金融庁は邦銀の営業妨害装置、あるいは日本経済破壊のトロイの木馬

この資料を読んでもう私の中で結論が出ました。日本の停滞やその他経済のもろもろも問題を作っている元凶(真犯人)は金融庁という組織でしょう。

↓下記の黒田朗氏の論文を読み解きながらこの説を再考・解説いたします。

金融機関の自己資本比率問題と不良債権処理 (2) 黒田朗氏

https://sozo-air.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=218&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

※簡単にどういう流れかおさらいします。

1 (土地)バブル崩壊(人の創意工夫ではなくものに金が流れたのが原因か?)

2 金融監督庁(現 金融庁)の誕生

3 金融庁が銀行に自己責任原則、自己資本比率規制(BIS規制)を適応、不良債権処理を加速。

4 金融庁の人災による巨額の信用収縮の発生

5 銀行の信用創造の力がそがれ税収が低下
※なぜ銀行の信用創造が税収の拡大に寄与するのかはこちら


6 金融庁の銀行への恒常的な過干渉(信用創造の抑圧による営業妨害)が早期是正措置と早期警戒措置という法律により法的後ろ盾を持ち、日本の20年余りの低成長が始まる
※この構造を非難するメインストリームの議論や盛り上がりは現在殆ど皆無

7 銀行は利ザヤを稼ぐために、金融庁がリスク0と見積もる国債の大量購入を開始

8 国債発行で税収の穴埋めを行う政府のファイナンス方式が完成

9 マスコミの国債発行残高のあおりを受け政府の果てしない増税路線(国民負担増大路線)の開始
※財務省がいきり立つのもここら辺から。低成長の犯人ではない
※MMTが批判しているのもここらへん

10 中小を含む企業は銀行の信用創造という後ろ盾を失い、経営安定化のために内部留保の拡大(賃金抑制)を開始、そのための法人税下げの政府への要望

11政府は法人税収穴埋めのために消費税増税

12 企業の資金調達方式が株偏重となり、株主資本主義が拡大し、コストカットのために余計に賃金抑制と、下請けいじめが拡大

13 社員より株主におもねる企業文化により、社員の帰属意識が低下し、企業の国際競争力も低下


14 政府の増税路線・企業の賃金抑制による国民のデフレマインド拡大

15 税と社会保障費の高負担による勤労世代の貧困化

16 少子高齢化に拍車がかかる


黒田朗氏の金融庁とアメリカナイズ批判

日本の全国銀行の平成 16 年 3 月時点の総数は,131行,これに信用金庫326(以上,表1),信用組合 182,その他の協同組織金融機関 62(以上,金融庁資料 2))を加えても,総計701に過ぎない.他方,米国には,商
銀行が 7,769 行,貯蓄銀行が 1,413,両者合わせて9,182の銀行がある

米国の商業銀行の場合には,2行が合併等で消滅する(4行が2行になる)間
に1行新設されるという風に,新陳代謝を繰り返しながら変化が進んでいる(青木2003:13).新しい銀行が次々に生まれている.この点は日本と状況が異なる.

つまり、その当時アメリカの銀行は、生まれては消える不安定な存在であり、アメリカの金融システムそのものが未成熟なシステムであったという事です。
このため多くの銀行が自己資本比率がまだ高い段階だったのでBIS規制の悪影響を受けなかった、もしくはBIS規制がもともと不安定な金融システムを安定化させる方向に働きメリットがデメリットを上まったと考えられます。

橋本首相によって金融ビッグバン構想が発表され,米国流の自己資本比
率規制が本格的に遂行される見通しとなった.金融ビッグバン宣言の平成 8 年(1996年)以降,三洋証券,北拓銀行,山一證券が相次いで破綻,失業率は戦後初の 4%台に上昇,貸出残高は急減を始めた.平成14年度(2002 年度)の貸出残高は440兆円,ピーク時平成8年度(1996 年度)の564兆円17金融機関の自己資本比率問題と不良債権処理(2)に比して 124 兆円の減少,6 年間で 20.4%減,年率 3.7%の減少となった.

日本の場合は、この規制を金融庁が厳密に適応しようとしたことが裏目に出ます。BIS規制(自己資本比率規制)と不良債権処理を金融庁が、強引に金融ビッグバンと称して銀行に適応することで余計に銀行がつぶれ、124 兆円 もの信用収縮が起こることになります。
(ちなみにBIS規制を守っているか都度行政が監視するような仕組み=早期是正措置のようなものがあるのは日米だけです)

自国の経済を自国政府が破壊するのですから、こんな馬鹿な国はないでしょう。

日本の金融構造改革は,自己資本比率規制,金融検査マニュアル,リレーションシップ・バンキング規制,郵便貯金の民営化など,これまで主として米国をモデルとして進められているが,日本がモデルとする米国金融界の実態は必ずしも我々に良く理解されないまま議論が進んでいるように思われる.

