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マーケ&セールスのSaaSは、システムが担う領域は「頭脳の機能」をもつ第3世代へ

マーケティング&セールスの領域はテクノロジーが活かされる先端領域です。Googleやfacebookがテクノロジーで稼ぐ広告市場をみると、それが感じられるでしょう。その先端領域であるマーケ&セールス領域においては、SaaSのもつ機能のトレンドが変わってきているようです。

そこで、このエントリでは、これまでを振り返りつつ、次のトレンドについてまとめてみたいと思います。

第1世代は、データの蓄積基盤

第1世代はデータのインプット(蓄積)するツールです。顧客情報を管理する、SalesforceやHubspotのようなCRM(顧客管理システム)がわかりやすい例です。そのほか、アクセス解析データのGoogleアナリティクスもそうでしょう。このあたりは色々とツールが出てきたものの、もうすでに「データ基盤」の戦争は終了しつつあります。

ただ、一部にはチャンスがあるかもしれません。個人情報保護の意識の高まりを中心とした、GDPRなどの新たな法規制による、強烈な環境変化がありえるからです。先行する企業が立ち回りに失敗すれば、後発の企業にもチャンスがあるでしょう。ただ、これもあくまで敵失を待つ必要がありそうです。

第2世代は、インプットからアウトプットの進化

各後発企業は先行企業に対して差別化するために、そのデータをアウトプット(施策)に簡単に活かせるようにしました。これが第2世代と呼べるでしょう。

CRMで管理された顧客に対してメールを送るマーケティングオートメーションなどもここにあたります。たとえば、データ基盤のトッププレーヤーであるSalesforce自身も多分に漏れず、メール配信などを行うマーケティングオートメーションツールのPardotを2013年に買収し、Salesforceに取り込んでいます。

日本でも、メールだけでなくLINEやチャットボットなどの新しい顧客へのリーチ手段を備え、それらのアクションを顧客行動にあわせてリアルタイムで行う、プレイドのKarteやフロムスクラッチのB Dashなども生まれています。これらは、リアルタイム性という点で、第2世代の進化系、第2.5世代といえるかもしれません。

第3世代は、データから”示唆”を出す「考えるエンジン」に

顧客データをためるインプット、次はそこへのアクションをやりやすくするアウトプットと動いてきました。その次は何でしょうか。

次に来ている第3世代は「データに基づいて示唆を出す”考えるエンジン”」の時代です。

この第3世代を巻き起こしたのは、人工知能のブレイクスルーとその汎用化でしょう。多くのソフトウェアが人工知能を取り込んでいます。それにあわせ、「ためたデータに基づいて、次に何をすべきか」というヒトの行っていた領域に、システムが侵食していっているわけです。

今、次の「示唆を出すエンジン」がSaaSで提供されるという、第3世代の波が来ている。そう感じます。

国内では「AIアナリスト」が先頭を走っている

カイゼン提案機能を売りにするツールがあります。当社WACULの「AIアナリスト」はまさにその走りでした。

多くのツールが「分析ができます」「改善につながります」といっていても、結局はデータの整理とグラフ化がせいぜいなところ、AIアナリストは「何をすべきか」というアクション提案ができる点が新しく、スムーズにユーザーを獲得し、サービスが立ち上がりました。

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「AIアナリスト」は第2世代までのように、データを収集する(材料を集める)部分は他社ツールに任せ、他社ツールで集まったデータを預かった上でデータ分析(料理)して、改善すべき点を教えてくれる点に特徴があります。対応する分野はWebサイトの導線、SEOキーワード、広告など。”改善”という時のゴールはWebサイト上のコンバージョンポイントです。

最近、Web広告の分野では、カイゼン施策を出すツールが出てきました。こちらはAIアナリストとは違い、対応分野は広告領域に特化している、”改善”という時のゴールは、訪問数を最大化する、もしくはCPAを下げることです。そのため、提案される粒度や内容は、「AIアナリスト」とは若干違うものになるはずです。

以前からShirofuneでそうした機能が搭載されていましたが、それを追うようにフィードフォースの「EC Booster」にもカイゼン施策を出す機能が搭載されたようです。名前までパクっているので、それはどうかな~とは思いますが…Web広告といった時のさらに細分化したところでは、得意領域が違うのでいいのでしょうか。

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海外でも続々と「考えるエンジン」がうまれている

例えば、蓄積されたデータから売上を予測するClariというSaaSが生まれています。

Clariは売り上げ予測に特化したプラットフォームであり、Eメールや電話記録、CRMデータなどを統合して分析する機能を提供している。人工知能によって、過去の取り引きパターンを自動的に抽出して、正確な売り上げ予測を行うのが特徴だ。リアルタイムで顧客毎に営業担当者が費やした時間や、失注のリスクを算出し、とるべきアクションについて洞察を得る

VendrはSaaS管理ツールの中でもまた一段と新しいビジネスモデルです。これはSaaSの契約・支払管理SaaSのようなものに加えて、その無駄発見機能を持つことで、SaaSの利用料の一部を徴収しています。これも提案があってこそのマネタイズといえるでしょう。

Vendrは顧客に対しソフトウェアに支払う代金の1〜5%を請求しており、これを積み上げて増やしていくことができる。ノイ氏はTechCrunchに対し、従業員500人の標準的な企業はソフトウェアに年間200万〜350万ドル(約2億1800万円〜3億8000万円)を支払うと述べており、計算してみると最小の1%の場合にVendrは2万〜3万5000ドル(約218万〜380万円)を受け取ることになる。パーセンテージの中間である2.5%なら、5万〜8万7500ドル(約545万〜955万円)を受け取る。
このような価格体系でVendrは年間の売上を短期間で増やすことができる。それではなぜVendrの顧客はソフトウェアの費用を処理するためにVendrに支払いをするのか。それは節約に有効だからだ。Vendrに支払う費用以上に節約できるなら、企業は得をする。さらに、企業は購入にかかる時間を節約できるとVendrが主張するとおり、Vendrの顧客はツールの確保にかかる時間を削減することができる。

データの民主化。ベンチマーク、AIが鍵に

こういう動きを後押ししたのが「データの民主化」でしょう。昔に比べれば、簡単・安価にデータを収集できるようになりました。

蓄積をしたあとは、それを活かしたくなります。そこで、集めたデータを比べて、ベストプラクティスとの差分から提案を行うベンチマーク活動が簡単になります。

それをAIにやらせることができるようになりました。AIも、ここ数年で使いやすくなったものです。意味のあるデータを扱える人であれば、それを再現させるくらいであれば低コストで行えるようになりました(「Garbage in, garbage out(ゴミデータを入れてもゴミが出る)」のは変わりませんが…)。

今後も技術革新によって更にこの動きは加速するでしょう。その時、これまでのプラットフォーマーが技術革新を梃子にさらに伸びるのか、それともその分野に早くからいるカテゴリーリーダーが伸びるのか。未来が楽しみです。

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