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【中学受験ネタ】やっぱり身の程知らずですよねえ ~ 6年生最初の塾の面談

先日日能研での面談があった。
いつもは算数と理科を担当する塾長のI先生が応対してくれるのだが、今回は新しく入ったばかりのM先生が応対してくれた。

M先生は、心なしか緊張しているように思えた。
まず、息子の現在の成績について簡単に説明し、少し褒めたあと、「ですが……」と言ってから、息子の気になるところを切り出した。
たった一カ月強しかうちの教場にいなかったにもかかわらず、息子の欠点をよく捉えてくれていた。
欠点を指摘しなければいけないので、我々を怒らせないよう気を使ってくれたのだろうが、こちらとしては「ですよね」と完全同意の内容。

まずノートの取り方がなっていない。次に宿題が提出されていない。問題文をよく読まない。等々、親の私から見ても気になることをたくさん指摘してくれた。
それに乗じて、私も最近の息子の悪行三昧(前回の育成テストで栄冠をやっていなかったこと。毎朝の計算を適当になっていたこと)を言ってやった。
英語教室ではあれだけ褒められた息子も、日能研に行くと、たいてい複数の問題点を指摘され、「このままでは……」的な話になるのが面白いところ。

ちなみに4年生の時、現在の塾長先生が算数担当のI先生に変わったときの最初の面談は見ものだった。
I先生は苦虫を噛み潰したような顔で、人の話を聞かない、計算の過程を書かない、ミスを重要視しない、授業中にうるさい、忠告しても直さない等、あらゆる息子の欠点を言ったあと「息子君、だいぶ頑固ですよね。なかなか聞いてくれません」と本音を漏らした。
納得しない限り絶対に言うことをきかない息子には、我々親でさえ手を焼いていたので、先生にしてみればなおさらだったのだろう。
家に帰って先生の話を息子にして、少しずつ4年、5年と欠点を直していって(正直苦労した。先生もだと思う)、算数に関しては、I先生にお墨付きをもらえるまでになった。
I先生は大変だったと思うが、途中から息子の性格を理解してくれて、根気よく指導してくれるようになった。
いまでは息子が最も尊敬する先生の一人だ。

さらに見ものだったのが、5年生前期の面談。
例によって、いろいろと指摘されたあと、息子の授業が終わったので、「息子君も呼んで、一緒に話しますか?」と言われたので、息子も交えて説諭してもらえることになった。
I先生はこう切り出した。
「息子君の志望校はどこなの?」
当然九州なので、普通はRSかKFを目指す。
一度RSの校長先生がうちの教場で講演会をしてくれたことがあり、我々親子も参加したので、先生はRSと答えるのだと思ったらしい。先生としては、RSを受けるのなら、きちんとやらなければならないよ、と持っていく予定だと思われた。
息子は頭をかきながら、「それが……」と言って答えない。
「いいんだよ。正直に言って」
「いやあ、今の成績じゃ、身の程知らずって言われそうで」
「なに言ってるんだよ。まったくそんなことはないよ。さあ、どこなんだい?」
息子はしばらくためらったあと、ぽつりと言った。
「それが、KS中学を受験したいんです」
「は」と言ったきり、一瞬先生の動きが止まった。数秒で頭の中を整理したらしく、私たちのほうを向いて「東京の中学も受験するご予定ですか?」と訊ねたので「はい」と。
息子が苦笑しながら呟いた。
「やっぱり身の程知らずですよねえ」
「いやあ、そんなことはないよ。目標を大きく持つのはいいことだよ」
その時の困惑したI先生の姿が印象的で、申し訳ないけれども、今でも思い出してしまう。

ちなみに、息子がKS中学を目指すようになったのは、東京旅行に行った4年生の春のこと。
上野の博物館巡りの帰りに、せっかくなので途中駅に立ち寄ってKS中学を見学することにした
家族ぐるみで付き合っているKS出身の友人もいるので、息子は以前から興味があったよう。
ちょうどその日はなにかのイベントがあったようで、父兄とKS中学の生徒が学校に登校していた。
ときおりすれ違う頭のよさそうなお兄さんたちと、学校の雰囲気がすっかり気に入り、「僕ここに行きたい」と言うようになった。

さて、5年前期の面談でI先生を思い切り戸惑わせた息子。5年後期で、点数的にはKS中学も射程範囲になって臨んだ6年最初の面談だったが、やはりいつもと変わらず、がっつりM先生に説教された。
ひとしきり欠点を指摘してくれたあと、M先生は訊ねた。
「それで、RSとKSのどちらに照準を絞りますか?」
「KSです」
「わかりました。それではそのつもりで指導します」
と言って、KSを受験するには国語が不安であるため、国語の徹底対策が必要であることを説明してくれた。
まったく同じことを思っていたので、非常に心強かった。
九州にいるので、東京の中学に関してはほぼ情報がないだろうと思っていたのだが、M先生は去年もKS中学を受験する受験生のサポートをしていたそうで、我々にとっては非常に心強い存在となった。

最後に先生は息子も交えて、がっつりと息子に説教してくれた。
いくら日能研がサピックスに実績で負けても(ちなみに九州ではメチャメチャ健闘しています)、私が日能研を好きな理由の象徴になるようなことを、M先生はしきりに言っていた。
「いいかい、勉強は中学受験だけじゃないんだよ。大学受験でも、大人になってからでも勉強するんだよ。いま君は将来のために、自分で勉強をする習慣を身につけているんだよ」
息子は神妙な顔をして聞いていたが、どれだけ心に届いたか。

面談ではM先生に説教しかされなかったが、M先生に叱られて、猛烈にモチベーションが上がった息子。昨日の公開模試は相当頑張ったよう。
「M先生が土曜日も指導してくれた内容もわかりやすかった」
「よかったな。M先生に感謝しなさい」
「うん」

ところが昨日の夕方、M先生から電話がかかってきた。
「宿題が出てないようなんですけど」
「しまった!」と息子。
おまえな、そういうとこやぞ。


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