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映画「小早川家の秋」について

最後から2番目くらいに観るべき小津作品

2024年6月U-NEXTで鑑賞。
本当は「午前十時の映画祭」で劇場での鑑賞を目論んでいたところ、早起きに失敗して、見損なってしまった。
それならばということで、動画配信で観た次第。
随分昔に一度観たことがある気がするが、小津の映画は似通っているので定かではない。
この「小早川家の秋」は小津作品の中で、唯一「東宝」で撮影された作品ということだが、そのせいか、やや冷遇されている感じがあった。
つまりは、あまり良くはないという想像がつくのだが、だからこそ、興味がそそられた。
今回、改めて(はじめて?)観たところ、なるほどお世辞にも「面白い」とは言えぬ映画である。
まず、登場人物が多すぎる。
それゆえに、感情移入が散漫になりがちである。
父親の死によって、すべてが纏まるように見えるが、実際は纏まってはいない。
「東宝」に呼ばれて、所属の俳優を使うことを課せられた仕事を忠実にこなしたというのが、この映画の本質ではあるまいか?
火葬場の近くで、煙突を眺める老夫婦の夫役で笠智衆が出てくるが、まったく不必要である。
死生観がどうのというレビューを書いている方もあるが、ワタシはそういう見立てに興味はない。
おそらくは、「小早川家の秋」というよりは「小早川家の残暑」、お盆を過ぎ、まだ暑い最中に旅立った父親とその家族の話だと思う。
見どころとしては、父親の中村鴈治郎が室内を歩き回るシーンと、葬儀に集まった家族がほぼ全員で団扇と扇子をあおいているシーンだろうか?
一歩間違えば、シュールな笑いも起きかねない。
だが、きっと小津は「小津的な映画」なものを求められたので、それに答えた映画を作っただけなのではあるまいか?
少なくとも最初に観る小津映画としては相応しいとは言えない。
小津の最後から2番目に撮られたこの映画は、小津作品をすべて観る順番として、最後から2番目くらいに観るのが適当なようである。

2024年6月11日UP
※このテキストは、筆者がYahoo!検索(旧Yahoo!映画)に投稿したものを転載したものです。

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