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【エッセイ】万年筆は羽化しない

 眞木高倉は文房具大好き。今日は新しい万年筆を買いました!

 PILOTの万年筆、cocoonです!かわいい!
 高倉の万年筆はこれで二本目です。一本目はデザフェスに出店していた万年筆メーカー「真空」さんで購入した万年筆。

 木軸の万年筆は上品で上質、握った感触も申し分なくて、一生使うつもりでいるのだけれど、字軸の太さがMになっていて若干手帳向きじゃなかった。裏抜けしちゃうし、字が潰れる。
 ペン先を交換したらいいのでは? と思って調べたのだけれど、真空さんが使っているペン先は一般流通しておらず、そもそも素人が簡単に交換できるような代物ではなかった。万年筆修理、メンテナンスをしてくれる工房(ペンクリニックというらしい)に依頼してペン先を変えてもらうこともできるらしいのだが、広島には対応してくれる店がなかった。
 そういうわけで、真空さんの万年筆は日記帳用にすることにした。字軸が太くても、B5ノートに書きなぐるには問題ない。

 すると、手帳の筆記具がなくなる。いっそボールペンに挿げ替えようかと思って色々なメーカーのボールペンを試したが、どれもこれもしっくりこない。やはり万年筆、万年筆が良い。
 字軸は細字、手帳に挿せる程度の細さ、短さ。手帳への書き込み量が多いので、カートリッジインクがすぐに手に入る国内大手メーカーの万年筆であることが望ましい。ペン先を修理したくなっても、国内のメーカーであれば交換品を手に入れる難易度も下がるだろう。
 そういうわけで、日本の大手文房具メーカーPILOTの万年筆を買うことに決めた。cocoon を選んだのはデザインと価格(この上品さで3,000円台はすごい)だ。
 因みに眞木高倉、実はPILOTの万年筆インク「色彩雫」を三色ほど持っている。カートリッジではなく吸入式コンバーターを一緒に買ったのは、このインクを使うためである。

 cocoonとは英語で繭のことだ。成程、両端がすぼまった形は確かに繭っぽい。つるりとした流線形。指によく馴染む。
 ふと、映画「少女邂逅」で聞いた、蚕の話を思い出した。女子高校生が蚕の幼虫を拾う。蚕は繭を作り、繭は人の手で生糸にされる。そして繭から羽化した蚕蛾は生存に必要な口も筋肉も持たず、すぐに餓死してしまうらしい。繭は人の役に立つが、蛾は人の役に立たない。蛾になりたくなくても、永遠に繭でいることもできない。そういう残酷な消費の話だ。
 万年筆は羽化しない。万年、筆というくらいだ、きっと一生この形のまま高倉の手の中に居る。映画の中で絶望していた少女を思い出す。永遠の繭は、彼女にとって幸せな道になり得るだろうか。更なる絶望だろうか。

 考えが纏まらないまま、繭を手帳にぎゅっと差す。

書き味最高

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