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3年生が全国大会。なのになぜ2年生以下はー

普通に考えたら、どんな競技種目であっても、全国大会に行くような中学校なら、その下の学年だってそこそこ強いんだろう?と思いますよね?
3年生が引退したら、そりゃあ戦力は下がるだろうけど、一緒に練習していたら、自然と上手くなるだろうと?

ところが、この中学校は違ったのです。

まず、3年生は10人いました。
けれど、試合に出るのは、そのうちの6人だけ。リベロもなし。交代も一切なし。
練習試合でも公式戦でも、6人以外は得点板、ラインズマン、球拾い。午前も午後も、どれだけ疲れてバテても、ずっと6人だけが出る。
よく最後までケガ人が出なかったものだ。実際には腰痛とか足首捻挫とかあったが、それでも最後まで6人だけが出続けた。

一度だけ、人数の多いチームが練習試合に来て、2軍戦をしてほしいと頼まれて1セットだけ、3年生の補欠4人を入れてゲームしたのを見たが、驚いた。サーブが入ったら、保護者がすごいと手を叩いて喜んでいたのだ。2年半、バレー部にいて、サーブが入って喜ぶ?めまいがした。

そんなチームの2年生4人は、まあよく辞めなかったものだ。彼女たちも初心者で、やはりサーブは入らず、パスも自己流のフォームで、直すのに苦労した。というか、最後まで直らなかった部分もあった。もちろん、選手交代の作法も知らなかった。

前任者の批判はしたくないので、批判ではないが、事実は事実。
それを書いておかなかったら、私が指導し始めた2年生以下のスタート地点がわからなくなるから、書かざるを得ない。

青春は密ですから、と言ったのは、仙台育英の須江航監督。
中学3年間だって、貴重な貴重な青春の根幹だ。
自ら選んでバレー部に入ろうと思った子たちが、初心者だろうと何だろうと、指導もされず、試合にも出されず、ずっと下働きだけさせられる?
そんな部活動があるのか?
社会的に、教育的に、許されるのか?
監督はなぜ黙認していたのか?
何かが歪んでいるような感じがして、不思議で仕方なかった。

いずれ、前任外部コーチの娘は、スパイクもサーブもレシーブも一流だった。背は高くなかったが、運動量が豊富で反射神経も速く、男子みたいだった。
これは想像だが、彼女がいなかったら全国大会に行けなかっただろう。
そしてその外部コーチが指導に当たることもなく、平凡なチームになったことだろう。

そしてこれは事実だが、この外部コーチの長女と次女は、県外の同じ強豪校に呼ばれて入学した。毎年春高に出るような高校だ。
そのコーチは2人の娘に小中学校時代ずっと指導に携わり、2人目の引退と共に、すっぱりとバレー指導から足を洗った。審判もしないし、スポ少のサポートもしていない。完全に身を引いた。

私は、彼とはほぼ話す機会はなかったので、どんな人となりかは最後まで分からなかったが、彼のような生き方は、自分にはできないし、したくない、と思った。

しかし、彼の存在があったから、そんな背中を見てしまったから、私は今、私なりの信念を持って、日々指導しているのだと思う。
言わば、情熱に火をつけられてしまったのだと思う。

だからきっと、彼には感謝するべきなんだろうなと、思うこともある。

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