見出し画像

松島の月まづ心にかかりて

奥の細道を国語で習ったのは中学の頃だったか。当時は歩きで東北に行くなんてようやるわ、程度にしか思わなかったが美しい景色のために睡眠時間を削って出かけている自分も大概だ。あるいは旅の楽しさというものがわかる歳になったのかもしれない。

とにかくこの一節(と月日は百代の過客にして〜の一文)だけやたらと頭に残っていて、いずれは行こうと思っていた。

画像1

仙台に着いたらホテルに荷物を預け、予約していた車に機材だけ詰め込んで早速松島に向かった。サン・サーベイヤーでストリートビュー上に太陽と月の軌道をオーバーレイ表示できるとはいえ、実際の景色を見ずに撮影地点を決めるなど言語道断。

ある程度絞った撮影地点を巡るのと同時に、候補地と関係ない場所にも足を運ぶ。四大観のうち行ったのは上の写真の大高森だけだったが、新冨山展望台と西行戻しの松公園の2カ所はいずれも劣らぬ景勝だった。

画像2

こうした月の風景を撮るのはニュージーランド以来だと思う。あの頃とは何もかも違ったが、撮ることへの情熱だけは変わっていない。いや、むしろ高まっているかもしれない。

これまで泊まりで旅に行くときはX-T2とX-H1に必ず縦グリ(正式名称はパワーブースターグリップ)をつけて持って行った。今はX-Pro3の購入資金に充てたので持っていないが、なくてもなんてことはなかった。最終日までに予備バッテリーまで全て使い尽くすほどシャッターは切ったが、バッテリー交換の手間で撮り逃すほどの瞬間はそうそうなかったし、何より事前に残量を細かく把握・管理していれば良いだけだ。

むしろカメラを入れるバッグを選ぶ必要がないメリットの方が大きいかもしれない。縦グリ付きでカメラを入れられるバッグは多くないし、入ってもその分大きくなる。バラして入れれば場所を取る。そんなことに頭と金を使うくらいなら機材を軽くして、手間を惜しまずバッテリーを交換すれば良かったのだ。

思考を変えられたのはX-Pro3のUSB端子がUSB Type Cになった影響は大きい。MacBook Proと電源の使い回しができるし、モバイルバッテリーも使える。使う機会はないだろうが、有線でのテザー撮影も楽だろう。

閑話休題。やはり雪景色は良い。絞りを開けば大きくボケるし、積もってくれればそれだけで画になる。夜でも反射光でISO感度を抑えられるのもいい。

X-Pro3を買ってからウェストレベルでファインダーを一切見ずに撮るようになった。モニターを見ながら撮るのとは違う緊張感が新鮮だった。もちろん失敗写真も多いが、結果だけを求めていた頃よりも撮影を楽しめている。

画像3

雪は滞在した3日のうち2日降ったし、2日目はしっかりと積もった。やはり冬は積雪がなければ物足りない。夏は最近どこでも暑いが、寒いだけで雪の降らない東京にいると何となく損している気分になる。

画像4

画像5

雪の降り方が容赦なくて手も足もかなり冷えてはいたが、この旅の目的は雪景色を撮ることでもある。そのために防塵防滴のボディ・レンズを揃えているのだ。そう自分を奮い立たせ、公衆トイレの軒下でコートの下にしまい込んだカメラを外に出した。

ストロボは持っていく必要がなかったかもしれない。雪が多すぎて風情も何もない写真になったのと、ニッシン製なので防滴ではないという不安が撮影中つきまとった。

画像6

幸い仙台に戻って温泉から出ると雪はほぼ止んでいた。街灯のデザインといい色温度といい、雪景色を撮るのに最高な環境だと思う。電線がある風景も好きだが、ここは電線がない方がやはり良い。

明朝大変な思いをすることになるのだが、それはそれ。旅という非日常×雪という非日常で、今回の旅先を仙台・松島にして正解だったと改めて思った。

この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

54,797件

最後まで読んでくださってありがとうございます! 写真や文章を気に入っていただけたらフォローしてもらえると嬉しいです。サポートいただいた分は機材の購入や旅費にあてさせていただきます。