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夏のマスクは大丈夫か?

新型コロナの影響で、マスクをすることが当たり前になりました。

しかし、皆さんもお感じのように、「夏のマスクはキツい」のが現実です。

私も先週晴れた日にマスクをつけて、階段の上り下りなどをしたのですが、頭がクラクラして熱中症気味になってしまいました。

夏が本格的になってしまったらと思うとゾッとします。

「マスクの夏」は過酷につきる

気象庁の3ヶ月予報が出ておりますが、それによると、

今年の6~8月の気温は「平年並みか高い」

ということです。

そんな中で今年は「マスクの夏」です。

いつもの夏ですら熱中症の危険があるというのに、今年の夏も暑くなる予報ですし、マスクをしていたらその危険性がさらに高くなる、というわけで、「熱中症による死者はコロナより多いんじゃないか?」と心配する声もあります。

まして今年は自粛のせいで外気温に慣れていない人、体力作りが出来ていない人が多いのです。それだけでも不安要素があるのに、さらに「マスク」があるんです。

そもそも、夏のマスクには様々なデメリットがあり、最近はテレビでもよく取り上げられるようになりましたが、マスクをするだけで、頭の温度が40℃くらいになるとも言われています。

さらに、マスクをしていると、本来口から出るはずだった熱が外に逃げず、体内に熱がこもりやすくなってしまう上、湿度は高い状態なので「のどの渇き」を感じなくなるというデメリットもあり、「隠れ脱水」による熱中症のリスクが高くなるとも言われています。

そのため、今は「夏マスク」の売れ行きが好調で、品切れが目立ちます。

色んな場所の「危険」

テレビでは屋外での実験ばかりやっていますが、室内も危険です

そもそも、「熱中症」は、日差しの強い炎天下だけで起こるものではなく、寝ている間に脱水症状が起きてなったり、気温の変化についていけなかったり、湿度が高かったりでもなるものです。

つまり、マスクをつけながら高温多湿の日本の夏を過ごすだけでも、どう考えても熱中症リスクが高くなるというわけですね。

ちなみに、具体的な室内での熱中症対策は、NHKの特設サイトで随時公開されており、部屋の換気方法など具体例が載っていますので、参考になることも多いかと思います。

また、もう一つ心配されているのが、「医療崩壊」です。

熱中症の初期症状は、「発熱」「だるさ」など、新型コロナウイルスの症状に酷似していると言われており、それが「熱中症」によるものか、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」によるものか、すぐにはわからないので、救急医療体制では、コロナ対策ベースの対応をするそうです。

そうです、明らかに暑苦しい防護服にフェイスシールドをするわけです。

それが、何人も何人も病院に運ばれてきたらどうでしょう?

そのため、今年の夏は「熱中症にかからない」という方法で医療現場の負担を減らすことも大事になってきます

「マスク」は外しちゃダメなのか?

このような過酷な夏になることが想定されているわけですが、「マスクをしない」事に対して厳しい目を向ける現状もあります。

そもそも、マスクの「感染予防」という面での機能は限定的です。

この辺は別の記事にも書きましたが、あくまでもマスクは、自身がウイルスを持っていた場合の感染拡大を減らすためのものです。

あとは副次的な効果として、むやみに口や鼻を触らないため、体内にウイルスを入れにくいといったことがありますが、あくまでもその程度でしかありません。

そういう意味で、特に屋外で「周囲に誰もいない」状況でマスクをし続ける意味は基本的にありません

iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授が「ランニング中もマスクするべきだ」と言った影響で、気温が30度を超えたのにマスクや、ネックウォーマーのようなもの(ネックゲイターというそうです)をしながら走っているランナーがいますが、あれもおかしな状況で、当然のことながら危険性が指摘されています。

当の山中教授も、自身のコロナ関連情報発信サイトにて、

休日の皇居や大阪城など、多数のランナーや散歩をされる方が集中する場所を念頭に置いて提案しています。(中略)私は走るコースや時間を工夫し、周りに人がいないときは覆いは外し、散歩の人等がおられるときはさっと覆うようにしています。
(出典:山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

と、「時と場合によるんだよ」ということをおっしゃっているのですが、どうしても「走る時にもマスクしないといけない」という情報というか「空気感」が先に来てしまい、誰もいないところで走っていても「マスクしてない」と厳しい目を向ける人もいるようです。

クロネコヤマトなどはそれに予防線を張ってホームページやSNSなどでわざわざ断りを入れたり、国土交通省がトラック協会にそれを指示する事態になっています。

環境省や厚生労働省も、「令和2年度の熱中症予防行動」として、「適宜マスクをはずしましょう」というメッセージングをしています。

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でも、本当にマスクはしなくても大丈夫なのか?

いや、そもそもマスクなんてする必要があるのか?

その辺をクリアーにしたいですよね。

何が「危険」なのかを正しく知ろう

そもそも、マスクは飛沫防止、感染拡大防止のためもので、自分が万一感染していた場合のためのものだから、近くに人がいる場面では必須です

でも、新型コロナウイルスは空気感染するわけではないので、人と接触することもないような所でし続ける必要はないといえるでしょう。

だからこその、「外で2m離れれば外していい」ということなのです。
その「2m」は、飛沫が飛ぶ範囲と言われているからですね。

それにしても、「飛沫感染」はどれくらい危険なのでしょうか?

