【泥臭くてもいい】Jリーグ第17節 大分トリニータvs.アビスパ福岡
横浜Fマリノスに実力の差を見せつけられ、何もできなかったという印象が残った前節。大分は、2連敗を喫してしまい、長い長いトンネルの入り口に再び立たされてしまった。
そんな中、対戦する相手は、アビスパ福岡である。順位表を見れば、福岡が優勢ととられても仕方がない。だが、九州ダービーを制したのは、現在絶好調の福岡ではなかった。長沢とエンリケのゴールで、勝ち点3を手にしたのは、大分トリニータだ。
福岡に主導権を明け渡す時間帯が長く続いたが、少ないチャンスを見事にものにしてみせ、全員で最後まで泥臭く戦い掴んだ勝ち点3。きっとこの勝利がチームの起爆剤となり、ここから怒涛の巻き返しを見せてくれることを心の底の底から願いたい。今までの大分トリニータは一体一体なんだったんだ!と思わせるほどに。
試合結果
大分トリニータ2−1アビスパ福岡
【得点者】
大分トリニータ
7‘長沢
70‘エンリケ トレヴィザン
アビスパ福岡
77‘ジョルディ クルークス
【選手交代】
大分トリニータ
62‘小林成→渡邊
81‘町田→高澤
87‘坂→刀根
アビスパ福岡
45‘渡→フアンマ デルガド
62‘→杉本→山岸
62‘金森→ジョルディ クルークス
62‘輪湖→湯澤
85‘田邊→重廣
スタメン
スタメンは上図の通り。
大分は前節から、2人入れ替え。高澤、高畑にかえて小林成、エンリケがスタメンに。3バックにはエンリケを中央に配置し左右に三竿、坂。そして、右のWBには小出が入った。
対する福岡は、前節から4人入れ替え。ドウグラス、重廣、クルークス、山岸にかえて早くも古巣対決となった渡、田邊、金森、宮が入った。
先制するも課題は顕著にあらわれる
序盤は大分が、主導権を握った。福岡のプレスに対し、はやいテンポのパスを織り交ぜながら、長沢をつかってプレス回避。福岡はプレス時には、ブルーノメンデスと渡が縦関係となるような4−4−1−1のような形。ブルーノメンデスが最前線でCBに対して、渡がボランチの監視役といった形で阻害する狙いは噛み合わせ的にハマらずに、序盤から大分の前進を許してしてしまう。
その結果、大分が開始から僅か6分で先制に成功した。大分が、3バックでボールを回し、坂に対して、杉本がアプローチにでた瞬間に、空いた小出にボールが渡り、輪湖が遅れて対応にでるも時すでに遅しという感じで、小出は余裕を持って斜めの楔を長沢に入れ、長沢がポストし、受けた町田がスライドした宮を、ブチ抜いて折り返すと、奈良のジャッキーばりのカンフーキックのようなアクロバティッククリアは、うまくミートせずに、流れたボールを小林成と香川が見合う形となったが、結果香川がマイナスに折り返し、フリーの長沢が冷静に流し込んで先制。目の前には福岡のディフェンスが壁として立ちはだかったが、長沢はそこしかないよねというコースに冷静に流し込むあたりは流石だった。長沢様様である。
大分は得点した勢いそのまま、ペースを握りセカンドボールをものにする。羽田が中盤で高さをもたらし、効いていたように思える。時折みせる軽率なミスがなくなり、もう少し展開力がつけば、大きな戦力となる。
大分は、追加点を奪えるかがどうかが鍵で、今シーズン2得点以上奪った試合は横浜FCと浦和レッズのみで片手で数えられるばかりか、過半数にも満たない。誰がみてもわかるほどに圧倒的に得点力不足であるのだ。
先制した勢いのまま追加点を奪いたいところではあるが、相変わらずゴール前での迫力にかける。そうこうしているうちに、徐々に福岡がペースを掴む。前半30分辺りから、福岡がボール支配率をあげていき、大分が押し込まれる時間帯に。
ただ、大分の5-4-1のブロックに攻めあぐね、決定機を迎えることのないまま前半は終えた。ただ、大分としては、後半に強度が明確におちてしまうことが今シーズン多くある。前半のうちに追加点をとることができなかったこと、前半終盤には福岡にチャンスこそつくられはしなかったが、セカンドボールが拾えなくなってボールを保持する時間帯が減ってしまったことは、課題に残る。
