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【「あ」から始まる】好きな映画10選

「一番好きな映画って何?」

そう聞かれて、口ごもってしまう映画好きな人は多いんじゃないでしょうか?これは別に好きな映画が自分でわかってないわけじゃないんですよ。「映画」という主語がクソデカすぎて、あまりにも多すぎるからそんなすぐに選べない!ということなんです。

だって、そうでしょう。「好きな食べ物って何?」って聞かれて、うーん餃子も好きだし、唐揚げも好きだし、いや、ぶりの刺身だっていいし、そもそも白米もパンも好きだし、と選べないじゃないですか。え?選べる?つるむらさきのおひたしが一番好き?そうですか、それでは後ろのドアを開けて、そのまま家に帰ってください。バス停ちょっと遠いので、気を付けてくださいね。

でもまあ普通は答えに困ってしまうわけです。ただ、「中華で何が好き?」「炒め物で何が好き?」「刺身で何が好き?」とかならけっこう答えられますよね。映画もそうなんです。

というわけで、縛りをかけてみることにしました。ただ、「アクションなら何が好き?」「ラブコメなら?」「ミシェル・ウィリアムズが不幸になる映画ならどれ?」などの切り口が考えられますが、ここはシンプルに「あ」から始まる映画にしたいと思います!なぜかというと、これならジャンルも色々偏らずにいけると思ったのと、あとは切り口探すのがめんどくさかったからです!それではどうぞ!面白さの順番ではなくて、単に思い出した順!

愛がなんだ

今をときめく今泉力哉監督の出世作にして岸井ゆきのブレイクポイントとなった作品。成田凌演じるどっちつかずの男に岸井ゆきのが執着するストーリー……と書くと、単なるストーカーサイコスリラーになってしまうのだけれど、そういう単純な話ではもちろんありません。愛とは何か、そもそもこれは愛なのか執着なのか、という究極的なところまでいくというもので、そこが若い女性にウケたのか、映画館にはほんとに若い女子たちばっかりでしたね。もちろん、おっさんおばさんが見ても普通に面白いです。岸井ゆきのが普通にキモくていいし、成田凌がクズでいいですね。成田凌がは実際にどうなのかはよくわかりませんけど、クズの役がよく似合いますね。居酒屋で女に頭から水ぶっかけててほしいです。成田凌とは対照的に一途な男役を若葉竜也が演じていて、この映画で初めてその存在を認識しました。いい役者さんですね。


アバウト・タイム

「誰も不幸にならない」「嫌な奴がほぼいない」でお馴染みのラブ・ロマンスの達人リチャード・カーティス監督の最高傑作ではないでしょうか。主人公を演じるドーナル・グリーソンが21歳になったときに、父から一族にはタイム・トラベル能力があると告げられ、それを使って人生をうまくやっていこうとする話です。悪役がいない映画ってなんとなくよさそうな感じがするんですが、ストレスがないと逆に退屈になってしまうのが常なんですが、リチャード・カーティス脚本はとてもうまいので、めちゃくちゃ面白いんですよね。タイムトラベルでやり直しができることとやり直しができないことの設定が分岐になっていて、それがストーリーの肝になっています。ヒロインのレイチェル・マクアダムスがめちゃめちゃキュートですし、マーゴット・ロビーはこれからスター街道を驀進します。タイム・パラドックスが気になるSFオタク以外は全員見てください。


アンビュランス

「脳に弾薬が詰まってる」でおなじみのマイケル・ベイが監督した、カーチェイス・アクション。マイケル・ベイが「カーチェイスを救急車でやったら面白くね?」と思いついっちゃったんだと思います。思いつくな、そんなこと。銀行強盗に入ったジェイク・ギレンホールとヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世の兄弟が、強盗に失敗して救急車で逃げます。ここからハイスピードアクション!になるのかと思いきや、救急車なのでけっこうノロいんですよね。あと、逃げながら手術とかしちゃったりするので、それもやっぱり速度を落とす原因になります。おかげでお得意のわけわからんハイスピードとスローモーションのコンビネーションをやることもできず、なんかもっさりとしちゃったのはちょっとベイも失敗でしたね。あと、「警官を殺すと重罪だ!だから手術して殺さない!」という理屈はわかるんですが、スマホ使って遠隔で指示受けてまで苦労して手術した後に、罠でめちゃくちゃに警官をマシンガンで撃ちまくって殺してるのが、やっぱりベイは特に何も考えてないということがわかってとてもよいですね。ラストもうやむやのうちに終わり、「そうはならんやろ」という枝葉末節ガン無視の抜群のベイ節を味わうことができる最高の映画です。


