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「カタノサッカークロニクル」を読んで

「カタノサッカークロニクル」では、大分トリニータの監督である片野坂監督が大分トリニータをJ3からJ1へとどのようにして導いたのかについて書かれたものである。

片野坂監督は大分を率いて5年目、大分をJ3から1年で昇格させ、J2で2年目にして2位という結果を残しJ1へと自動昇格させた。そして、J1初挑戦でありながら、昨シーズンは9位という躍進を果たしたまさに“常勝指揮官“である。

昨シーズンの躍進があって、見事にJ1年間最優秀監督賞に輝き、今や日本を代表する監督となった片野坂監督の戦術、多くのファンに愛される人柄について詳細に言語化されている。

この本の著者は、大分トリニータの番記者を務めるひぐらしひなつさん。ひぐらしさんは、片野坂監督のサッカーを現場で取材していて、間近でみている1人である。

ひぐらしさんは過去に「監督の異常な愛情」や「救世主監督」にて片野坂監督について書いている。気になった方は是非読んでほしい。

大分トリニータをJ3から日本最高のカテゴリーであるJ1まで昇格させた監督

大分は、2015年にクラブ創立以降初めてのJ3へと降格した。当然クラブは1年でのJ2昇格へ目指した。そんな難しいミッションを請け負ったのが片野坂監督で約束通り1年で大分をJ2の舞台へとカムバックさせた。

そして、J2最初のシーズンはJ2残留を目標に掲げ、見事に残留を果たし最終的には目標を大きく上回る9位で終えた。

2年目となるシーズンは、プレーオフ圏内である6位を目標とし、最終的には2位で終え、J1自動昇格を果たした。

片野坂監督は毎シーズン目標を設定する。この決して高望みはせず、具体的な数字を示した目標の掲げ方も片野坂監督のマネジメントの一つである。

そして、J1初挑戦の昨シーズン、目標は当然J1残留だ。だが開幕前の順位予想では多くの識者たちから降格候補として挙げられた。昇格組で、J1最小予算で、J1でのプレー経験のある選手もほとんどいない。降格候補の筆頭となるのは当然である。

だが、蓋を開けてみれば最終的には9位で終え、大分の躍進は注目を浴びた。開幕戦でいきなり百戦錬磨の鹿島アントラーズを破ったことは、センセーションであった。鹿島戦を機に大分は好スタートを切り、序盤に勝ち点を積み上げていった。徐々に対策はされていくもそれでも着実に勝ち点を積み上げる、シーズン途中にエースの藤本憲明をヴィッセル神戸に引き抜かれてもだ。

片野坂監督の大分での監督キャリアは先述の通りで、毎シーズン期待通り、いや期待以上の結果を残してきた。片野坂監督の手腕には大きく世間からの注目を浴び、緻密なサッカースタイルはカタノサッカーと称された。

片野坂監督は大分に監督として就任する前に、サンフレッチェ広島、ガンバ大阪でコーチとして4人の監督のもとで経験を積んでいた。

現日本代表監督である森保さん、現FC東京監督の長谷川さん、現コンサドーレ札幌監督のペトロヴィッチ監督、前日本監督で現在はタイ代表の監督を務める西野さんという4人の名将のもとでサッカーを学び、カタノサッカーは形成されていった。特に戦術面で影響を受けたのはペトロヴィッチさんのサッカーだと言う。

著者のひぐらしさんは、カタノサッカーについて、「説明しようとすればいくつもの側面があり、どこから切り込んでいいかのか少し悩む」と本書の中で語っているように、2016年に就任して以降カタノサッカーは変化し、進化している。それでいて、全体の輪郭は保たれていて簡単に言えば、ブレていないと言う。

大分は、J1の中で選手の質では当然劣る。大分は格上相手に組織で上回り、勝ち点を積み上げる光景は、サッカーの醍醐味について改めて考えさせられる。

最後に

本書の中では、片野坂監督のサッカー観やマネジメントの部分、片野坂監督の多くのファンに愛されるキャラクター、そのほかに大分の選手やコーチにについても書かれている。

当然、大分トリニータファンの方は必見だし、他クラブのファンの方にも是非手に取ってほしい。読めば、片野坂知宏という男の熱く人間味溢れるキャラクターと、リーグ最少の予算でありながら、スペクタクルなサッカーを展開する彼の哲学に惹かれるはずだ。





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