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【一幅のペナント物語#13】描き加えれば柿が生るなり「法隆寺」

◉金色の「法隆寺」がこれみよがし。ビジュアルの主役は夢殿。その手前でくつろぐ奈良のイメージキャラ、鹿。回廊越しに木々の梢から顔を出しているのは金堂と五重塔。ペナントならではの往時を忍ばせる真っ赤な弁柄が官能的な一幅。個人的には、左上にとってつけた感満載でぶら下がっている柿。実際はこんなとこに柿木は無いだろうけど、こうやってコラージュできるのがペナントのいいところ。たぶん正岡子規の俳句を入れたくて、それなら柿もいるよね? とそんな感じだろう。右端の聖徳太子も無理矢理入れられたようで、昨今その存在すら疑問視されちゃっているせいか、なんだか寂し気に見える。

◉気になったのは「飛鳥の昔を偲ぶ」のコピー。なんとなく違和感を感じて、“偲ぶ”の意味を辞書で引いてみると「過ぎ去った物事や遠く離れている人・所などを懐かしい気持ちで思い出す。懐しむ。」とあった。そうだよなあ。偲ぶって、だいたい関わりのあった人や場所に対するアクションだものなあ。だいたいの人は飛鳥時代のことを知らないから、偲ぶのはなかなか難しいと思うんだけど。せめて「飛鳥の昔に思いをはせる」とかにすれば良かったのに。

◉ここまで、ペナント化されるモチーフにはどんなものがあるのか? を探りつつやってきたのだけど、お寺もメジャーなモチーフのひとつ。手元にもいくつかお寺のペナントがあるけれど、やっぱり「法隆寺」は“ザ・観光地!”という感じがあって存在感が頭ひとつ抜きんでている。僕も中学校の修学旅行で行ったのだけど、その年頃で仏教や寺に興味を持つ奇行種ではなかったので、まったく記憶にない。このまま死ぬまで再訪することはないかもしれないと思うと、なんだか悔しささえ感じるのは何故だろう。

◉柿を食べても「あ、法隆寺行こう!」とはならないけれど、家の壁に貼られたペナントにふと目が止まって「・・・また行ってみたいな」と思うことはあるのかもしれない。ペナントにはそんなリピート喚起力がありそうだ。

◉余談だけど、たぶんこれはタッチからして「足摺岬」と同じ人の作品だよね。

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