アンタッチャブル

こういう昔のを出すとベスト感が出ます。いや、でも面白いんだもん。「スカーフェイス」と並んで、ブライアン・デ・パルマ映画の頂点の1つでしょう。ロバート・デ・ニーロ演じるアンタッチャブルなマフィアのボス(アル・カポネ)を、若きケビン・コスナーとアンディ・ガルシアが追うというストーリー。デ・ニーロが脂が乗りきっていた頃で、本当に悪くて最高ですね。最初の床屋のシーンとか、めちゃくちゃ傲慢な上に冗談まで言えて、ムカつくんだよな、ほんとに。「レイジング・ブル」とか「ゴッドファーザー」もいいけど、主役じゃないデ・ニーロの中ではかなり好きな役ですね。また、ケビン・コスナーとアンディ・ガルシアがまだ本当に駆け出しだけれども、一目でスターになることがわかるオーラをビンビンに出しています。そして、映画を見たことがなくても知ってるであろう乳母車が階段を落ちていくシーンは、やはり名シーン。ショーン・コネリーがすでにじじいでびっくりする。この後、30年以上生きるんだけど。


アメリカン・サイコ

サムネが最悪すぎるだろ。その最悪のサムネどおり、クリスチャン・ベールがサイコな殺人鬼として、ばんばん人を殺しまくる怪作です。サイコパス殺人ものにありがちなんだけど、殺す理由のハードルが意味不明な上にめちゃくちゃ低い。名刺が自分のよりもかっこいいから、というだけで殺します。でも、知り合いが自分よりもかっこいい名刺持ってたら、なんか嫌な気分になるのめっちゃわかる。いや、殺さないけど、わかる。私はクリスチャン・ベールを初めてこの作品で認識し、その後、「マシニスト」でめっちゃ痩せたり、「リベリオン」でバリバリアクションこなしていたりで、しばらくの間、よくわからない俳優の枠に入れておきました。その後、バットマン俳優の枠に入りますが、「バイス」でチェイニー役をやった後にまたよくわからない枠に戻ります。一生痩せたり太ったりしてほしいです。あと、この映画、殺す瞬間に雨合羽着たりして、ウッキウキで殺すので、私の中では「ウキウキ殺人鬼映画」としてたまに見返したくなります。


青い春

松本大洋原作の映画です。松田龍平を初めて私が認識したのが、この映画でした。主人公のなんの目標もない虚無的なやつを演じているんですが、まあかっこいいですよね。一発でスターになるのがわかる佇まいですわ。この映画の中心として、不良グループが肝試しでやる、屋上のベランダから手を離して何回手拍子できるかというベランダゲームというのがあって、錆びたガードレールのような青春の目的のない無意味さがにじみ出ててすごくよいです。そして、主題歌がいいんですよね。ミッシェル・ガン・エレファントの「ドロップ」という曲で、これがベランダゲームとも相まって、すごくいい。ミッシェルが一番乗っていたころじゃないでしょうか。この曲を聴くだけでも、見る価値あると思います。あと、ライバル役というか松田龍平に絡んでくるチンピラ役として新井浩文が出ているんですが、この作品はお蔵入りにはなってません。逆になんでや。


