ケツメイシの踏む“韻”が好き

ケツメイシはラップが超絶上手い。

数あるJ-POPアーティストの中でも僕はケツメイシが大好きです。僕が日本語ラップを好きになったきっかけを与えてくれたアーティストでもあります。「セルアウトだ」とか「HIPHOPじゃない」なんて議論も時折見かけますが、そんなことはどうでもいいくらいラップが上手い。そもそもケツメイシはデビュー当初からスタイルがブレていないし、「ケツメイシはケツメイシというジャンルだ!」と言えるほど唯一無二の存在だとすら思います。個性豊かな声色と共感できる歌詞はもちろん、さまざまなジャンルを取り入れた独創的な音楽。その中でも僕は、ケツメイシの踏む韻が大好きなんです。

僕は日本語ラップが大好きだ。
リリック(歌詞)を書くことはもちろん、個性豊かなビートの上でライミングをする(韻を踏む)気持ち良さ、フロウで見せる遊び心。楽器が弾けなくても、声ひとつあれば体現できる敷居の低さ。そこからは想像できないほどの奥の深さ。自身でラップをしちゃうほど日本語ラップの末期症状でございます（笑）。

こちらの記事では僕が大好きなケツメイシの韻の気持ち良さ、ラップの上手さを僕の独断と偏見で解説していきます。

ボーカルとしての美声はもちろん、ラップの切れ味も鋭い、【RYOJI】

ケツメイシというと、他の日本語ラップと比べ特徴的なのが、HOOK(サビ)がラップではなく歌であるということ。そんなケツメイシの個性を大々的に表現しているのは、RYOJIさんの貢献が大きいと思います。HOOKのキャッチーなリリックはもちろんですが、僕はあの甘い美声から放たれる、切れ味バツグンのラップのギャップに惹かれています。

開いた瞳孔は どうのこうの
言う間もなく そう今日のSHOWの
目玉かな 目立たなきゃ負け
手柄立て 手が立ったら OK

ア・セッションプリーズ / ケツノポリス2

テンポの速いビートでの「目玉かな〜手が立ったらOK」のライミングは圧巻! カラオケで何度噛んだことやら(笑)。

楽しいはずさ 今日は君と そう 脱、TVショウ 週末日の今日
君と一緒ならばTVやビデオをダラダラ見るよりガラガラの道を
ぶっ飛ばして車で　車で YO!ぐっと洒落た街まで

よる☆かぜ / よる☆かぜ

各所の韻の踏み外しも芸術的で、何より単語で踏む単純な韻ではなく、しっかりと単語の頭や末尾の母音を駆使した韻の踏み方が気持ちいい!

人だらけでも ない情けの中で　流れにも乗らず 眺めては絶えず
消える 人人人 色とりどりの　今日も黙々と まじめ気取りの
人で溢れた 大都会の状況　人目隠れた サイドラインの暴走は
もう止まらない抗争 変わらない状況　かかわらない 触らないでとうとう
今日現在 いや こんりんざい　いっさい 気にしない いや君次第で
変わるぞこの街は 待ちわびて　街を歩いて 
交わりながら 間違いや勘違いだらけのこの街に
ついに出発の旅 君の右手に復活の鍵

ビルの谷間 / ケツノポリス2

細かく刻む韻はもちろん「人で溢れた〜サイドラインの暴走」などの10文字以上のバリカタの韻まで踏み倒す! 特に脚韻から頭韻へ繋ぐライミングがスムーズでグルーブ感があって好きです。

リズミカルな韻と、メロディアスなフロウが魅力の【大蔵】

ケツメイシのリーダーでもあり、筋肉番長の大蔵さん。一見コワモテですが、その外見からは想像できないほどの優しい声とメロディアスなフロウが魅力的です。大蔵さんの声ってなぜか安心感があるというか、その声で「なぁ 一緒に美味いめし食べないか」なんて言われた日には、喜んで付いて行っちゃいたくなります(笑)。

また、余談ですが絵描きをやっていることで、大蔵さんにお会いできたのも本当にありがたいご縁です。すごく優しい方でした。今も思い出すだけで興奮します(笑)。

全てを開放 (Ho!) 放て才能
かしこまるな出すな Pride
上がれ 倍2倍 All night long
ハイにハイに豪快に Ride on
すましてぶってる 腕組んでる奴より
腰振ってる奴が勝つ
ガツガツ出せ100いや1000%
待ってる朝なんて蹴っ飛ばせ

