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【中学受験ネタ】僕はね全然勉強しなくても、どんな中学でも合格できると思ってたんだよ

去年の話である。

5年生前期、コロナ渦で塾もZoom授業になり、息子は全く勉強しなくなった。授業もまともに聞いていない様子だった。

GWに友人たちと国東半島の旅行を企画し、それまで猛勉強した(つもりの)息子は公開模試でもいい点数を取って、あとは旅行に行くだけというときに、緊急事態宣言などで旅行がキャンセルになり、同時に勉強のやる気もなくなったようだった。
以来息子の成績は低迷の一途をたどった。
GW前の公開模試を最後に、いちおう宿題をするものの身が入っていないのが、明らかに見て取れた。

5年生後期が始まっても、息子の勉強に対する姿勢はいっさい変わらなかった。当然成績も低迷した。
先生の忠告も聞かず、朝の計算も漢字の練習もサボるようになった。
なにも言わなくても勉強しない、やってもダラダラするだけで勉強しない。

仕方がないので、なぜ勉強するのか、なぜ中学受験をするのか、そして合格するためにはなにが必要か、プレゼン資料にして作った。
「あの子、口で言っても全然頭に入ってないわよ。目で見ないと駄目みたい」
と妻が言ったので、資料を作ってプレゼンをしようと思ったのだが、科目別に気づいたことなどを書いているうちに、合計60ページの大作になった。

さっそく息子に話があると言って呼び出して、一時間以上かけてじっくりプレゼンテーションを行った。
見終わったあと、息子はいろいろなことを、自分の中で納得したみたいだった。
「だから勉強しなくちゃいけないんだね」
と呟くように言った。

やっとこれで理解したかと思ったとき、息子が言った。
「僕はね全然勉強しなくても、どんな中学でも合格できると思ってたんだよ」
「は?」
「でもお父さんの説明を聞いて、勉強しなくちゃ駄目だってわかったよ」
「…………」
「僕ね、明日からちゃんと勉強するよ」

わかってくれたのはよかったのだが、その自信過剰な考えはだれに似たんだろうかと思う。
息子がポジティブモンスターだとわかった瞬間だった。

小説が面白いと思ったら、スキしてもらえれば嬉しいです。 講談社から「虫とりのうた」、「赤い蟷螂」、「幼虫旅館」が出版されているので、もしよろしければ! (怖い話です)