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soeji
【映画記録】東京を焼く炎の白
マーク・チャンギージー著「ヒトの目、驚異の進化」に、動物の色覚に関する章がある。
曰く、動物は色覚を錐状体によって感知している。当然ながら、全ての動物が同じ種類、同じ数の錐状体を持っているわけではないので、動物によって見える世界の色彩は異なる。勿論、色覚が無い動物はどれだけの光が届くか、ということしか感知できない。色覚は絶対でなく、曖昧で、画一化できないものだ。
そういう点において、白黒の映像は「絶対」に近いものがある。すべての視覚を持つ生き物は、検知できる色は違えど、光は検知できる。カラー映像を観る場合その見え方は様々だが、白黒映像を観る場合は全く同じものが見える筈だ。つまり白黒映像の方が絶対的で、より本当の世界に近いのかもしれない。
色は、実用的な理由なしにはものにつけられたりはしない……が、そのような客観性を得るには、あらゆる波長情報の受け取りを諦めるという代償を払う必要がある。色覚のない動物は、全体としてどれだけの光が目に届くかしか感知できない。
このように考えてみると、白黒写真に対して新たな敬意が湧いてきた。以前の私は、白黒写真は表現媒体として劣っていると思っていて、白黒写真に魅せられる人がいるのが理解できなかった。それが今では、白黒写真は対象を、「ほんとうに」あるがままに近い姿で示しているように思える。
モノクロ映画「シン・ゴジラ:オルソ」が、思わず泣いてしまうほど真に迫って見えたのは、こうした理由からかもしれない。
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