脳内開放 -know ya mind free / ケツノポリス8

どんな楽曲でも必ずと言っていいほど3文字は韻をケツに置いている、言葉の響きの気持ち良さ。そんな韻をレゲエを彷彿させる、メロディアスなフロウで強調させることによって、より胸に響く。

周りも 見えずいつの間にか 遠回りを
歩き続け 後で気付く中身の 変わり様
時にたまに 頭に来る事を温めて
後でまさに甘さに 気付き 俺ここにいる
まだ まだまだだ これからだ
俺が立ったところから見れば まだ半ば
だから 一歩踏み出すと きっと打ち勝つ
そう信じて 前へ進む君とスタート

手紙　過去〜 / ケツノポリス2

独特のリズム感で、法則性の見えない韻の踏み方はなかなか真似ができない。「時にたまに〜俺ここにいる」の「あ」の音を強調したは本当に気持ちいい!

母音 子音 強引に導引して踏む韻 オンリーな商品はもういい
ア段からオ段まで横に走り横断　あーだこーだ思いつめて相談
言葉NICEショットやり方は内緒　逢いたかった相方との相性が最初
言葉の言霊こと更なことなら 大人な言技で打破その場このざま
1つ1つ言葉並べて単語から文へ　愛·魂気持ちないものは短命な運命

言技 / ケツノポリス

「言技」のリリックは「早口言葉かよ!?」と思うくらい細かい韻を踏みまくっている。韻がこれほど詰まった歌詞を流暢に歌えるのも、素人目からしても脱帽です。

5、6文字は当たり前のように踏み倒す。下ネタ要素も魅力のひとつ【RYO】

ケツメイシで韻を語るなら、第一に、RYOさんを思い浮かべる方が多いと思います。事実、2ちゃんねるなどの「ラップが上手い日本語ラッパー」を番付したスレッドにも、常に上位に名前が上がるほど、業界内での相当の実力派。どんな楽曲でも5、6文字当たり前のように韻を踏んでくる圧倒的な踏韻力。そして下ネタの要素をメタファー的に落とし込んでいる言葉遊びもRYOさんを語るには外せない魅力です。

“ここ居合わせた この幸せは
何も感じず来た 今までは”

“共に過ごす時 想い募るのに
こみ上げる この寂しさはなぜ?”

そばにいて / ケツノポリス4

初見じゃ気づかないくらい、自然と韻を踏んでるんですよね。そして硬く、意味も成り立つ。これが「文字起こしして 後からくらってくライム」ってやつか……。

“五感を駆使し立たす股間　乳房にかぶさる俺が居るのさ
ライトパイの最終コーナー スローイン ファースト アウト
ライトわきの体臭どうだ すごい それは ダウト“

“山頂から満潮までなだれこんで参上
入魂する男根は一個二個三個　入刀してバッコンしてニコニコだろ”

S/S / ケツノポリス

ガチガチの韻もさることながらどストレートな下ネタ。「入魂する〜ニコニコだろ」のくだりはマジでパンチラインだと思います(笑)。

レコードに針　御目子にcurry
金 多摩 ぶらり旅　
乳房から秘部ら狙う渋さ
温まったら固まったマメ頭
ツーケーのナーアーから俺の名が
上の穴からアララララ
乱暴な晩婚者の男根を堪能
感度も良好なタサツここに参上

きのこ、かり / タサツ

こちらの歌詞はRYOさんが入っている「タサツ」というラップグループのリリック。韻は鬼のように踏みまくりなので割愛。「金多摩ぶらり旅」って……(笑)。言葉で遊びまくっていますね。

韻を感じることは最高に楽しい!

僕は韻を感じることが大好きだ。その中でもケツメイシの踏む韻が好きなんですが、日本語ラップはもちろん、J-POPや歌謡曲まで、耳をすませばどんな曲も当たり前のように韻を踏んでいる。ただ硬く韻を踏めばいいってもんじゃなく、時に1、2文字程度の韻でグルーブ感を出したり、畳み掛けるように韻を踏むことで言葉を強調させたりと、色々と挑戦してみると面白い。

皆さんの好きなアーティストが踏む“韻”。ぜひ僕にも教えてください !

デザイナー / クリエイティブディレクター
竹本　純