見出し画像

【試金石】J1リーグ第18節 コンサドーレ札幌vs.大分トリニータ

代表戦の影響で、中断していたJリーグが再開した。大分は、中断前最後のリーグ戦で福岡に勝利し、代表ウィーク中に開催された天皇杯でホンダロックと延長に及ぶ激闘を制し、公式戦2連勝といい波にのりつつある。

そんな中、再開初戦の相手はコンサドーレ札幌。結果は、金子の2ゴールに沈み完封負け。片野坂監督の奇策はハマらずに終始札幌に支配されたそんなゲームだった。実力差を見せつけられ、厳しい現実というナイフを首元に突きつけられるそういうゲームだったが、次に向けて準備していかなければならない。

試合結果

コンサドーレ札幌2−0大分トリニータ
【得点者】
9‘21‘金子
【選手交代】
コンサドーレ札幌
67’‘荒野→ドウグラス オリヴェイラ
67‘チャナティップ→菅
89‘青木→岡村
93‘ルーカス フェルナンデス→柳

大分トリニータ
45‘高畑→藤本
60‘羽田→長沢
76‘小出→渡邊
87‘井上→ペレイラ
87‘小林成→上夷

スタメン

画像1

スタメンは上図の通り。札幌は前節から3人入れ替え。ジェイは怪我、アンデルソンロペスは移籍交渉のため戦列から離れたことがクラブから公式で発表され、代わりにトップを務めたのは荒野。また、チャナティップも復帰した。

対する大分は、3人入れ替え。小林裕が復帰したのは朗報だが、下田と香川がまさかのメンバー外。天皇杯でワントップで機能した井上を起用し、ペレイラがリーグ戦初めてメンバー入りを果たした。

奇策、ハマらず

大分は、天皇杯でワントップで機能した井上を早速スタートから起用した。狙いは、言わずもがな、井上のスプリント力を生かし、ガンガンスペースへ突撃させることだろう。だが、井上をトップで起用するという奇策は、うまくいかずに、前半は札幌に終始支配される展開が続いた。

札幌は、ビルドアップ時に宮澤の脇に高嶺がおりて、福森と田中がワイドに開くのが基本。大分は、頂点の井上をプレスの基準点として、井上が猛スプリントでサイドに追いやって全体で奪いにいくような狙いがあったように思える。井上のスピードを守備にも活かす狙いがあったかと思うが、結果として、全っ然嵌まらずにリトリートする時間帯が長く続き重心が重たくなってしまっていた。

大分の守備も曖昧だったが、札幌は宮澤、高峯、福森、駒井、田中の3バック+2ボランチが阿吽の呼吸で流動的に動いて大分をいなし、基準点をずらす動きは秀逸であった。あれでは、奪いにいきたくてもいけないし、プレス隊の心を折ったミシャの采配は見事だったなと。

奪いにいくのかブロックつくるのか曖昧になったところで札幌は、前半9分にあっという間に先制した。大分のプレスを宮澤、高嶺でいなして、大分の足が止まった一瞬の隙を逃さなかった福森がスナイパーのように正確に狙い定めた左足のフィードをおくると、金子がジャストなタイミングで大分の最終ラインの背後を抜け、胸でコントロールし、切り返して三竿をかわして右足で流し込み先制。

やはり福森のフィードがえぐいなと。フリーで福森に持たれると、どの位置からでも局面を変えることができるので。
また、荒野のゼロトップが厄介で、ボールが収まるので起点にもなるし、タメをつくる事もできるので、金子やチャナティップが非常にやりやすそうにしていたし、守備の部分でも最前線からの猛烈なプレスは大分を苦しめていて。

序盤から札幌に全局面で上回られ、もうお手上げ状態の大分。ボールは握れずに、後方から繋ぐことも試みるが、ズレを生み出せずに札幌のマンツーマンハイプレスに苦しめられ、苦し紛れに前線に蹴るしかなく、蹴っても札幌に回収されてしまう最悪の循環に陥ってしまうカオス。
そんなカオスな状況で大分は、当然打開策はなく、修正することが出来ずに先制から僅か10分後に追加点を許してしまった。自陣でセットプレーの流れから札幌に押し込まれ、左サイドで、青木、宮澤、田中で回し、WBとCB間で受けた田中が、左HSのチャナティップに預け、最後は金子がチャナティップからのパスを見事なファーストタッチで、大分のDFをかわし、そのまま左足を振り抜きゴール右隅に流し込むというゴラッソであった。
大分の重心が全体的に重たくなりすぎたのも悪かったが、札幌のDFの視線を惑わすようなパスワークは見事であった。とくに田中のWBとCB間を抜けるランニングが素晴らしかったなと。あれで、完全にラインを押し下げられ、チャナティップにフリーでうけられてしまったわけなので。

大分は、開始から20分で2点ビハインドという苦境に立たされてしまった。大分が札幌戦に向けた準備は全くと言っていいほど通用しなかった。ミラーゲームで個の部分の差が、顕著にでた部分も勿論あったかもしれない。でも、それ以前に札幌の流動的に動くアタッキングフットボールに対し、全然ついていけてない感はあって。今回は準備期間もたっぷりあった中での対戦だった訳で、言い訳はできないないと。下田、香川が怪我で戦列を離れていたのなら仕方ないかもしれないが。

そして、追加点を許した直後にようやく井上をスペースに走らせるシーンを作り出すことができた。得点にはつながらなかったが、惜しかった。シンプルに井上のスピードを使った攻めは今後もドンドン使っていきたいなと。ただ、トップもオプションとしては有りだと思うが、個人的にはシャドーかWBでの覚醒を期待したい。トップには、長沢、そして藤本の復帰の可能性も6月20日の朝刊で報じられたからだ。

後半に入り、最初に動いたのは大分。左WBで先発した高畑にかえ井上同様、天皇杯で左WBで起用された藤本を投入した。後半は大分が風上になった影響なのか、前半に比べると若干よくなっているように思える。
藤本が左WBに入り、小林成、三竿との連携で左サイドを崩し、あと一歩のところまでいくシーンも見られ、60分についに羽田にかえ長沢を投入した。町田をボランチの位置に下げ、シャドーに井上、トップに長沢が入り攻撃的な布陣で長沢を起点にしながら、攻めいる大分。得点の兆しも見えてきたが、札幌の攻撃も緩まることなく、間一髪のところで凌ぐ。エンリケを中心として、大分は追加点は許さなかった。
エンリケは、はやくもDFリーダーとしての格がついてきたというか。それは非常にポジティブなことだし、いい選手を獲得したなと。まだまだやれるだろうし、もっと連携の部分でやらなくてはいけないところもあるが、是非とも完全で獲得してほしい。。

大分は、人を入れ替え攻撃的な選手を投入したが、結果一点も取ることが出来ずに試合を終えた。85分には、井上のクロスから長沢が頭で合わせ、クロスバーを叩いた惜しいシーンもあったが、内容では完敗だろう。もっととられていてもおかしくなかったし、準備不足間は否めなかった。

最後に

再開初戦を勝ち点ゼロで終えたのは痛かった。勝ち点1でもとれれば御の字だったが、札幌が素晴らしかったなと。若い選手も躍動していて、まだまだこれからが楽しみなチームで、個々の技術も高いし、チーム全体で同じ絵を共有できていて。やはりそういうチームは強いし、大分ももっとそういう部分をもっとクリアにしていかなければならないなと。
次節は、中3日で鹿島をホームに迎える。強敵との対戦が続くが、もう勝ち点1でもおとせない後がない状況だ。何かを示さなくてならないし、間違いなく大分トリニータにとって試金石となるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?