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【優勝&準優勝】うろ覚えで振り返るEURO2020

終わってしまった……あっという間の1ヶ月であった。楽しかったぜ!!!


イングランド

「一切のエンタメを排した純文学」「もはや哲学書」「なぜ竿竹屋は潰れないのか」「青汁」などと今大会屈指のリアリズムで勝ち上がってきたイングランドだったが、惜しくも優勝は逃した。戦前から評価は高かったのだが、グループステージから安定した戦い。初戦のクロアチア戦では圧倒的塩試合をして、スコアはスターリングのゴールのみで1-0なものの完勝。続くスコットランドとは別競技のラグビーを行っていたためにドロー。

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ノックオーン!!

3戦目はチェコ相手にこれまた塩って1スターリングで勝利。決勝トーナメントに入ってからもエンタメ性の全くの欠如を続け、試合が起こるとTwitterが若干静かになるほどだった。ベスト16のドイツ相手にも完全封殺から必殺スターリング炸裂とそれまではピッチ上でひたすら行方不明で捜索届が出されていたエースのハリー・ケインがようやく点を決めて快勝。ベスト8ではチャカつくウクライナを初手のワンパン・ハリー・ケインで黙らせて4-0の圧勝。そして、ベスト4。今大会最も愛されたデンマーク相手に、プレミアギャングたちは物量で黙らせるいつもの作戦。ダムスゴーの直接FKで今大会初失点をするものの直後にケインとサカのコンビでOGを誘発。そして、延長線ではラヒーム・羽毛・スターリングが抜群のダイブでPKをゲット。ダイブの3D原則をしっかりと満たしたこの演技に、スタンドのアシュリー・ヤング審査員も10点を出したとか。イングランドの額に明確に「悪」という刻印が押された瞬間であった。

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完璧でしたね

このPKをケインが一度止められたものの押し込んで勝ち越し点。延長では力尽きたデンマークとは対象的に、途中出場させたグリーリッシュを下げてとリッピアを投入するなど石橋を叩いて叩いて叩きまくってぶっ壊す作戦で初の決勝へと駒を進める。そして、決勝では今までがなんだったのかというくらい積極的なゲームを展開。2分に奇襲に近いカウンターからルーク・ショーが押し込んで先制すると、前半は圧倒的にイングランドのゲーム。構造的にフリーになるウイングバックを生かして、ケイン、スターリングを中心に攻める攻める。いつ追加点が入ってもおかしくなかった。しかし、後半では雲行きが一変。イタリアがゼロトップ気味に修正してくるとそこからは防戦一方。セットプレーからボヌッチに押し込まれると、ほとんど攻撃では単発のスターリングアタックしか手段がなくなり、PK戦へと突入。ピックフォードが2本のPKを止めるも、PK用に投入したラッシュフォード、サンチョが決められず、最後はサカが止められてジ・エンド。マンUで10番を背負うラッシュフォードが最後に右SBをやらされて完全に目が死んでいたので、その影響もあっただろうか。ユーロ初タイトルはお預けとなった。

シアラーこんなこと言ってるけど結果論よな

しかし、決勝まで来た実力は確かなものだった。プレミアリーグのスターが揃うスカッドはフランスと張るくらいの厚みだったし、以前よりもボール扱いに優れた選手が圧倒的に増えた。「つまらない」と散々俺も言ったし、みんなからも言われていたが、それはこういう大会では長所みたいなもの。その多彩な攻撃陣たちを攻撃偏重になることなく選別してベンチスタートにも納得させ、カルヴァン・どこがピルロやねん・フィリップスとフランス産トリュフと白舞茸の蒸しを添えたロワイヤル仕立てのデクラン・ライスというクソ固いセンターハーフ2枚を起用して、ディフェンスはウォーカー、ストーンズ、マグワイア、ルーク・ショーにきっちりとポジションを守らせて隙を作らせず、ひたすら相手に嫌がらせすることをやらせ続けさせたのはサウスゲート監督の手腕だろう。ただ、ロックスター集めて音楽祭をやろうとしたらいきなり全員でお経を唱え始めたとか、かわいい女の子48人集めたのに髪剃って全身白塗りで暗黒舞踏させてるとか、敵の10倍の兵を揃えているのに小田原城囲んで兵糧攻めしてるとか、そういう雰囲気はあるわけで、スペインみたいに理想を貫いたわけでもないので、優勝を逃したら中々評価されづらいだろう。ただ、じゃあ絢爛豪華な攻撃サッカーをやったから勝てるかというとそうでもないし、代表でそんなもんを仕込める時間もないわけで、しばらくはこの物量大量投入作戦で圧倒するしかないのではないか。固く守ってスターリング(or フォーデン or サカ or なんか足速いやつ)でどかーんである。新世代のキックアンドラッシュとはこういうものではないだろうか。元々、イングランド代表のサッカーが面白かったことなんて有史以来なかったので、これでいいのだ。変な色気を出さなければ、来年のW杯も上位に行くだろう。そして我々の脳の感情を司る部分を完全に破壊してほしい。サッカーによるロボトミー手術、それが可能なのはイングランドだけなのだ。

