、間や空気感や繊細な描写を大事にするところにあると思うのです。白石和彌監督の『ひとよ』を観て、大きくそれを感じました。白石和彌監督の魅せ方が私の好みにハマり作品に惚れました。BLACKSUNの時もそうでしたが、白石和彌監督作品の鬱屈した独特の空気感が好きなのかもしれません。
 しばらくは白石和彌監督作品を視聴する期間にしようと思っています。次はどの作品を見るかまだ決めていませんが、他の作品もとても楽しみです。


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