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質問にすばやく答えることがカスタマーサクセスではない。顧客の質問に対して本当にすべき3つのこと

3つのアクションで、カスタマーサクセスの力をアップする

クライアントとのミーティングをする若手の様子を横から見ていて気づいたのだけれど、”顧客の質問”にはカスタマーサクセスのヒントが大量に眠っているが、多くの人がそれを逃しがちだ。そこで僕もどうすればよいかを考え、実際に若手に対して色々とフィードバックをしてきた。

そこで、特に自分が「こうすべきだよなぁ」と思って伝えたことを整理すると、3つのことをしろと言っているだけだった。
① 抽象化しろ
② 深掘りしろ
③ 具体化しろ
この3つだ。

結構普遍的な内容でもあったので、それをさらっと1枚のスライドにまとめて、ツイッターにもつぶやいてみたところ、比較的リツイートもいただけたので、もう少し詳細にまとめてみようと、noteを開いた。

カスタマーサクセスチーム(CSチーム)は当然カスタマーがプロダクトをうまく利用することで、カスタマーのビジネスの成長を加速させることが業務である。CSチームは、プロダクトに関する様々な質問を受ける機会があるわけだけど、そこで適切に答えることができれば、カスタマーのプロダクト活用を加速させられ、ひいてはカスタマーのビジネス成長も加速するはずである。ゼロサムゲームではなく、あくまでWin-Winが可能なのだ。

僕が同席したミーティングでも、様々な質問が飛んだ。そして、聞いている中で、カスタマーサクセスチームの彼がうまく答えられた場面と、あまり好ましくない場面とがあり、時々僕が代わりに質問に答えることをした。僕と彼では、一部「どのように質問を受けて」「どのように回答をすべきか」について、意識が違った部分があったからだ。ひとつ例にとって説明する(ちなみに上記のツイートで書いている質問は、秘密保持の関係や話をわかりやすくするために、実際あったものとは違うものにしている)。

あるアクセス解析データの分析結果を見て、カスタマーはCSチームに「これは全データに対する分析ですか?」と聞いた。「はい、そうです」CSチームのA君は即答した。カスタマーは”ふーん”とだけつぶやいた。

こんなシーンが起こったとする。これに対して、僕は当然「カスタマーは何か別の角度での分析にも興味があったのではないか?」と思う。特に何も説明しないならば”全データ”から分析してそうなものなので、そんな至極当たり前のことを聞く質問があったとすれば、本当の興味は別のところにあるはずだ。

ここから、カスタマーとの関係性をWin-Winにもっていく方法について、上記の3つを意識して、考えてみたい。

①質問を”抽象化”することで、質問の真意を探る

まずはじめに、相手の質問について”抽象化”をするとよい。”全データの分析かどうか”という質問の、よりハイレイヤーなところでは、”データ分析の結果”の中のひとつとして”全データを用いた分析の結果”を取り上げているからこそ、そういった質問が出ているはずだ。逆に言うと”(全データではなく)一分のデータだけを用いた分析の結果”というのも存在するはずである。

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つまり、抽象化して考えると「”全データを用いた分析かどうか”を確認してくるということは、他の切り口でデータを用いたケースについてもカスタマーは興味があるのではないか?」ということに気づけるはずだ。そうするとあるべき回答は変わってくるし、そこからカスタマーの反応も変わるはずだ。

あるアクセス解析データの分析結果を見て、カスタマーはCSチームに「これは全データに対する分析ですか?」と聞いた。「はい、そうです」そして続けて「もちろん、全データに対してだけでなく、一部のデータに絞った分析についても同様に結果を見れますよ」と、CSチームのA君は回答した。「あ、そうなんですね!スマホだけに絞ったりもできますか?」カスタマーは聞いた。

②ゴールまで”深掘り”することで、相手の真意にさらに近づく

次に抽象化して質問を捉えたあと、行うべきことは「どうしてそういうことを聞いたのか」を”深掘り”して考えるとよい。

たとえば今のケースであれば「一部のデータのみに絞ったデータ分析について興味を持っている」=「一部のデータのみを活用して、その細分化されたターゲットに対して何かをしたい」と深堀できるはずだ。そうするとこちらとして回答すべきなのは、「一部データのみでの分析結果とそれに対する打ち手を何か答えられるか」がカスタマーが答えてもらえて嬉しい回答のはずだ。そうすると回答はまた違ったものになるだろう。