米国政府は,自己資本比率規制を通じて日本の銀行の過剰を指摘した.21世紀は直接金融の時代であるとして,日本のオーバーバンキング解消,銀行の規模縮小と証券市場の育成を促した.ところが,米国金融当局は,この間自己資本比率規制によって米国の銀行制度,間接金融のシステムを育成強化した.

米国側は,日米構造協議等を通じて執拗に日本の経済制度,金融制度が閉鎖的であると非難攻撃を続け,日本の金融市場への進出を目論んでいた.金融ビッグバン,すなわち規制緩和,国際化,グローバルスタンダード化は,こうした背景のもとで,米国側の強い要請を受けて進められたのであった.
米国の自己資本比率規制は,米国の銀行育成策と一体をなすものであった.しかしながら,米国に適した規制緩和策と自己資本比率規制は,日本の金融システム改革にとって決して妥当な政策ではなかった.それは日本の金融界に甚大な損害をもたらした

この為の装置が金融庁で、その後の日本経済の長期停滞や少子化等の影響もかんがみるに、もはや経済的核兵器のようなものです。
また、この弊害が日本の言論界で経済学者含め議論されない(言及すらされない)ことも日本人のほとんどが核兵器を自国内で自ら使用したことに気づいてすらいないという事になります。

日本政府の役割はアメリカの金融資本(投資銀行,ファンド・マネージャー,ターンアラウンド・スペシアリスト等)に日本の市場を開放することであった.一例が,長銀のリップルウッドへの売却であった.そのためには,日本の社会経済制度,金融制度が米国企業にとって理解しやすいものであり,好都合のものでなければならなかった.金融ビッグバンの圧力を宿命(黒船の再来)と受け止めた日本政府は,規制緩和の遂行とともに大蔵省の解体,金融監督庁の新設,自己資本比率規制の導入等,次々に米国モデルの輸入に踏み切ったのである

売国の見本のような日本政府

(金融庁は)指導行政を止めるといいながら,日本の現場の諸問題を無視し,権限を振りかざした威圧的な金融行政を行おうとしていると見られても仕方がない.ある信用金庫支店長は,「かって金融行政は箸の上げおろしまで指導するといわれた時期があったが,個別金融機関の業務戦略や人材育成にこれほどまで踏み込んだことは,入庫以来二〇年余に及ぶ私の経験のなかでも例がなかった」と告白している(金融財政事情2003:42).

日本政府は規制緩和が日本には必要、それが消費者にメリットをもたらすと言いながらその実規制強化だったわけです。

金融庁は,金融機関に対して審査能力を上げよ,コンサルタント活動を行え,優れた取引先を紹介せよ,地方経済産業局の行事に参加せよ,政府系金融機関と協力せよ,裁判所を活用せよ,手数料収入を大きくせよなどと細かい指導内容を示した.そして,計画書の提出と半期ごとの報告を求めている.しかしながら,銀行経営は,基本的に貸出金から得る利息で成立する.金融庁は,この点を無視している

また、金融庁は銀行の利益の源泉である信用創造を抑圧しながら、単にその目的はアメリカナイズのルールを押し付ける邦銀の営業妨害機関であることがわかります。

昭和59年度の貸出利回りは,米銀12%強,邦銀7%強であった.この頃は邦銀も収益力を充分に保持していた.ところが,平成12年度の貸出利回りは,米銀9%弱に対して邦銀は2%に落ち込んでいる.さらに,邦銀の利回りは,平成14年度,15年度ともに2%を下回った

金融庁のご指導で儲からなくなる邦銀。

白鳥・大山論文は,邦銀の経営悪化の要因を以上の如く分析したうえで,いくつかの処方箋を出している.その処方箋の中身を紹介すると,次のようになる.
1. 公的金融の縮小
2. オーバーバンキングの緩和
3. コーポレート・ガバナンスの改善
4. 資本と労働の円滑な再配分
上記いずれの処方箋も,米国モデルとの対比で問題を解決しようとする極めて安易な立論に過ぎない.白鳥・大山論文は,日米預貸利鞘の違いの背景を詳細に論じながら,結局処方箋としては米国モデルへの追随を提案している.分析は優れているが,結論が米国モデルへの追随では,分析の意味がないのではないか

この通り、20年たっても政府はアメリカナイズを続けており、「コーポレート・ガバナンスの改善」等の政策が進められていますが、全く日本の状況は改善していないですね。

日本にふさわしいのは,決してアメリカモデルではない。今後とも,中小・地域金融の現場は,懸命の努力によってわが国独自の伝統を受け継ぎながら,日本の金融システムを維持し発展させるであろう。金融当局のなすべきことは,これらの現場レベルのよき伝統が十分に発揮できるように支援することであり,いたずらにアメリカモデルを強要することではない

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