NHKの『ためしてガッテン』の中で、仙台医療センターの西村秀一センター長が、(インフルエンザウイルスではありますが)1回程度のせきでは、検出できるレベルのウイルスは含まれていないというデータを出しています。

さらに番組内では、「風邪の感染率」を調査したアメリカの研究を紹介してまして、風邪にかかった人が触ったコップに触った人(つまり「接触感染」)の50%の人が風邪になり、「飛沫感染」はたったの8%しかなかったというデータが出ていました。
(ちなみに空気感染は3日間同じ部屋で過ごすというものでしたが、0%だったそうです。いずれも日本ではできない実験ですね。)

その「飛沫感染」も、「かぜをひいた人と15分間、歌ったり話したりする」というもので、それでも8%ということなので、ちょっと会話したくらいではかなりの確率で感染しないということになります(逆に、上記の条件に近いホストクラブなどで感染が高いのもうなずけます)。

やるべきことは…

もちろんこれは新型コロナウイルスではないウイルスを使ったデータなので、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)の特徴を踏まえて「補正」する必要があります

SARS-Cov-2は空気感染こそしませんが、しばらくは空気中にただよう「エアロゾル」感染する可能性がありますので、同じ条件だったら感染する確率はゼロではないでしょう。

対象物についた状態でも通常のウイルスよりも長生きしますので、接触感染、飛沫感染の確率も当然上がることでしょう

特に気をつけるのは、「飛沫感染」よりも感染率の高い「接触感染」です

新型コロナの場合、飛沫が飛んだ手すりなどを触った場合、先ほどのデータ以上に、「接触感染」することが起こり得るということですね。

それは飛沫を飛ばすことが危ないということではなく、咳やくしゃみ、口を拭くなどで手にウイルスがつき、それで他を触ることが危険なわけですから、それをとにかく予防することが大切、つまりそれが「マスクをつける」「食事の前には手を洗う」ということになるんですね。

厚生労働省のHPでも、「人が無意識に触る場所」として、目鼻口を下記イラストとともに紹介しています。
(元データ:Yen Lee Angela Kwok, Jan Gralton, Mary-Louise McLaws. Face touching: A frequent habit that has implications for hand hygiene. Am J Infect Control.2015 Feb 1; 43(2):112-114(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7115329/)

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(説明があまりないので何の回数かわかりませんが……。)

人だけでなく、物にも、自分にもウイルスをつけないための、マスク

マスクをしていれば、自分から周囲に感染拡大が抑えられる、ということですね。

この視点を持っていれば、マスクを外してもよいシチュエーションは自ずとわかってくると思います。

コロナ<マスク<熱中症

大阪府寝屋川市が、「外出時のマスク着用はマナーです」「暑くてもガマン!」と書いたポスターを出していたのがバッシングされて撤去されることになりました。

それくらい、日本ではコロナの感染が抑制されていることと、「熱中症の方がマスクつけているより危ない」ということを、国民の多くが感じているということでしょう。

が、実は今、世界の標準は「マスク義務化」です。

日本は「ロックダウンをしない」など、世界と逆行した施策を次々と行っていますが、「マスク」の取り扱いにしても、政府が「熱中症になるくらいならしないで」と言うくらいで、これまた逆行しています。

もちろんそれは、日本国民が当たり前のようにマスクをしているおかげがコロナの拡大を抑制できているということから、外国が参考にしている面もありますが、今度は日本がマスクを外すことを勧めるようになったわけです。

どちらが正解かはまだわかりません。

しかし、日本のコロナ対策は「医療崩壊しないこと」を前提にしているので、熱中症患者が増えることになりそうであれば、「マスクはしないで」というのは正解だと思います

たとえば欧米では日本よりも湿度が低いですから、条件は同じじゃないですし、とくに、国民全体の公衆衛生のレベルが日本は高いので、それを踏まえて考えると、

コロナ<マスク<熱中症

となってもなんらおかしくはないのかなと思います。

だから、たとえば、誰もいない道を炎天下歩いていて、「このマスクは誰を守っているんだ?」というのがわからなくなるような状態であれば、潔くマスクをはずしてもいい、そしてそれに文句を言う方がおかしい、ということですね。

もちろん、それは小さな子どもには判断できなかったりするので、全員が全員にそう伝えるのは難しいですけど、いい大人が、麻生大臣の言う、「民度の高い国民」が、それを判断できないことはないよね、と思いたいです。

つまりそれは、熱中症の知識をしっかりと持ち、それを予防する行動をとる、ということです。

あくまでも私見ですが、日本がコロナ感染拡大しない「ファクターX」の一番の理由は、国民のそういった意識が高いからかもしれませんね。

手を洗ったり、マスクをしたり、靴を脱いだり、納豆に含まれるビタミンKだったり、そういうこともあるでしょうが、「きちんと知って、きちんと予防する」というアクションがとれる国民の民度、それを生む文化的、教育的背景があるからなんじゃないかなと思います。


なお、子どもたちの熱中症リスクと対処については、別記事でご紹介していますので、そちらをご覧くださいませ。

今年は子どもたちの熱中症リスク回避に全力を!

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