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来年の壮行会を思い浮かべろ!

2年生のレフトスパイカー、ユウは、とにかく試合に出たがった。
やっと目の上のタンコブがいなくなって、自分たちの代が始まった。
ずっと球拾いばかりさせられてきたんだから、自分が試合に最初から最後まで出るのは当然だ。
1年生が出るのなら、1年生に代わって入ったり出たりすればいい。

そういう発言は一切無かったが、
「次のセットはユウは下がって、1年生のミーを出す」
と私が言った時の彼女の表情は、そう物語っていた。
私くらい人生経験を積めば、「そう思うだろうな」というのは、痛いほど分かる。

君たちの学年は、ずっと我慢してきたもんな。そうだよな。うん。
でもな。分かってほしい。

そんな練習試合が終わった後、新チームの9人に話したこと。

全国大会に行った3年生は、総勢10人いたし、そのうち6人しか試合に出ないという、ちょっと変なチームだったけど、間違いなく言えるのは、「3年生のチーム」だったということ。

球拾いで、ベンチメンバー12人の中に2年生が2人入っていたけど、バレーの戦力の中には全く入ってなかった。

3年生の全国大会が敗退で終わり、自動的に代替わりしたわけだが、今度はそのまま、「2年生のチームだ」とは言えない。残念ながら。

なぜかと言うと、2年生に実力が無いからじゃないよ。
2年生が4人しかいないからだ。
4人だけでは、当たり前だけど、試合に出られないから、1年生5人の力を借りなくちゃならない。

ということは、「学年の垣根」みたいな、目には見えないものがあるのかもしれないが、そんなことは言っていられない。
いつ誰がコロナに罹り、熱を出すか、またはケガをしてしまうか、先のことは誰にもわからないから。

この先は、この9人が、この中学校の男子も女子も含めた全校生徒の中で、バレーボールが一番上手いトップ9人にならなくちゃいけない。
うちに男子バレー部はないからね。

毎日毎日、バレーボールの練習をしているのに、運動神経のいい野球部の男子の方が、バスケ部の女子の方が、球技大会やったら上手かった、なんてことは、絶対にないようにしてもらいたい!

だってさ、

だって君たちは、来年3年生になって、6月に集大成である、郡総体にエントリーし、大きな我が校の体育館で、全校生徒の前で、
「頑張ってきます!応援よろしくお願いします!」
と、壮行会で胸を張って、宣言するんだろ?
各部がきれいなユニフォームをビシッと着て。
そんな晴れの舞台で、「この学校内でバレーボールが一番上手い9人です!」って顔ができなくってどうする?

だからね、時には練習試合とかで、2年生を下げて1年生を出すこともあると思う。
そんな時に、代わりたくない、このポジションを譲りたくないって、態度や表情に出さないでほしい。

譲ることで、後輩が育ち、回り回ってそのことが自分を、自分たちのチームを助ける場面が、この先きっとあるはずだ。

だから、ベンチに下がった時は、外からチームを見て、また次入る時に役立つ情報を一つでも見つけるようにしてほしい。
または、代わって入った後輩の、直した方がいいところはないか、よく観察してほしい。

自分が出ていない時、やりたいポジションではないポジションについている時は、チーム全体の将来のことを考えてほしい。

みんなでユニフォームを着て、全校生徒の前で胸を張って整列している、自分たち9人を想像しながら!

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