・気になった選手 ラヒーム・スターリング

とかく揶揄されがちな選手ではあるが、今大会イングランドが優勝してたらMVP取るくらいの活躍だったのではないか。ひたすら固いメンツを揃えた中で、突撃隊長としてボールを持ったらひたすら相手に突っかけていって高確率で突破したりファウルをもらう仕事を完遂し、まともに止められた相手はごく少数に限られていた。そういう意味で決勝のキエッリーニはさすがの守備だったとも言える。シティでは今年若干調子を落としていたが、それでも2桁得点を記録、過去3年では18、17、20ゴールとプレミアでも屈指の記録を残しているのである。シュート乱発が全然入らなかった姿は過去のもの。今大会シュートの決定率もよく、ケインを押しのけてエースと言っていい存在だった。とにかく相手の弱そうなところに突っ込んでいく姿勢は「相手への嫌がらせをする」ということに戦力の95%を注ぎ込んでいた今大会のイングランドの姿勢とも合致し、ある種の象徴となっていたようにも見える。しかし、しかしである、やはり今回のベスト4でのダイブなど、要所要所でしょーもないことをしてしまうので、なんとなく「叩いてもいい存在」みたいなのがスターリングなのである。まあね、ネイマールと並んで物理法則を超越した世界最軽量の吹っ飛び方をしたり、審判へのアピールが過度だったりといつまでも小物気質が抜けないところが原因なんですよね。そこらへんは、日に日に重鎮感を増しているケインさんが何もしない試合でも風格で6.0がつくのと対照的ですな。要するに、重みがない、人徳がない。ただ、俺はひたすらチャカついてるスターリングが好きだし、ダイブするスターリングが好きだし、あまりにもファウルアピールしすぎてほんとにタックル食らって吹っ飛んでるときにオオカミ少年状態でファウル取ってもらってえないスターリングとか大好物です。なので、来年のW杯でも存分にスタっていただきたいと思う所存であります。

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ほんといい顔しますよね


イタリア

優勝おめでとう!タレントは地味だが、今大会屈指の完成度を誇った優勝に値するチームだった。グループステージは余裕綽々。開幕戦でトルコを一蹴、スイスも粉砕し、ウェールズ相手にはターンオーバーで勝つという理想的な展開。前プレでハメてほとんど相手に息をさせない完璧なゲーム運びだった。ただ、決勝トーナメントに入ってからは苦難続き。プレスはハマったものの、オーストリアからは得点を奪うことができずに、問答無用のキエーザ一閃で延長でなんとか勝利。ベスト8では「事実上の決勝戦(決勝戦ではない)」と言われることもあったベルギーとの殴り合い。ここは戦前の予想よりもプレスが完璧にハマり、ベルギーをルカクのPKのみに封殺。インモービレが倒れて痛がってる間にバレッラが決めるというイカサマも披露して勝利。ただ、この試合で今大会出色の活躍だった左SBスピナッツォーラをアキレス腱損傷で失ってしまったのはかなり痛かった。

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勝利で高ぶったディ・ロレンツォがディ・ロレンツォ自身を披露

そして、準決勝は大苦戦。ダニ・オルモのゼロトップを敷いてきたスペイン相手に圧倒的にボールを支配されて後手後手。しかし、一瞬の隙を突いてカウンターを仕掛けたところから問答無用のキエーザアタックで先制点。その後モラタに決められて同点に追いつかれるも、延長を昔ながらのイタリアン・ジョブであの手この手で時間を潰して凌ぐと、PK戦ではドンナルンマがモラタを止めて勝利。ほとんど判定負けのような内容だったが、それでも耐えて忍んで勝ち切るところにイタリアのDNAがまだ生きているのを感じた。

こんなんフラグやん

そして決勝も非常に苦しい試合運び。開始2分でルーク・ショーに先制点を取られると、相手の3バックと布陣が噛み合わずに両サイドが常に空く展開。攻撃でもブロックの内側に入ることができずにFW陣は孤立。それでもなんとか凌ぐと、後半の布陣変更が強烈に効いた。行方不明だったインモービレとバレッラを下げて、ベラルディとクリスタンテを投入。左にいたインシーニェをゼロトップに置き、クリスタンテにサポートさせる形にするとバイタルエリアを蹂躙。中でひたすら繋いだ後に「先生、お願いします」と外のキエーザに勝負させる形で、同点のCKはその仕掛けから生まれたもの。こういう「殴りにくる」布陣変更ができるのが今大会のイタリアの強み。そこからはベラルディの裏抜けやらクリスタンテの突撃を活かしながらも得点できずに、PK戦までなだれ込む。途中からは攻めることをやめてPK戦を選択したようなフシさえあった。