アクト・オブ・キリング

1965年のインドネシア政変の際、プレマンと呼ばれる民兵が住民たちに共産主義者のレッテルを貼って、100万人規模の虐殺が起きました。そのプレマンたちは処罰されるどころか、英雄として今も生きているのです。その人たちに迫ったドキュメンタリーなんだけど、迫り方がエグくて、プレマンのじいさんたちに、「どうやって共産主義者を殺したのか」を劇にして実際に演じてもらうという恐ろしい撮影の手法を取っているのです。「歌ってみた」じゃないんだから、そんなドキュメンタリーの撮り方をするんじゃない。また、じいさんたちも罪悪感のかけらもなく、ノリノリで殺害シーンを演じたりしていて、本当に最悪。人間の生々しい悪意に強制的に触れさせられるドキュメンタリーで、確実に人間を嫌いになれます。続編の「ルック・オブ・サイレンス」も、虐殺された男性の弟が、プレマンたちに無料の視力検査をして動けなくしている状態で、虐殺について問い詰めるという、まあまあ最悪な状況設定なので、セットで嫌な気分になってください。


アンダーグラウンド

旧ユーゴスラビアの崩壊を描いた一大ドラマ。ただ、ストーリーはかなりエッジが効いていて、ナチス相手に地下に潜ったパルチザンたちに、地上との連絡役を務めていたマルコが戦争が終わったことを告げないことで、地下では延々と戦争が継続していることになっているというものです。こんなん天才にしか思いつかないでしょ。監督のエミール・クストリッツァは「パパは、出張中」「ジプシーのとき」などでカンヌで賞を取っていますが、やはり代表作にして最高傑作はこの作品。その後、クストリッツァ自身は「黒猫・白猫」を撮った後は、焼き直し的な作品ばかりになってしまったり、プーチン推しでNATO憎しのあまりロシアの陸軍劇場のディレクターになったりしていてちょっと残念な感じになちゃってますが、それでも「アンダーグラウンド」みたいな映画は監督ならだれでも撮ってみたいものであり、あれができた時点で、もう上がりでいいんじゃないでしょうか。3時間近くの映画ですがとにかくどのシーンを切り取っても面白く、切なく、音楽も素晴らしくて、映画のすべてがあります。「あ」から始まる映画というくくりだけでなく、全映画の中で私のベスト5に入ります。


悪魔を見た

チェ・ミンシクが殺人鬼を演じて、婚約者を殺されたイ・ビョンホンがそれを追うという地獄のチェイサー映画。もうね、チェ・ミンシクが子供妊娠している女を殺すするだけで最悪なのに、それにイ・ビョンホンがやる復讐が輪をかけて最悪。GPSを飲み込ませて、チェ・ミンシクが悪いことするたびに現れてアキレス腱を切ったりするという復讐キャッチ&リリース。どっちが悪魔なんだって話ですわ。そこからも本当に嫌なシーンが続き、韓国映画アカデミー賞に暴力部門があったら確実に賞を上げたいほどの出来。イ・ビョンホンの完全なる無表情を何度も見ることができる、イ・ビョンホン虚無顔映画でもあります。いやな気分になってください。あと、チェ・ミンシクは「親切なクムジャさん」でも最悪な役をやっていたので、私の中では最悪俳優の一人にもなっております。


アフタースクール

天才内田けんじ監督による、伏線回収とはこうやれという見本作品。ストーリーとしては探偵の佐々木蔵之介が、大泉洋と一緒に同級生だった堺雅人を探すというもの。中身のことを言うと魅力が半減してしまう類の映画なので、未見の人はぜひその脚本のうまさとラストのどんでん返しを楽しみにしてください。衝撃は「シャッターアイランド」、「シックス・センス」クラス。たぶん、1度見終わった後にもう1回見ることになるかと思います。いまや大河俳優となった大泉洋が2度目の主演作を務める作品であり、ここらへんから本格的に俳優として映画に出まくる感じですね。あんまり今と変わらないっちゃ変わらない。この映画を見て面白かった人は、内田けんじ監督の「鍵泥棒のメソッド」「運命じゃない人」を見ることもオススメします。


我ながらいいチョイスになったな、と思いました。この他にも「アシュラ」「愛、アムール」「アンブレイカブル」「アウトレイジ」など上げられないものがたくさんあったので残念です。あ、「アフリカン・カンフー・ナチス」は別に惜しくないのでオッケーです、間に合ってまーす。

次は「い」なのか何なのかわかりませんが、やってほしい縛り(ひらがなにこだわらず)があればやるかもしれないのでお知らせください!

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