あるアクセス解析データの分析結果を見て、カスタマーはCSチームに「これは全データに対する分析ですか?」と聞いた。「これはそうですが、全データに対してだけでなく、一部のデータに絞った分析についても同様に結果を見れますよ」と、CSチームのA君は回答した。「一部に絞った分析は現在の契約でも自由に見れますし、一部に絞った分析結果に基づく改善の提案までほしい場合には、オプション契約していただければ可能ですよ」「あ、そうなんですね!すごいなぁ…」カスタマーはつぶやいた。

③回答を”具体化”することで手触り感と理解の確認をする

ここまででも充分に回答は素晴らしいものになっているはずだ。だけど、さらに良い回答をし、カスタマーを導こうと思うのなら、回答をぜひ”具体化”してほしい。生々しい話にするのだ。

人は残念ながら想像できることとできないことがある。例えば、イケメンではないのにモテる友人X君に、モテる極意を聞いたとき「女の子には優しくすればいいんだよ」と言われたとしよう(よくある話だ)。当然優しくすればモテるのであろうから、X君の発言には嘘はないだろう。だが、特にモテたことのないY君にとって、これはアクションには結びつきづらい。なぜなら、これが具体的ではないからだ。優しくするためにできることは無限にあるが、無限にあるからこそ、何をすればよいのか、それをできたことがない人は、よくわからない。

また、一概に「優しくする」というワードには、例えば身体性の強いものと精神性の強いものがあるだろう。身体性の強いものとしては、例えば「荷物を持ってあげる」などだ。一方、精神性の強いものは「悲しい話を聞いたとき、共感し、一緒に悲しむ」などだ。多分、前者も後者も優しいことには変わりないが、どれがよいのかは難しい。幅が広すぎる。多分、合コンでいきなり相手のカバンを持っていったら、Y君は「キモい」と言われるに違いない(すべての行動が”優しい”と思われるのは「※ただしイケメンに限る」という”強者の論理”だ)。

話をもどして、では今のケースではどうだろう。ここでは、具体的な”分析の絞り込み”といったような話を具体的にすることなどが可能だろう。他社の事例なども含め、具体的に話すとカスタマーもそれを活用する自分を想像しやすくなるので、その先のアクションに繋がりやすくなる事が多い。

あるアクセス解析データの分析結果を見て、カスタマーはCSチームに「これは全データに対する分析ですか?」と聞いた。「これはそうですが、全データに対してだけでなく、一部のデータに絞った分析についても同様に結果を見れますよ」と、CSチームのA君は回答した。「一部に絞った分析は現在の契約でも自由に見れますし、一部に絞った分析結果に基づく改善の提案までほしい場合には、オプション契約していただければ可能ですよ。よくあるのは、会員/非会員であったり、1ヶ月以内の初訪/再訪などですね。このあたりは結構、御社の業界だと鍵になるケースが多くて、よくご利用される会社さんが多いですね!」「あ、そうなんですね!そこまでしてもらうこともできるんですね…!ちなみにオプションはいくらくらいですか?」カスタマーは聞いた。

こういった会話が自然にできるようになれば、ソリューション提供者側はカスタマーのサクセスを促進することができる。カスタマーは良いアクションを実際にとることができるのだから、CSチームのA君に感謝するはずだ。逆に、当然これは解約率の低下やアップセルにつながるので、A君としても嬉しいだろう。

Win-Winは簡単ではない。だからこそCSの力がとても重要になる

カスタマーとソリューションプロバイダーとがWin-Winになれるのが、SaaS型ビジネスの良いところだ。そして、そのWin-Winを実際に作りあげるときの重要な担い手がカスタマーサクセスだ。だから、カスタマーサクセスのWin-Win構築力がとても重要になる。そして、当たり前だが、Win-Winを構築するのはそう簡単ではない。

だから、カスタマーサクセスを担う人には、ぜひたったひとつの質問からさえ「抽象化」「深掘り」「具体化」をすることで、常にWin-Winを追求していってほしいと思う。

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