この状況での裏抜け一発のボールでもノートラップボレーで振り抜くベラルディさん、さすがだよな

PK戦ではベロッティが止められて暗雲が漂うものの、ラッシュフォードが自爆し、世界最強無職GKドンナルンマが止めまくったことにより、ジョルジーニョが止められたのも帳消し。地味にあの状況でど真ん中に蹴って決めてたベルナルデスキのサイコパス感もやばかったが、2度目のユーロ制覇となった。「昔と変わった」「ほんとに心を入れ替えたから今後を見てほしい」「もう絶対殴らないから」と、改心したDV男みたいな戦前の評判だったイタリアだが、その評価も納得のチームの出来だった。前線から勤勉にプレスをかけてボールを奪い、奪ったボールは簡単に失わずにビルドアップ。中盤はロカテッリ、ヴェラッティ、バレッラ、ジョルジーニョの全員が万能タイプで、ボールを奪うこともキープすることもハイレベル。アタッキングの内容もかなり整備されていて、まるでクラブチームのような完成度だった。確かにアタッカーのタレントが地味なのは確かで、今大会名を上げた単騎突撃王キエーザ@シュートへの入り方が親父そっくりは別にしても、じゃあインシーニェとかインモービレとかベラルディが戦術レスでプレミアリーグあたりに放り込まれて15点取れるのかというとけっこう微妙だとは思う。ただ、このタスクを実行できる彼らの知性と献身性は他の何者にも得難いものだった。また、やることが徹底されているので選手が代わった時のマイナスがかなり軽減されていて、戦術兵器として破壊力を誇っていたスピナッツォーラの離脱後もエメルソンがかなり怪しいながらも代役をなんとかこなしていたし、決勝ではベルナルデスキにうっかり決勝点アシスト未遂までしかけていた。ただ、それらの新しい要素がありながらも、最終的に勝負を決めたのはボヌッチとキエッリーニ&ドンナルンマというチーム・カテナチオが作った堅城であった。この新しい要素と古い伝統の混合が今回の優勝をイタリアにもたらしたのかな、と。かっこよく言えばそういう感じですが、この古い伝統を今後誰が受け継ぐのかは知りませーん。

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妖怪ユニ置いてけ

・気になった選手 ジャンルイジ・ドンナルンマ

ジャンルイジという名前のキーパーがゴールに鍵をかけるという決まりがイタリアにはあるのだろうか。ブッフォンからアズーリの正守護神の座を引き継いだドンナルンマは、今大会その名前に相応しいキーパーであることを証明し続けた。ACミランを退団して契約がドンナルンマ状態で若干不安視されたのだが、22歳だがずっとミランの正キーパーを張っていたので経験値は十分。サイズがあるが反応は鋭く、「そこに届くのか?」というボールも驚異的なセーブで防いだ。体がでかくて筋肉もかなりあるタイプなので密集も苦にしないし、ハイボールにも相手を蹴散らしてボールを殴りにいけるのがかなりの強みである。仮にプレミアにいったとしても、かなりやってけるタイプではないだろうか。足元は確かに微妙であったが、ミスしても平然とした顔で「何が悪いんだ?」というくらいの図太さを見せつけていたのもメンタルが強くてよい。クソミスするたびに浮気がバレたみたいにあたふたしてたピックフォードは見習ってほしい。サカのPKを止めた後にすぐに喜ばずに悠然と立ち去る姿には風格さえ感じたが、もしかしてどれだけ止めてたかわからなくなってまだ続くのかと勘違いしていたのかもしれない。今大会のMVPも納得の活躍であるが、今ドンナルンマは所属がない、いわば無職の存在。同僚のキエッリーニも無職であり、同じくコパ・アメリカで優勝&MVPを獲得したメッシ先輩もドンナルンマと同じく無職。ということで、今、世界には無職の風が来てると言えるだろう。みんなも今すぐ会社をやめて無職になろう!無職 is フリー!!!(当たり前)

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PK止めた後のドンナルンマ(画像はイメージです)


さて、楽しかったユーロもこれで終わり!寂しいなー。また3年後を楽しみにしようぜ!

以下、今回の振り返りをベタベタ貼っときます。思い出すのにどうぞ!

プレビュー含めて書きすぎた!アホか!


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