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【映画】なぜミシェル・ウィリアムズの家庭が崩壊している映画は面白いのか

みなさんはミシェル・ウィリアムズという女優をご存じでしょうか?

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若いころから出演作多数、最近もコンスタントに作品に出続け、40歳を超えて大女優の風格さえ漂ってきている感もあります。最近の一般的なイメージだと『グレイテスト・ショーマン』の嫁さんが一番有名でしょうか。ちょっとあどけなさが残ったまま大人になったような雰囲気があり、めちゃくちゃ綺麗ですよね。演技もすごくいいですし、私も大好きな女優の一人です。結婚して欲しいです。

しかし、私はある事実に気づいてしまったのです。それは、「映画内のミシェル・ウィリアムズの家庭は高確率で崩壊している」という事実です。若いうちの娘役の時は別として、配偶者を持っている設定だとかなりの確率で家庭が死んでいるのです。

現実では、ミシェル・ウィリアムズ自身はヒース・レジャー(ここで娘を出産)、スパイク・ジョーンズなどと交際をしてきて結婚はしていなかったのですが、2018年には婚約していた金融コンサルタントではなくシンガーソングライターと電撃結婚(翌年離婚)、そして2020年には映画監督のトニー・カイルと再婚しました。

ただ、いくら私生活が騒がしいからと言って映画を撮るたびに彼女の家庭を崩壊させていいというわけではありません。いくら吉田鋼太郎が何回も結婚しているからと言って、映画に出るたびに家庭をぶっ壊していいわけがないんです。まあ、ニコラス・ケイジとかはもはやハリウッドのおもちゃになりつつあるので、何をしてもいいとは思いますが。

映画内でミシェル・ウィリアムズの家庭を壊す確たる理由はわかりません。ただ、ミシェル・ウィリアムズの家庭が崩壊してる映画はどれも軒並み面白いのです。そして、家庭が崩壊してる時のミシェル・ウィリアムズの演技はめっちゃいいんですよ。

というわけで、ここでは私が見たミシェル・ウィリアムズ出演の映画で、家庭が崩壊しているものを紹介しようと思います。ネタバレは少なめにするつもりですが、どうしても書かざるを得ない部分はるので、ネタバレ食らうと死ぬ勢はここでインターネットの回線を切って荒野に駆け出してください。

それでは、以下ネタバレ多少ありでいきます。

ブロークバック・マウンテン

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かつて愛した男を忘れられるのでしょうか。コンビで羊の番をすることになったヒース・レジャー演じるイニスとジェイク・ギレンホール演じるジャック。二人は羊の番をするうちに愛情が芽生え肉体関係を結ぶようになります。その仕事が終わって二人は離れ離れになり、イニスはミシェル・ウィリアムズ演じるアルマと結婚して農場を開きます。子供もできてバタバしているところに、ジャックから「遊びに行く」と手紙が。数年もの間封印していた思いは出会った瞬間に爆発し、二人は口づけをかわします。そして、運の悪いことにその出会って5秒で濃厚キスシーンをイニスの妻のアルマは見てしまうのです。はい、家庭崩壊まっしぐらです。「夫が男とキスしているのを見た妻はどんな顔をするか」という問いに対して、ミシェル・ウィリアムズは満点の演技で答えました。その後、年に何回か二人が釣りをしに山に行くのを見送るアルマなんですが、その時の微妙な表情もとてもいいですね。おまえら、釣りなんかしないでやりにいくんやろ、わしゃ知っとるんやぞ、と。最終的には離婚で家庭爆発と見事なミシェル・ウィリアムズ家庭崩壊ものでした。ただ、途中からミシェル・ウィリアムズはあんまり出て来なくなるのですが、この映画めちゃくちゃそこからがいいんですよね。家庭を持つものの満たされないジャック、彼女ができてもどうしてもそこから先に進めないイニス。結局二人とも若き日のブロークバックの山並みでの生活を忘れられなかったのです。二人の純粋な愛のストーリーであり、同性愛を茶化すみたいな下世話なことは一切なし。監督のアン・リーがこれでアカデミー監督賞を受賞したのも納得の出来。美しい愛の物語です。


