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M-1グランプリ2023を振り返る~ファースト・ファイナルステージ編~

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今年も大いに盛り上がったM-1グランプリ。新たに審査員を務められた海原ともこさんの審査や、決勝初進出漫才師が5組と、今年も注目点が様々あったかと思います。皆さんが注目した漫才師の結果はどうでしたか。3連単企画で見事予想を的中させた方が300人近くいらっしゃるそうで、たいへん驚いております(私は外れました…)。

ここからは、今年のM-1を自分なりに振り返ります。1お笑いファンの視点から、ファースト・ファイナルステージの感想を記していきます。




ファーストステージ

・1組目 令和ロマン

賞レースではトップは不利、というジンクスを見事に破りましたね。KOCのカゲヤマといい、トップバッターでも大きなインパクトを残すことができれば、賞レースで勝てることを証明した令和ロマンの功績はとても大きいと思います。

2人の掛け合いは流石の安定感で、早速爆発が生まれていましたね。とても面白かったです。会場の空気を自分たちのものにするまでの速度がすさまじかったと思います。実際の結果も、トップバッターにしてはかなりの高得点で、10組終えた後でも首の皮一枚繋がった状態でファイナルまで残ったのは本当にすごいことです。あえて1番手で突飛でインパクトのある漫才を披露することで、基準点を高くして後続の組にダメージを与える、という2人の戦略が見事にハマったと言えるのではないでしょうか。


・2組目 シシガシラ(敗者復活)

国民投票のままだったら、シシガシラではない漫才師が決勝に駒を進めていたかもしれないと思うと、今年からのルール改定は成功だったと思います。それにしても、ハゲを武器にするファイナリストはどうしていつも合コンの設定を漫才をするのでしょう(笑)

昨今のコンプラ事情を上手く反映した漫才でしたし、つかみも最高に面白かったのですが、結果は振るわず。令和ロマンのインパクトを超えるのはやはり難しかったんでしょうね。今後も自慢のハゲを活かした漫才を続けてほしいですね。


・3組目 さや香

昨年準優勝の漫才師が3番手で登場。ここで来てしまうか、と思ってしまいましたね。昨年同様中盤で登場して高得点をたたき出すと予想していたので。振り返ってみると、関西の漫才師が序盤で出尽くしているんですよね。これも今年の出番順の面白いところ。

2人の掛け合いがどんどんヒートアップしていく、まさに王道のしゃべくり漫才。ファーストステージで個人的に一番笑ったのはさや香の1本目でした。コント漫才も、システマチックな漫才も好きですが、やはり人間と人間の素の言葉のぶつかりあい、しゃべくりの漫才が私は一番好きです。松本さんの点数が意外と低かったのには驚きましたが、「令和ロマンは越えてない」という指摘には納得できる部分も。やはり審査員席にはこのお方がいなければならないですよ。そうだろ、あっちゃん。


・4組目 カベポスター

昨年のトップバッターが4番手で登場。独特のボケとキレのいいツッコミは流石のクオリティで面白かったです。仕組みがわかっていくとどんどんハマって笑いも大きくなっていた印象です。ずっゼリw

本人も悔しがっていましたが、最後で噛んでしまったところが惜しかったかなと思います。面白い箇所がたくさんあったのに、最終的に噛んだところが大きく目立ってしまうのはあまりにもったいない。4分間でいかにして自分たちの持ち味を発揮するか。M-1のための漫才作りの難しさを、素人ながら強く感じました。


・5組目 マユリカ

ビキニ写真集を引っ提げて東京進出を果たした関西の実力派、その注目度も高かったように思います。中谷さんのツッコミが大好きなんですよね。「アカンッ…殺してまう!!」w

大会からのキャッチフレーズが「ずっとキモダチ」というのはなんともかわいそうでしたが(笑)、さすがの息の合った掛け合いでとても面白かったです。2人ならではの良さを存分に感じられる漫才で最高でした。オチで爆発があったのも良かったですね。マユリカはとくに、出番終りの審査員とのやりとりもすごく上手で面白かったですよね。キモダチに触れた邦子さんへの「一回言われてみて下さい」w マユリカは今後テレビ露出増えそう。Podcastも面白いですしね。


・6組目 ヤーレンズ

昨年からの勢いそのままに見事決勝に初進出したヤーレンズ。演技力も、構成も見事な漫才でした。審査員のコメントにあった「後半笑い疲れしてた」って、この上ない誉め言葉ですよね。嬉しかっただろうなぁ。

楢原さんの演技力とボケ数には毎度圧倒されます。それが決勝の舞台でも上手くハマっていました。塙さんの言うとおり、設定もわかりやすく、テンポのいい漫才だったと思います。スタイルが自分たちとよく似ているサンドウィッチマンの富澤さんが97点とかなりの高得点をつけていたのが印象的でした。


・7組目 真空ジェシカ

すっかり決勝常連の真空ジェシカ。スタイルが認知されてきている中でも決勝に進み続けるのは本当にすごいと思います。ずっと面白いですよね。

コメントで松本さんが述べていた「笑いの距離感」は興味深い観点でした。去年の結果を踏まえた上(去年の松本さんの点数はあまり高くなかったですよね)で、今年の距離感はちょうどよかった、と漫才の出来栄えを絶賛されていた。真空ジェシカの今後の漫才作りの指標が、なんとなく見えたのではないでしょうか。


