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BtoB製造業のデジタルマーケティング:全体像と現在地

何かを成すための努力の過程で自分の進捗を知ることは、とても大切です。

テストの点数は、合格ラインに対する今の位置や、足りないものを教えてくれるので、ゴールに向けてやるべきことに集中することができます。

もし、テストがなければ、ゴールに向けて何をやるべきかがわからず、間違った努力をするリスクも高くなるでしょう。

ゴール到達時の姿と現在地を知ることは、効果的な努力をしていく上で欠かせないのです。

今回は、15年前の創業来200社、かつ素材から部品・部材、完成品まで様々なBtoB製造業のデジタルマーケティングを総合的に支援してきたイントリックスの経験を元に、BtoB製造業の2023年時点の平均的な現在地の所感をまとめてみました。


ゴールとしてのデジタルマーケティング全体像

デジタルマーケティングと一言で言っても、コンテンツに広告、SEO、SNSにデータ解析とやることは山のようにあります。また、その実行のためのプラットフォームもWebサイトにはじまり、CMS、MA、PIM、DAM、アクセス解析、CRMと多種多様。さらにWebサイトは、コーポレートサイト、会員サイト、EC、代理店ポータルなど、これまた多岐にわたります。

デジタルマーケティングが合格ラインに達するとは、これらを一通り導入し、使いこなしている状態です。

下の図は、イントリックスの総合支援サービスの内容なのですが、BtoB製造業がデジタルマーケティングを完成させる上で手掛けるべき主要なテーマを網羅しているので、これをデジタルマーケティングの全体像として、一つ一つの現在地の所感を示していきます。

当社ではデジタルマーケティングに、企業ブランディングやインターナルコミュニケーションを
加えたものをデジタルコミュニケーションと呼びますが、本稿では同義で扱います

テーマ別・日本のBtoB製造業の現在地

ターゲット

  • 新規顧客:製品情報・事例+広告・SEOで一定の成果出せている。国内は成熟市場なので海外が主戦場だが、製品・事例情報は充実化の必要あり。

  • 既存顧客:会員サイトまで用意して、手厚いサポートの出来ている企業は少数。

  • 外部ステークホルダー:IR・採用情報の基本形は満たしている。サステナは会社によるバラつきあり。

  • 営業・代理店:専用ポータルは、co.jp等の公開サイトよりも後回し。情報は多いが体系化されていないので、探しにくい。今後の重要テーマ。

デジタルコミュニケーション媒体

  • Webサイト:co.jpや.comの情報量・使いやすさは一定水準にある。それ以外の事業部サイト、各国サイト、子会社サイトになるとぐんとレベルが下がることも。全部で何サイトあるか、把握できていないことも多い。

  • アプリ:事業部や各国個別で作っている。会社としての統合的な管理はされていない。

  • 業界ポータル:ここで集客し、自社サイトでもてなす形になるはずだが、未発達。ビジネス誌のポータルだと幅広過ぎて、リード獲得には不十分。

  • ソーシャルメディア:そもそもBtoCと比べ、BtoB製造業の利用は控えめ。アカウントは開設してあるも、継続的な投稿に苦労している。

  • イントラネット:情報は多いが、体系立ってないので使いにくい。代理店専用ポータルと同様で、内部用途のサイトのユーザビリティはおざなり。

各種クリエイティブ

  • Webサイト制作:統一ブランディング・ユーザビリティを全社で適用するための制作ガイドラインは整備・配布済み。

  • コーポレートコンテンツ企画制作:自社の理解を進めるためのコンテンツは一定水準にある。大変革時代にどう対応していくかのビジョンは、説明不足。

  • マーケティングコンテンツ企画制作:BtoBのコンテンツは製品の種類が幅広かったり、カスタマイズ品中心だったり、事例や関連資料が必要だったりと、どう掲載するか詰めるべきことが多いので、ラインナップに対して十分なカバー率・深さとはなっていない。書けるライターの不足は、BtoB製造業全体の課題。

  • 営業/代理店向け機能開発:BtoBでは、購買の検討項目が多く、多機能検索、製品比較、コストシミュレーション、オプション選択、コミュニティ等の様々な機能が必要だが、データ整備や機能開発のコストがハードルとなっている。海外のBtoB製造業に大きく後れを取っている。

  • ビジュアル開発・撮影:しっかりしたWebサイトができたのに、写真素材が不足していることは多い。動画・CGなども、利用シーン・複雑な機能を伝えるのに有効なはずだが、コストがハードルになっている。各国は、本社以上に困っているテーマ。

  • イントラネット/ダッシュボードUI開発:上述のように、内部向けシステムのユーザビリティはおざなり。co.jpと違って利用を強制できるため。だが、情報量が多いからこそ、業務効率の改善ポテンシャルが高いはず。

デジタルコミュニケーションプラットフォーム

  • CMS:多くの企業で、更新頻度の高いコンテンツの管理用に導入済み。

  • PIM:仕様情報中心の製品マスターDBの上に必要な、マーケティング向け情報を持たせる製品DB。Webサイト、会員サイト、EC、紙カタログと共有する”ワンソースマルチユース”に不可欠だが、ここまで整備している会社は少ない。

  • DAM:PIMと同様で、マーケティング向け画像・動画情報を持たせるDB。ここまで整備している会社は少ない。デジタルコミュニケーションの表現幅を活かすにも、今後、PIM・DAMは必要になってくる。

  • MA:CMS並みに導入が進んでいるが、見込み客の抽出・育成に必要なコンテンツを作り続けられているか否かで、成否は大きく分かれている印象。行動データを活用したマーケティングの推進は、まだとば口に立ったばかりで、大きな成功体験を持つ企業はまだ少数。

  • CRM:導入済みの企業は多いが、Webシステムとの連携はまだ緒についたばかり。

  • EC:自社導入している所は少ないが、大手ECプラットフォームの活用経験、および人手不足から注目されつつある。

日本サイト単体なら7合目・全社的なデジタル
マーケティングは1合目

本当にざっくりとした私なりの所感でしたが、これらと比べてみると、皆さんの現状はいかがでしょうか。

総合すると、日本のWebサイト単体の出来なら、7合目くらいには到達していると思います。データ活用という観点ではやや甘い気もしつつ、本社のある日本では、一通りの製品情報は整い、新規顧客開拓という目的も一定程度は果たせているからです。

しかし、海外や会員サイト・ECなども含めた広範、かつデジタルの特性をフル活用した全社的なマーケティングの完成をゴールとすると、必要な仕組みもデータも揃っていないし、導入済みのものも活用しきれていない、安定的な運用もまだまだですので、厳しいですが、まだ1合目というのが私の感触です。

こちらは、文化も変えていかねばなりませんので、5-10年の長期戦の覚悟が必要だと思います。

なお、イントリックスのお客様の構成比は社数ベースで、売上3,000億円以上が5割、500億円以上が3割、500億円未満が2割ですので、大企業寄りの重心となっています。つまり、今回述べた内容は、日本のBtoB製造業の平均よりも進んでいるはずですので、その点はご承知おきください。

加えて、企業規模だけでなく、業種や多角化戦略、チャネル政策等でも、しかるべき現在地は変わってきます。

それらを踏まえた上で、大雑把でも、自社の現在地が他社より進んでいるのか、遅れているのか、それとも平均並みなのか、多少なりとも知る手掛かりになれば幸いです。

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