後半に入って先に動いたのは、福岡。渡にかえてフアンマを投入。明確に高さと強さがある2トップをシンプルにつかって攻めるという分かってはいるんだけど、止めようのない質で殴るという攻め筋。
予想通りに2トップをターゲットにしたボールを明確に蹴ってくる福岡。アバウトなボールでもマイボールにしてくる2トップはシンプルに嫌で、高さ勝負となっても分が悪いだろう。そういった意味でも、エンリケがいるのは心強い。目には目を、高さには高さで対抗するのが得策だろう。
ただ、大分はエンリケを筆頭にDF陣の頑張りで跳ね返すも、セカンドボールが拾えずに、後半に入っても主導権を握ったのは福岡で、大分はひたすら耐える時間が続き、固唾をのむ時間帯が続く。
そんな劣勢の状況の中で、70分に大分が待望の追加点をあげる。右CKを下田が左足であげると、ストーンの前で長沢が囮として福岡の選手を引きつけ、その長沢の背後のあいたスペースに入ったエンリケが待ってましたと言わんばかりに、コントロールから、左足で流しこみ待望の追加点を挙げることに成功。エンリケはJリーグ、大分での初ゴールに。エンリケが感情を爆発させ喜ぶ姿に選手、コーチ陣たちが駆け寄る姿は、全トリサポが涙したに違いない。
苦しい時間帯にセットプレーから追加点を奪った大分。このゴールには、下田、長沢、エンリケの新加入の選手の良さが存分に詰まった素晴らしいゴールだったなと。抜けた選手もいるが、また新たに獲得した選手で、今までになかった形から得点を奪うことができたこと。それは大分トリニータにとって大きなことだと。
だが、追加点をとって2点リードしたからと言っても、勝ちが決まったわけではない。まだ試合は20分以上戦わなくてはならない。ここからが正念場だと思ったのも束の間、右サイドでクロスをあげたブルーノのボールをブロックに入った下田がハンドをとられてしまう。からだを投げ出した際にバランスをとるためにのばした手に当たってしまうという不運。
PKのキッカーは途中から投入されたベルギー人のクルークス。冷静にポープの逆をつき、福岡が1点を返した。
後半に強い福岡に1点差まで追いつかれてしまい、ホイッスルが鳴るまで手に汗握る時間が続いたが、トップの長沢も守備に参加し、福岡の高さに対しては、エンリケが何度も跳ね返して、全員が最後まで集中して福岡の猛攻を耐え抜いた。
そして、試合は大分が2点を守りきり勝ち点3を手にした。「泥臭くてもいいまずは目の前の一勝」ゴール裏に掲げられた横断幕をまさに体現したような勝利で、5戦ぶりの白星をあげ、長い長いトンネルには入らずに済んだようだ。
課題は山積みでも勝利の余韻に
福岡のエネルギーに押し負けそうにはなったが、苦しい時間帯に追加点をあげれたことは本当に大きかったなと。それも、エンリケの初ゴールで攻守で存在感をみせたエンリケは大分になかったのもをもたらしてくれた。
ただ、一喜一憂している暇はない。課題はまだまだ学生の夏休みのように山積みなのだ。リーグ戦は代表戦の影響で一時中断するが、この間の時間でどれだけチームの総合力を上げれることのできるかが今後のリーグ戦を左右することになるだろう。
小林裕の怪我?でボランチで出場している羽田には成長がみられる。三竿、エンリケ、坂の3バックは抜群の安定感で言わずもがな。WBで出場した小出は今後もオプションとなるだろう。あとは、町田の相方が野村が復帰してくれるのを待つのみだ。
昨シーズン同様怪我で出遅れてしまったが、主役は遅れてやってくるのが相場と決まっている。
背番号10の復帰が降格圏に沈むチームに追い風をもらたしてくれるはずだ。
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