・8組目 ダンビラムーチョ

度々準決勝や敗者復活戦で話題になる漫才師が、満を持して本戦に初出場。伝家の宝刀である歌ネタで挑みました。

最初の天体観測の部分で、1番を歌いきってからやっとツッコむのは個人的にはとても面白かったのですが、M-1の4分間ではあまり好まれなかった様子でしたね。競技となると、より短いスパンで大きな爆発が求められるのでしょう。大会が求める漫才のレベルの高さは異次元です。また歌ネタで帰ってきてほしい。


・9組目 くらげ

今大会のダークホース的存在。かなり練られたシステマチックな漫才をする2人ですよね。何年か前に観た「わかんねぇけど」のフォーマットの漫才がとても面白かったことを覚えています。

アロハシャツを着た坊主のおじさんが異様にサンリオのキャラクターや口紅のブランドに詳しくて、スラスラその名前を言っていく状況って、冷静に考えたらめちゃくちゃ面白いですよね。それに対するツッコミがあっても良かったのかな。大吉先生や松本さんの指摘はなかなかに厳しいものでしたが、的を得ていましたね。


・10組目 モグライダー

2年前のM-1で、トップバッターながら見事な漫才を披露し、今では人気芸人の1人であるモグライダーが再び決勝に帰ってきました。決勝メンバーの中で個人的にいちばん応援していたのはモグライダーです。

歌ネタが続いてしまったことや、ともしげさんのポンコツな部分が漫才中にあまり出ていなかった?ことがあってか、全体の点数は厳しめ。好きであることに関係なく、私はとても面白いと感じ、たくさん笑ったので、もう少し点数も高いと思いましたが、審査員は厳しかったですね。ともしげさんがネタ終わりに緊張を浣腸と言い間違えた瞬間が最高でした。本番後にウケをとってしまうのもとげしげさんらしいですね(笑)


・ファイナルステージ

・1組目 令和ロマン

1本目とは変わって、コント漫才を披露。漫才の幅の広いうえで、きちんと面白さが際立っていた、というところで評価されたのではないでしょうか。この漫才、とても面白かったですね。吉本の自虐ボケとツッコミが最高でした。ああいう人、絶対吉本にいますもんね。

なんでも、令和ロマンはあと2本、披露した漫才を含めると4本の漫才を準備していたそう。出番順などを考慮した緻密な戦略が功を奏しましたね。なかなか戦略通りに、思い通りにならないのがお笑いの賞レースだと思うのですが、それを見事に攻略してみせた。普通そんなことできないですよ。天才すぎる。人生何周目なんだ。


・2組目 ヤーレンズ

私がヤーレンズの漫才で一番好きなのがこの「ラーメン屋」の漫才。去年の敗者復活戦に続き、再びM-1で観ることができるとは思いませんでした。前に観たときよりもブラッシュアップされていて、初見じゃなくても楽しめました。本当に面白い漫才って、何度観ても面白いですよね。

この漫才のすごいところは、面白さはもちろん構成がとてもきれいなところだと思います。漫才中に喩えとして登場する映画「ベンジャミンバトン」のように、始まりと終わりが逆のラーメン屋でのやりとり。要所要所で映画とボケがリンクしてて、1つの作品としてとてもクオリティが高く、美しく面白い漫才だと感じました。


・3組目 さや香

本人がいちばんやりたかった漫才が、この「見せ算」。からあげ4みたいに、やりたいお笑いがめちゃくちゃなのがさや香の良いところなのかもしれないですが、率直に、もったいないと思ってしまいました。1本目すごかったのに、2本目…

面白くなかったわけではないですが、優勝にふさわしい漫才であったかというと、そうではないですよね(笑)ネクストデイのVTRで抜かれていた大吉先生の表情が全てを物語っていましたね。たまにからあげ4みたいな博打に出るんだからw


・見えてきた賞レースの可能性

今大会で注目すべき点は、ファースト・ファイナルステージの2回ともトップバッターであった令和ロマンが見事優勝したことではないかと思います。1番手から高い点数をつけてしまうと後が詰まってしまう、というのがこれまでの賞レースの常でしたが、令和ロマンは見事に優勝してみせた。漫画みたいな展開が現実に起きてしまいました(超展開を第1回大会で成し遂げている中川家は改めてすごい)。

このような結末が生まれたわけですから、トップや序盤では勝てないという言い訳が今後通用しなくなってしまいましたね。ですが、逆にこれは、はじめの方の出番でも優勝の可能性は大いに存在する、ということではないかとも思います。今後は、順番を意識した戦略を練って決勝に挑む漫才師が増えてきそうですね。勝負できるクオリティの漫才が少なくとも2本以上必要になると思うと、ぞっとしますけど。

どんな順番でも、その日一番の爆笑で爆発を生んだ漫才師が勝つ。爆笑が爆発するとはよく言ったものです。24日でいちばんの爆発を起こしたのは、間違いなく令和ロマンであったということだと思います。10組の中で最も芸歴の浅い2人が一番手に登場し、そのまま優勝を成し遂げた。まさに異端児。本当にすごいものを見せていただきました。令和ロマンのお2人、優勝おめでとうございます!M-1大好き!




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