シャッターアイランド

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結末を話すと映画の魅力が95%消えてしまうタイプの映画のため、軽い紹介だけ。レオナルド・ディカプリオ演じるFBIの捜査官テディが1人の女性が消えた事件を追うため、謎の孤島にある精神病院に捜査に入ります。様々に調査をするのですが、精神病院で行われているマインドコントロールの断片的な証拠や不気味な痕跡が見つかるばかりで、謎は深まっていく一方。そして、最終的には実は……というサスペンス映画です。その捜査官テディの妻ドロレスを演じるのがミシェル・ウィリアムズ。テディが捜査で何日も家を空けるので、彼女も家庭も崩壊しています。この映画でのミシェル・ウィリアムズの演技は虚ろで艶めかしく、とてもよいですね。2000年代を代表する大どんでん返し映画、未見の方はぜひ。


ブルーバレンタイン

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見た男の9割(当社調べ)が虚脱状態に陥るという伝説の鬱結婚映画。ミシェル・ウィリアムズ演じるシンディはライアン・ゴズリング演じるディーンとロマンティックに出会い、彼は父親の違う娘ごと引き取ってくれるという神対応。普通だったらそのまま幸せに暮らしました、でハッピーエンドなんですけど、恐ろしいことに現実は終わらないんですよね。最初の熱は覚め、日常は淡々と続いていき、夫婦の間にはいつの間にか海よりも広い溝が広がっているという恐怖。男がポンコツで家庭がひどいことになるパターンも多いのだけれど、この映画については圧倒的にライアン・ゴズリング演じるディーンに咎がないわけですよ。ペンキ屋やってる旦那に「もっと向上心を持て」とシンディは言うのだけど、稼いでないわけでもなく、自分の子供でもない娘をめちゃくちゃにかわいがっているわけです。男にとっては理不尽極まりない話で、「ここまでしてもダメなら、わしらどうすりゃええんじゃ……」とすべての男性が千鳥ノブになってしまう、もはやホラー映画なんですよ。愛は確かにある。でも、いずれそれは終わる。ミシェル・ウィリアムズは娘の母親として救ってくれた夫に恩を感じながらも、それでも離れていく気持ちを抑えられない女を見事に演じ、この映画の好演でアカデミー主演女優賞にノミネート。出世作となりました。まだ未見の男性は早くこの映画を見て順調に死んでください。


テイク・ディス・ワルツ

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これもまた夫に重大な過失がない家庭崩壊もの。セス・ローゲン演じる夫のルーはチキンのレシピ本を作成する料理系男子で、ミシェル・ウィリアムズ演じるフリーライターのマーゴとは恋人のように仲良し。しかし、マーゴは取材先でルーク・カービー演じる魅力的なダニエルと知り合ってしまい、そこからは夫との距離が微妙に開いていくという家庭崩壊パターン。もうですね、これもルーにさしたる大きなミスはないわけですよ。結婚記念日にレストランで会話がないことを責められたりするんですが、いやまあそりゃあ気持ちはわかるんですけど、夫婦というか長年二人で連れ添ったらそんな話すこともなくなったりするわけです。その責任は男だけでなくお互い様なのではないでしょうか。結局、マーゴはルーと別れ、ダニエルの元に行きますが、そこでも徐々に倦怠感が漂っていきます。そして、マーゴはルーに再び会うのですが……。ラストシーン近くでルーの姉が「人生っていうのはどこか物足りなくて当然なの」とマーゴに言うのですが、そうなのです、男でも女でもありもしない幸せを探して相対的に自分を不幸だと思ってしまうのが人生なのです。この映画のキャッチフレーズ「しあわせに鈍感なんじゃない。さみしさに敏感なだけ。」というのはまさに男女問わず人間の本質を表しているな、と。あんまり有名ではない本作品ですが、ミシェル・ウィリアムズが惜しげもなく乳を見せているという珍しい作品なので、ミシェル・ウィリアムズファンの方はぜひ御覧ください。

配信はないけどDVD持ってるから貸すよ!


