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人生が変わった本【ニーチェ編②】

人生が変わった本【ニーチェ編①】では、世の中のどこかに、誰しもが納得のいく、人が生きる意味や価値が存在していて、それを見つけ出すことができたら、謎が解けると思い込んでいたことを紹介しました。

今回は、この思い込みの何が間違いだったのか、ニーチェの解説書の内容を交えて紹介したいと思います。


世の中に絶対的な価値はないらしい

ニーチェの解説本を読んで、最初に衝撃を受けたのは、ニーチェが「世の中に絶対的な価値はない」と断言していることです。

「神は死んだ」というニーチェの有名な言葉がありますが、これは、宗教上の神の否定だけではなく、世の中の絶対的な価値を否定したものです。

たとえば、一神教の宗教においては、神が示す善悪が、その世界の絶対的な善悪を表すことになります。
「神様は悪いことって言ってるけど、本当は良いことじゃないんじゃない?」などと考えてはいけません。
神様がこれは良いこと、これは悪いことと言っているなら、それは絶対です。

日本の文化で考えてみると、世間一般において常識的に善悪が決まっていると信じている状態が、絶対的な価値がある状態になります。
日本は神様と言うよりは、世間が価値を決めることになります。
世間が良いと言ったら良いし、ダメだと言ったらダメです。

価値が明確に示されている聖書と比べると、世間による価値は曖昧なものです。
しかし、私がそうであったように、日本でも絶対的な価値が存在していると信じる人も少なくないと思います。
寧ろ、日本では、世間の価値が曖昧だからこそ、揺るぎない絶対的な価値を求めてしまうという部分もあるかもしれません。

でも、ニーチェは、「絶対的な価値は、どこにも存在しない」と語りかけてきます。

例えば、地球はいつか住むことが出来なくなるし、宇宙だっていずれ終わりが来ます。
人類もいずれは終焉のときを迎えるわけで、我々が何度バトンを繋いだとしても、万全の準備をしたとしても、理不尽で抗いようのない事態が起こりえます。
場合によっては、死後の世界に期待することもできるかもしれませんが、それは死後にしか分からないことですし、現世的には、全てのことにいずれ終わりが来ると結論づけるのが自然です。

地球も宇宙も人類も、いずれ終わりが来るとしたら、誰もが信じる絶対的な意味や価値にも終わりが来ます。
そうだとしたら、その意味や価値は、時間制限付きの相対的なものになります。

さらに、誰しもが納得する意味や価値は存在しえないということも重要なポイントです。
例えば、意味や価値は文化が違えば変わりますし、時代による変化も起こりえます。
誰かが納得する意味や価値はありますが、誰しもが納得する意味や価値はないわけです。
そうだとしたら、誰かが納得する意味や価値があったとしても、それは相対的なものだということになります。

結局のところ、世の中のどこかに、誰しもが納得する生きる意味や価値は存在していないということになります。
残念ながら、「これが人が生きる意味だ!」といえるようなものは、世の中に存在していないのです。
探しても見つからないのは、ないから見つからないということだったわけです。


戸惑いと大いなる正午

私はこの内容を本で読んだ時、すぐには受け入れられませんでした。
長いこと答えを探して悩み続けた末に、「実はその答えはないんだよ!」と言われたら、誰しもが「えー…?そんなことないでしょ」って戸惑うと思います。

なので、私は一旦そこで読むのをやめました。
そして、喉に魚の骨がつっかかったような感覚で暇な毎日を過ごしていました。

本を読むのをやめた3日後、その日はとても天気がいい日でした。
私は、家に居ても仕方ないと思って、家の近くの川沿いをお散歩することにしました。

清々しい陽気の中で、私は突然、「世の中に絶対的な価値はないし、誰もが納得する生きる意味もない」と実感することができました。
きっと、「ニーチェの言う通りだ」という想いと、「ニーチェが間違えているのでは」という想いが、シーソーみたいに揺れ動いた末に、「絶対的な価値も意味もないじゃん」という方向に振り切れた瞬間だったのだと思います。

私が、そっち側に振り切れた最大の理由は、「6年も考え続けて答えが見つからなかった」という事実から、「じゃあ、ないかぁ」と実感できからだと思います。
そういう意味では、ひたすら考え続けたからこそ、諦めがついたとも言えます。
何はともあれ、私は世の中に絶対的な価値がないということ、誰しもが納得する人が生きる意味は存在しないことを受け入れました。

これをニーチェは大いなる正午と呼んでいます。
真上に太陽がきて、一切の陰(思い込んでいた価値観)が無くなるというニュアンスです。
私はこの瞬間に、全ての呪縛から解き放たれた気分になりました。
それまでは、世の中に認められないといけないと思っていましたが、そんなこと気にしなくていいんだと思えるようになりました。

そして、これで、めでたしめでたし、とはならないのが人生の難しいところです。
私はこの時、単に入口に立っただけで、ゴールにたどり着いた訳ではなかったのです。
そうして、入口に立つことが出来た私は、読むのを止めていた本をもう一度開きました。


次回へ続く…

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