【コラム】ふと、思ったこと⑧~日本経済新聞『教育岩盤』への違和感
◇日本経済新聞の特集記事
私は2009年、いや就職活動をしていた2007年ごろから日本経済新聞を読んでいる。
そんな日経の今週の特集記事は「『教育岩盤』~漂流する入試」という教育、特に大学受験の現状に対する批判的検証を行う記事……のつもりだったのだろう。
正直に言って記事内容のあまりのお粗末さに愕然とした。
取材対象の偏りから短絡的な結末まで、よくもここまで酷い内容を揃えたものだと震えを覚えた。
ではその内容に対する批判を1日ずつ行っていこう。
〇8/15(月)大学入試、偏差値時代終幕の足音 推薦・総合型が過半に
本連載の第一弾である。
これは伝統校でありながら近年進学塾の偏差値や募集そのものが低迷していた日本学園が明治大学の系列校になる話から始まっている。
ん?附属・系列校化と推薦/総合型(旧AO)って関係なくない?
もちろん付属校は「内部推薦」なので推薦の一種と考えていいが、さすがに学校推薦型や総合型選抜と並べる類のものではない。
この時点で「問題設定の恣意性」は強くうかがわれる。そして、このシリーズの最初にかがけられた文言が以下のものである。
いやいやいや。大学入試に企業の人材育成の一端を負わせないでよ。大学で受ける教育ならまだしも、入り口の入試はあくまでも「高校履修範囲の確認」であるべきであり、そこに企業のほしい人材を試す試験を課すのはお門違いだ。そうであれば企業の入社試験で使われるSPI試験などを批判すべきだろう。あんなもの賢い小学生なら誰でも解ける。
〇8/16(火) 難関大入試で「逆転」狭き道 一貫校強く大器晩成は不利
今日のテーマは一般入試のことらしい。
早速謎の論理が登場する。
ここからわかるのは、「偏差値はそれなりに有効ということでは??」ということである。だって、競争がそこにあるんだから。
また、この記事を書いた記者は地方出身者か、中学受験をしていない人間かのどちらかであろう。
中学受験で求められる力はそんなに表面的で軽薄なものではない。なんで受験勉強は暗記で何とかなるという何十年も前の認識でいられるのだろう。マスコミの人間がこのような態度ではダメだろう。
この連載のダメなところが煮詰まった感じの一日。
〇8/17(水) 公立高校に塾が「出前」 学校の存在意義問われる
この日の記事は端的に学校側に対して失礼。
教員免許も持ってないけど、学校の仕事を舐めすぎではないか?進路指導は本来は学生が進むべき道に対してアドバイスをすることだろう。そのアドバイスを送る大人が増えることは生徒にとって良いことであり、それは巡り巡って学校にもメリットがあるはずだ。
あまりにも書き手に想像力が足りない。
〇8/18(木)入試「医学部信仰」が過熱 理系人材の偏りに危機感
医学部予備校批判かな…と思ったのだが、、
これは、医学部入試の問題なのかな?「漂流する入試」などというサブタイトルを載せるならば入試についての問題を取りあげてくれ。医学部入試なんて多浪、献金、女子差別…など問題の巣窟みたいなものだろう。それではなく最終的に「社会が悪い」の結論。意味が分からない。
〇8/19(金) 過密な入試日程、大学の序列残る 丁寧な選抜へ変革阻む
ようやくまともな批判記事。
たしかに寒い冬の二月に試験をすることも、過密日程にも改善の余地はある。
本連載において唯一読む価値のある記事である。
◇まとめ マスメディアと大衆
かつてはマスメディアが伝える情報はそのまま「事実」として大衆に受け止められた。
しかし、今では違和感を持った個人がこのような形で批判記事を書き起こすことも可能である。
マスコミはすでに特権的なものではなくなりつつある。
その上で、日本の一般紙というかつての特権を笠に着てこのような粗雑な連載をしてしまう日経が本当に哀れである。私は何のために10数年にわたって電子版の購読料を払っていたのだろう。
ふと、思ったこと。
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