マンチェスター・バイ・ザ・シー

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全編にわたってとにかく辛い地獄のような映画です。主人公のケイシー・アフレック演じるリーはミシェル・ウィリアムズ演じるランディと結婚していたのですが、自分の不注意で火事を起こし、娘二人と息子を亡くしてしまいます。こんな状態で家庭なんてうまくいくわけもなく、ばっちり崩壊でバラバラのドカン。2階から落ちてきたシャンデリアみたいです。ミシェル・ウィリアムズ史上でも屈指の激しい家庭崩壊っぷりではないでしょうか。当然、離婚してます。映画自体はこの映画でアカデミー主演男優賞を獲ったケイシー・アフレックの独壇場。自身の不注意でかけがえのないものを亡くし、それを背負って生きていかなければいけない男の苦悩と地獄をしっかりと演じていて主演男優賞も納得の出来です。ミシェル・ウィリアムズにとって出色の登場シーンは町で偶然に前夫リーと出会ったシーン。責め続けたことを泣きながら謝るシーンは、ミシェル・ウィリアムズを崩壊した家庭にぶち込みたい! もっと不幸せにさせたい! と思わせるのに十分な演技でした。脇を固める甥っ子のルーカス・ヘッジズやケイシー・アフレックの兄役を演じるカイル・チャンドラーも非常によく、とにかく静かで心に残る映画です。


ゲティ家の身代金

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今のところ最も新しい家庭崩壊ウィリアムズなのが、この映画。実際にあった誘拐事件をモチーフにしているそうです。監督はリドリー・スコットですが、エイリアンもアンドロイドも出ません。ミシェル・ウィリアムズは大富豪ゲティの息子の妻ゲイルを演じるのですが、この夫が父の仕事を手伝って金を手に入れ始めるとアル中のポンコツ野郎になってしまい、離婚。息子のポールを引き取るものの、大富豪の孫ということで誘拐されてしまいます。それを救うために奮闘するのだが祖父ゲティはケチすぎて全く金を出そうとしない……そんな中で奮闘する母親役をミシェル・ウィリアムズは主役として演じています。ついにこの年代の役をやるようになったか、という感じで感慨深いわけですが、やっぱり夫がポンコツで家庭が崩壊しているのは笑えます。ただ、この映画はミシェル・ウィリアムズが主役なものの、祖父ゲティの圧倒的怪演が光ります。当初はケビン・スペイシーが演じてほぼ全編撮り終わっていたのですが、ケビン・スペイシーがショタにアレしてたことがわかってハリウッド追放。それをクリストファー・プラマーが演じ直して再撮影という荒業で公開にこぎつけたもの。クリストファー・プラマーはこれでアカデミー助演男優賞にノミネート。最初からそうしたほうがよかったのでは?と思いますが、そううまくはいきませんな。家庭崩壊しているものの、ミシェル・ウィリアムズの不幸さ加減は抑えめ。ただ、しっかりとした母親役で新境地を開き、今後の作品での家庭崩壊にも期待が持てる内容でした。


他にもミシェル・ウィリアムズ主演で家庭崩壊してそうな作品もあるのですが(『ブローン・アパート』とか)、未見なのでとりあえずここまで。多数の作品に出演しているとはいえ、主役級で6本の家庭が崩壊しているのは中々の打率ではないでしょうか。個人的には、世界四大「何もしてないのに家庭が壊れた」映画に『レボリューショナリー・ロード』、『ブルーバレンタイン』『テイク・ディス・ワルツ』『マリッジ・ストーリー』を選んでいるのですが、そのうち2本にミシェル・ウィリアムズが出演しているのはすごいと思うし、この4本を1日で見ると本当に死んでしまうので気をつけてください。

2020年に結婚したことでしばらくは活動を自粛するというミシェル・ウィリアムズ。年を取るごとに演技の魅力を増している彼女なので、ぜひ早期に復帰して見事な家庭崩壊している映画で素敵な女性を演じてもらいたいものです。個人的にはそろそろ「家庭崩壊映画の名手」ことノア・バームバック監督と組んで、2倍、いや4倍の家庭崩壊を見せて僕たちをショック死させてほしいのですが、一体誰がそれを本当に望んでいるのかというと微妙な気もします。観ますけど!

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