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やりたいことをやるために、大学時代にどんな経験をしておくべきか

「やりたいこと」があっても、その仕事に就くのは難しい

理想は「好きこそモノの上手なれ」で、「ありのままの自分を受け入れてくれる、自分のやりたいことができる、最高の相性の企業」が目の前にあらわれてくれることだ。しかし、多くの人が思い通りに好きな人と両想いになって、トントン拍子で結婚することなどなく、婚活したり必死こいてもそれでも結婚できない人がたくさんいるように、僕も過去30年以上生きてきた結果、そんな虫のいい話は詐欺以外で聞いたことがない。

「やりたいこと」があっても、その希望する業界にはいることが難しかったり、いきなり起業して「好きを仕事に」することなど到底できない。「やりたいこと」をやるためには、なんでもいいからとにかく一歩でも前に進まなくてはいけないし、少しでも自分のやりたいことができる企業から「欲しい」と思ってもらえないといけない。やはり好きな人に好かれるために自分を相手の好みに合わせてみたりするように、「やりたいこと」をやるためには自分自身を高めるしかない
(そもそも「やりたいことがない人」については以下のエントリーで書いている)

学生は、今のうちに何をしておけばよいのかを知りたいはず

しばしば学生に「学生時代に何をすればよいですか?」と聞かれることがある。大学は高校までと違って、問いが向こうからやってくるのではなく、自ら問いを立てることが求められるので、普通に単位をとるだけであれば、3回生まででだいたい終わってしまったりする。

ツイッターを見ていると、多くの人が「学生のうちに遊んでおいたら?」と答えるわけだが、これは社会人の多くの人がなかなか旅行など長期休みをとって遊びに行くことが難しくなるので、学生のうちにしておけばよかった…と感じるようになるからだろう。

しかし、そう言ってくる社会人が学生時代にやっておこうと思わなかったのと同様、やはり今の学生も何か、将来につながることをやっておきたい、少しでも社会に出るときによいスタートを切りたい、という人は多いと思う。

金融業界にいくから会計学をしようとか、英語のいる会社だから英語をしようとか、行き先が決まればそれにあわせた勉強というのはみんなできるだろう。一方、まだまだどんな業界に行くかもわからないし、そもそもどこに行きたいかもわからない学生さんにとってはどういうことをしておけばよいのか、本当に分からないだろうことは想像に難くない。

就活強者の集まる商社のES通過者でさえ同質化している

五大商社でエントリーシート(ES)が通過した人が、どんな内容の自己PRを書いていたのか、というアンケート結果を【「五大総合商社の自己PRで一番多い強みは何か?」を調べてみました】で読んで、僕はあまりに就活マーケットが変化していないことに驚いた

世の中を変えるプロダクトがスタートアップから生まれ、大企業側もイノベーションを生み出そう、新しいものを生み出そうとしているこの時代に、そんな経験をしたことをPRする学生が全然いないのだ。僕が就活をした2006年をイメージしても、何も変わっていないのではないかと思ってしまう。

1. 価値観や立場の異なる人と協力して成果をあげることができる(33%)
2. リーダーシップを発揮し、周囲の人と目標を共有し達成することができる(29%)
3. 個人として努力し、成果をあげることができる(18%)
4. 関係者と信頼関係を構築し、課題やニーズを引き出し、解決のための提案~実行まで行うことができる(17%)
5. 今までにない仕組みや企画を提案し、周囲の協力を得た上で実現することができる(3%)
6. その他(1%)

上位4つは非常にありがちな自己PRで、これらで96%を占めてしまう。この4つとも、新しいものを生み出すのではなく、既存のものの延長線上だ。

今、就活強者の集う場、そこで勝ち抜こうとする商社のES通過者でさえ、まだ「自分で何かを生み出す経験」を強みといえるまで育てていないことに驚きを感じる。

複数の切り口で見て、特徴が出るのは「新規/既存」の軸

ESについてもう少し要素分解して再整理をするならば、4つくらいの切り口があると思う。

・チームアピールか、個人アピールか
・リーダータイプか、メンバータイプか
・企画力派か、実行力派か
・新規生み出し派か、既存グロース派か

これらのポイントあたりで差分がありそうだ。

①と②ではともに30%程度だが、チーム・実行力・既存グロースでは共通していて、違いはリーダーなのかメンバーなのかだけのようだ。だいたいサークルで何かを成し遂げた話で、代表をしていたかメンバーとして加わっていたかの違いだろう。めちゃくちゃよくあるパターンだ。この中で抜きんでるのは相当に難しい。

そして、20%弱で並ぶ2つは個人売りの③と企画から実行までのワンストップ売りの④という関係性だと見える。一方、⑤のみ唯一”新規”にモノを生み出すものをアピールするタイプだ

「同質化せず、閉塞を打破する経験を狙う」のがねらい目

今、多くの企業は同質化に悩んでいる。そして、ダイバーシティというものを大切にしようと、声高に訴えている。実際に”おかたい”イメージのある銀行でさえ「銀行員らしくない」新卒採用をしようとしている。どこもかしくも閉塞感がすごいのだ。

こんなパンフレットを片手に同質化された自己PRをしても、面接官としてはもう一緒にしか見えないので、もう学歴とか顔とか雰囲気とかでしか選べなくなってくる。

だからこそ、人と違うことをアピールしなくてはいけない(当然だが、人と違うといっても、バカッターと言われるような、犯罪自慢をしてもしょうがない)。

麻雀がとにかく強くて、様々な大会で優勝しているくらいまで突き詰めている人間がいた。彼はトレーダーとして就職が決まったが、自己PRは麻雀がいかにトレーダーと似ているかを説明し、だからこそ自分は麻雀で成し遂げたことをトレーダーとしても成し遂げられると主張した。勉強もサークルもせず、ひたすら麻雀をしていた、そして大会などで勝ちまくっていることを誇らしげに語っていた。でもそれで正しいのだ。麻雀が強いことが自慢なのではなく、本質的にはその裏にロジックの積み重なった重厚な世界があり、その中で秀でることができることをアピールしているのだ。多くの学生とは違うことをして、そこで人より秀でて、それが社会人として行う業務に結び付くと期待できるに足るから、これも充分に魅力的に映るのだ。

「同質化しないこと」そして「それを打破した世界で一定の成果を残すこと」をしてほしい。学生時代はたった4年しかない。その間に自分で問いを立て、それを追求する経験をしてほしい。

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