「人生のすべては通過点」であることを岡山大学の小説問題(2012)から考える
中秋の名月の前日
画質がイマイチなのはご愛嬌。iPhoneⅩではこれが限界。スマホもそろそろ買い替えようと思うけど、決め手に欠ける。むしろgalaxyの方がいい。ここらへん、有識者にも意見を聞きたいところ。
聞くところによると、世の中は三連休らしい……と「忙しいアピール」をする予備校講師よろしく……といきたいところだが、もともと日曜は休みで、さらに今日は休講週。二週目で休講週はやっぱり早いよ。火曜も週休日なので、結局私も三連休。今週末が両日ともに推薦入試の講演会でお仕事なので許してください。
中秋の名月は前日でも美しい。仮に満月を「完全体」と考えるならば月はそのほぼ全ての状態が「不完全」となる。
これって、なんだか人生みたいだな、と。
受験の合格も就活の内定もゴールではない
若いことの特権は目の前のことに夢中になれること。もちろん、そういう環境に居られることが何よりも幸せと言えるのだが。(ここ最近言われている親ガチャにも関連するけれども)
受験生にとって、大学(高校/中学)入試において合格することが最大の目標であり、その先が想像できないかもしれない。
あるいは、その先の世界が夢の世界であるかのように思えるかもしれない。男子校の高校生なんかは大学に入って女子と机を並べることを想像…しているのだろうか。
しかし、その世界が本当にその世界が輝くものかどうかはわからない。時には失望に転化するかもしれない。いや、その方が多いのかも。そんな新入生/新入社員に「あるある」な感情が題材となっているのが今回のテーマ、2012年の岡山大学の小説問題だ。
岡山大学(2012)の問題
問題の入手は東進ハイスクールの「過去問データベース」などからどうぞ。(たまには所属先の宣伝も)
http://27.110.35.148/univsrch/ex/menu/index.html
(上手くリンクが貼れていないのでファイルも添付)
こちらの問2の問題、読んでみてくださいな。新入社員(そして新入生)あるあるな内容。希望と絶望、そしてそこからの再生……。
読み応えのある文章内容。そして非常に優れた問題構成。
実際に私がテキストを作るとき、さらには国公立大学志望のクラスの場合には必ずこの問題は入れますね。
よって、小説が出題される東北大や筑波大、大阪大学文学部志望の人、また開成高校や慶應女子高校、慶應志木などを志望する高校受験生も是非とも解いてみよう。
念のため、答えを置いておきます
以下は設問を解いたうえでご覧ください。解いたうえでないとあまり面白くないかも。
問1 表現に関する問題
→ こういうのを出題してくれるから面白い。どちらかというと高校受験向き。しかも慶應志木とかかな。あとは早大本庄もか。
(答)
① 既に出来上がっている器を貸し出して、料金を受け取るだけの仕事
② 気が抜けるほど小さく、古ぼけた劇場
問2 心情問題
<傍線部分析>
今さら意に介す必要もなかった → 【様子】
➡ 【出来事】(きっかけ)と【心情】を考える
<【様子】から【心情】を考える>
→ 「意に介す必要もない」【様子】
= 取るに足らない/気にならない【心情】
<【出来事】を考える>
→ 「小劇団にホールを貸すことを本社の人間に怒られること」が「気にならない/取るに足らない」のだ
→ なぜか。彼は「退職を決意している」のであり、それならば「小劇団にホールを貸して起こる些細な変化にかける方こと」が大事/面白く思えたのだ。
これらの要素をまとめると以下の通りとなる。
(答)
退職を決意している彼にとって、小劇団にホールを貸し出すことで起こる変化の方が大事であり、それによって本社の人間に怒られることなど取るに足らないことのように思えたから。
問3 場面転換
→ まず、場面転換をそのまま聞いてくるのが面白い。文章読解において非常に大事な要素だからね。これは小説が苦手な人ほど解いてほしいね
(答)
① 退屈な一年が過ぎた。
② そして劇団の公演の日がきた。
③ その夜。
問四 心情問題
<傍線部分析>
彼の胸の裡にある幕が静かに上がり、遠い喝采が聞こえてくるような気がした → 【心情】
➡ 【出来事】(きっかけ)と【心情】(傍線部の換言)を考える
<傍線部の換言(=【心情】)を考える>
「幕が上がる」(比喩)=「何かの始まり」
「遠い喝采」(比喩)=「賞賛される」=「明るいこと」
すごくざっくり解釈するとこんな感じか。
これを直前の内容と併せて考えてみると心情が見えてくる。
――もうしばらく、この劇場にいてみよう。
彼は思った。
――この小さな劇場の小さな舞台に、どれくらい大きなものを入れることができるのか、試してみよう。
つまり、幕が上がったのは「仕事」に関してであり、今後もこの仕事をしていこうという「決意」の表れとして傍線部のような表現になったのであろう。
<【出来事】を考える>
上記の傍線部直前の内容とも関連する。
→「小劇団にホールを貸して、仕事の可能性の大きさに気づいた」ことがきっかけであろう。
➡もともとは「仕事をつまらないもの」としてやめようとしていたのに、である。
これらの要素をまとめると以下の通りとなる。
(答)
これまで自分に与えられた仕事をつまらないものと考えていたが、小劇団に劇場を貸したことでその可能性の大きさを知り、今の仕事を継続することへの決意を象徴している。
問五 表現の意図の問題
<題名分析>
「小さく大きな舞台」
① 比喩表現
「舞台」 = 「ホール」 = 彼の仕事
という解釈ができる比喩である。
② 修飾関係
「小さく」も「大きな」も「舞台」を修飾している。
これを①と併せて解釈したい。
「小さな」「舞台」 → 小さな仕事
「大きな」「舞台」 → 大きな仕事
<①と②を踏まえた上で題名を解釈する>
ここからわかるのは、もともと「小さな(=つまらない)仕事」と思っていたものが「大きな(=可能性を秘めた)」ものに変わるということである。
それは些細なきっかけ(劇団に劇場を貸すこと)により生じたもので、しかしそれが「仕事への向き合い方を変えた」のだ。
これらの要素をまとめると以下の通りとなる。
(答)
つまらないと思っている仕事であったとしても、一つのきっかけや視点を変えることで大きな可能性を持つことに気づくことができるという、「彼」の仕事への向き合い方の変化を表している。
THE 若手社員あるある
解答を書いていて思ったのは、こういうの、若手社員あるあるで、社員紹介とかによく載ってたなあ、ということと、そのパターンには乗れなかった自分がいるな、ということ。
それでも、この程度にはなっています。そしてまだまだ発展します。
人生、すべてが途中経過。
それでは。
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